カンヌ映画祭パルムドール受賞「ザ・スクエア 思いやりの聖域」
●PeLuLu×telling,
「ザ・スクエア 思いやりの聖域」ー毒とユーモアで人間の本性を暴くー
現代美術館のキュレーターであるクリスティアンは、バツイチですが2人の愛すべき娘の良き父親であり、洗練されたファッションに身を包み、高級な電気自動車を運転し、慈善活動を支援しています。
そんな彼による次の展示は「ザ・スクエア」という地面に正方形を描いただけの作品。通りかかる人たちを利他主義へと導くインスタレーションで、責任ある人間としての役割を思い出してもらおうという試みです。その中では「すべての人が公平に扱われる」という「思いやりの聖域」をテーマにした参加型のアートで、現代社会に蔓延るエゴイズムや貧富の格差に一石を投じる狙いがありました。
しかし、自分の理想通りに生きるということは時に難しく、クリスティアンは自分の携帯電話を盗んだ泥棒に対して取った愚かなリアクションによって、恥ずべき状況へと引きずり込まれていってしまいますー。
人間の本質である“醜さ”
学校の教室、街の掲示板、行政のポスターには、「人に思いやりを持ちましょう」「寛容な社会を目指しましょう」という、ちょっというフレーズが溢れています。しかし、これらのメッセージに反対する人は少ないにもかかわらず、実際に実践してみると困難に直面することでしょう。例えば、SNSなどで寛容な社会を訴えるリベラルな人たちが、自分の正義に1mmでも反対する人を見つけては、口汚く罵っているだけでなく、よく吊るし上げている行為を目にします。
本作では、コンビニでチキンナゲットを買ってあげるシーン、トークショーに新京成の患者が紛れ込むシーンなど、全編を通してシニカルな笑いが多く描かれ、純粋なブラックコメディとして楽しめます。しかし、映画の内容に引き込まれるほど、目を背けたくなる人間の醜さが露わになり、居心地が悪くなってくることでしょう。ですが、どうか本編が終わるまでは席を立たないでください…“醜さ”も私たちの一部なのです。
ファンタジーな悲喜劇でもあり、リアルな風刺劇でもある
北欧の若き巨匠リューベン・オストルンド監督の最新作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、第70回カンヌ映画祭にて衝撃のパルムドール受賞を果たし、以降もヨーロッパの映画祭で最多6部門に輝くほか、第90回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされるなど、世界中の映画祭を席巻中です!
展示作品「ザ・スクエア」が、世間に思わぬ反響を生み、大騒動へと発展していく、皮肉な運命の悲喜劇。
主人公が窮地に追い込まれ、人間としての決断を迫られるたび、私たちは「自分だったら?」と考えずにはいられません。観る者すべての心が試される究極の問題作を、是非スクリーンでお楽しみください。
- 「ザ・スクエア 思いやりの聖域」
- ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、立川シネマシティほか全国順次公開中。◎監督・脚本:リューベン・オストルンド 出演:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、テリー・ノタリー 原題:THE SQUARE 配給:トランスフォーマー