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柏木友紀(telling,編集長)

【編集長コラム】“女性活躍”阻む課題、なぜ身体ばかりに注目が

ジェンダーギャップや女性の生き方を巡る様々な悩みを考える「telling,」では、かねて女性の「からだ」の問題について特集をしてきました。最近、テクノロジーを使って心身の不調を整えるフェムテック市場が盛り上がりを見せています。一方で、「それで問題は解決する?」という女性たちの冷めた声も聞こえてきます。自分らしい一歩を共に考える「telling,」柏木友紀編集長のコラムをお届けします。
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最近よく耳にする「フェムテック」。女性(female)の心身の不調をテクノロジーで解決しようとするサービスを指します。経済産業省が旗振り役になり、大手企業も参入して市場は活気づき、今年も特に3月の「国際女性デー」の前後にはいくつものイベントが開かれました。

取材に訪れると、日本では長らくタブー視されてきた女性の身体や性に関するお助けグッズがずらり。背広姿の男性たちも目立ち、ビジネスの種として、社会課題のひとつとして、認知されてきたことを実感。でも、何となく違和感も……。身体の問題にばかり注目が集まりすぎ? 商機として捉えすぎ? これで女性を取り巻く諸問題が解決する?

「telling,(テリング)」ではこのモヤモヤを、ジェンダーと技術に関する研究を続ける自治医科大講師の渡部麻衣子さんにぶつけてみました(〈フェムテック考〉女性の課題は技術で解決? 不調を“経済的損失”で語られるモヤモヤ)。すると「女性の労働市場への参画をフェムテックでどうにかするというのは、はっきり言ってズレています」とバッサリ。2019年に同省が「月経随伴症状による労働損失」の報告書を出し、政策課題と位置付けたことには一定の意義があるとしつつ、「“女性活躍”と言われても、それを阻む様々な事情があるのに、原因をあたかも女性の身体の問題だけに帰結させることには違和感を感じて当然」。男女の賃金や昇進の格差、育児との両立など、確かに課題は広く複雑です。

いま放送中のNHK朝ドラ「虎に翼」では、日本で初めて法曹界に飛び込んだ女性が古い因習を突破していく姿が広く共感を集めています。時に主人公の生理痛も描かれてはいますが、彼女が今のフェムテックの現状を見たら何と? あの決めぜりふ「はて?」が聞こえてきそう。

 【2024618日朝日新聞夕刊掲載】

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telling,編集長。朝日新聞社会部、文化部、AERAなどで記者として教育や文化、メディア、ファッションなどを幅広く取材/執筆。教育媒体「朝日新聞EduA」の創刊編集長などを経て現職。TBS「news23」のゲストコメンテーターも務める。
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