「WEHealth 2024」

最新フェムケアはここまで来た!妊活用お出汁、膣美容液… 女性の体と心を豊かに【イベントリポート】

国際女性デーに合わせて今年も様々なイベントが開かれました。そのひとつ、東京・原宿で3月8日から開かれた体験型フェムテックイベント「WEHealth 2024」では、女性の体や心を健やかに保つコツやグッズなどが紹介されました。フェムテック商品の最新事情や、ケアについて改めて気づかされたことをお伝えします。

盛り上がるフェムテック・フェムケア市場

日本では、長らくタブー視されることも多かった女性の性や体の課題。世の中の流れは変わりつつあり、2021年からは経済産業省が「フェムテック等サポートサービス実証事業」を開始。女性個人のウェルビーイングと企業の価値向上に向け、フェムテック等の製品・サービスを活用して、妊娠・出産等のライフイベントを応援したり、女性が自身の体をケアしつつ仕事や家庭との両立を目指したりするための様々なフェムテック関連事業も生まれています。

今回のイベント「WEHealth」を主催したのは、女性の活躍を支援するスタートアップ企業ステルラ。代表の西史織さんは、日本では自分の性や体について、十分な教育や知識を得ないままに大人になる人が多いことを課題と感じ、体験型イベント「WEHealth」を2021年に初開催。以来、国際女性デーに合わせて毎年実施しています。4回目となる今年のテーマは、「再発見」。フェムケアを通して、自分の性や体について深く知り、新たな気づきを得ることがセルフケアのきっかけにつながると考えています。女性のヘルスケアをテーマにしたトークセッションやワークショップのほか、展示ブースにはフェムテック・ヘルスケア関連企業11社が集まりました。

おりものは健康のバロメーター

会場では、おりものに関する疑問を解決するヒントや知識について、Q&A形式で医師や研究者が回答したガイドブック「My Body, My Self.」も配布
会場では、おりものに関する疑問を解決するヒントや知識について、Q&A形式で医師や研究者が回答したガイドブック「My Body, My Self.」も配布

最初に訪れたのは、小林製薬「サラサーティ」がプロデュースする“おりもの展示イベント”「My Body, My Self. -カラダの疑問展-」。女性の「おりもの」の存在にいち早く目を向け、日本で初めておりものシートを開発・販売したサラサーティ。女性のライフスタイルの変化に合わせて進化を続け、現在、ラインナップは全15種類にのぼります。小林製薬のグループ会社でウェルビーイングを推進する担当者が案内してくれました。

「生理については、オープンに語られる機会も増えてきましたが、おりものについてはまだ語られる機会が少ないと感じています。そこでこの展示では、おりものにまつわる疑問をジャンル別にして解説しています」

「おりものとニオイ」のコーナーでは、正常なニオイと、異常なニオイのサンプルを用意。「おりものは、ニオイがあるのが正常で、それはヨーグルトのような少し酸っぱいニオイと言われています。でも、自分以外の人のニオイを嗅ぐ機会もないし、比べようもないなかで、それを異常だと気にしてしまう人も多いんです。こうした目安があれば、自分の正常値を把握しやすくなると考えました」

さらに、おりものの色や形状を紹介するサンプルも。どれが正常で異常か、研究員が説明してくれます。「ストレスや環境、体調などによって変化するおりものは、健康のバロメーターとも言えるもの。おりものに目を向け、体からのサインを見逃さないようにしていただきたいですね」

おりものの色や形状について示した展示
おりものの色や形状について示した展示

乳酸菌でPMSをケア

次に訪れたのは、カルピスでおなじみアサヒグループ食品のブース。2024年1月に販売開始した機能性表示食品「わたしプロローグ」について、同社ダイレクトマーケティング部の藤澤侑衣さんにお話を伺いました。

「長年の乳酸菌研究を続けており、これを女性特有の健康課題に活かせないだろうかと、2017年より本格的にプロジェクトをスタート。独自の乳酸菌CP2305ガセリ菌を配合したサプリメント『わたしプロローグ』を開発しました」。CP2305ガセリ菌は、腸内環境を改善する効果がある乳酸菌で、“正常な月経周期を有する健康な女性の月経前の一時的な晴れない気分の軽減を訴求する機能がある”と研究報告されているのだとか。「生理前に一時的な気分の落ち込みや眠気を感じる女性は少なくありません。こうしたサプリで気軽にケアすることで、生理中の自分を受け入れ、おだやかに過ごせるようになれたらと願っています」

商品名には、仕事や生活スタイルの変化などを感じやすくなる20代後半から30代女性の前向きな新しい人生の始まりに寄り添う、という意味を込めているそう。「薬を飲むことに抵抗がある人も、健康のため乳酸菌を摂取しているという感覚で気軽に取り入れていただけたら。これをきっかけに、フェムケアが身近になれば嬉しいです」

アサヒグループ独自の乳酸菌「CP2305ガセリ菌」を配合した、月経に関する機能性を訴える「わたし プロローグ」
アサヒグループ独自の乳酸菌「CP2305ガセリ菌」を配合した、月経に関する機能性を訴える「わたしプロローグ」

男性の妊活にも注目 

「オムテック」という耳慣れない言葉に興味をひかれ立ち寄ったのが、薬用シャンプー「スカルプD」などで知られるアンファーのブース。PR/SNS部の岩澤徹さんが案内してくれました。「我々は『妊活を女性だけのものにしない』という思いから、男性不妊という社会課題に着目しました。実際、不妊の約半分は男性側に原因があるというデータもあるんです」

提携するDクリニック東京で勤務する日本泌尿器科学会専門医の監修のもと、男性特有の健康課題に対して、正しい情報や正しいケアを提唱するブランドとして2022年「オムテック」をスタート。今回ブースでは、「妊活プロテイン」や「妊活おだし」を紹介していました。

「タンパク質は男性力の源とも言えるもの。最近は体づくりにプロテインを取り入れる人も増えているので、抵抗なく飲んでいただけるのではと考えました。それ以外にも亜鉛や葉酸など男性コンディションに着目した17種の成分を配合しています」。出汁は、妊活に良いとされる素材に注目し、魚介と11種の野菜をブレンドした粉末タイプ。男女ともに妊活にはバランスの取れた食事が大切なことから考え出されました。「毎日の食事でバランスを考えるのはなかなか大変ですよね。味噌汁など普段の食事に手軽に取り入れることのできる出汁なら、妊活を習慣にしやすいのではと思います」

健康な体づくりに良いとされる素材に注目しただし
健康な体づくりに良いとされる素材に注目した出汁

初めての人向け月経カップ「murmo」(マーモ)

2024年2月にスタートしたブランド「マーモ」のブースでは、おしゃれなパッケージが目を引く月経カップを紹介していました。生理用品の新しい選択肢として近年注目される月経カップ。膣の中にカップを挿入し経血を貯める仕組みで、ナプキンのように長時間肌に触れないため、ニオイやムレ、かぶれなどが起こりにくく、繰り返し使えるのもメリットだと言われています。

代表の高島華子さん自身が、月経カップによって長年の不快感から解放されたことが、ブランド発足のきっかけだそう。「我慢するのが当たり前だと思っていたんです。でも、コロナ禍に時間ができて、ずっと気になっていた月経カップを試してみたところ、驚くほど生活が快適になり、これはもっと広めたい!と思ったんです。ただ、自分自身もそうでしたが、月経カップって、最初のハードルが高いんですよね」

そこで、初めての人でも使いやすい月経カップを追求することに。0.1ミリ単位で改良を重ねながら3年をかけて商品を開発。使用の不安を少しでも減らすためHOW TO動画やチャットで気軽に質問できるサービスも取り入れたといいます。経血を捨てたり、カップを洗ったりという手間はあるものの、「慣れてしまうと今日が生理だったことを忘れてしまうくらい自然で快適に過ごせるんですよ」。

折り目となる溝を作り、挿入しやすさを工夫した月経カップ
折り目となる溝を作り、挿入しやすさを工夫した月経カップ

膣環境を整える美容液

婦人科医共同開発のフェムケアブランド「ラシーネ」は、膣環境に着目したプロダクツを開発しています。「膣内は通常、自浄作用によって健康な状態が維持されていますが、ストレスやホルモンバランスの乱れによって、細菌バランスが崩れると、においやかゆみといったトラブルを引き起こしてしまうことがあるんです」と、案内してくれたのは広報担当の小川奏子さん。

デリケートゾーンにアプリケーターで注入する美容液「コアセラム」は、膣環境を健康な状態に整え、加齢による膣粘膜の乾燥などを防ぐ効果があるのだそう。「デリケートゾーンケアというと、“洗浄”にばかりフォーカスが当たり、“補う”ということは、あまり注目されてきませんでした。でも、膣を健康な状態に保つにはうるおいがとても重要なんです」

膣環境に着目し、アプリケーターで注入する美容液「コアセラム」

一人ひとりの声が、ミモザの花になって

会場の入口に設置されたのは、「フェムブーケ」。来場者は、用意された黄色のカードに、「女性の生きやすい世界のため」に願うことを書いて貼っていきます。イベント開催期間中に来場者からの声を書いたカードが集まっていくことで、国際女性デーのシンボルフワラーであるミモザのブーケが出来上がります。たとえ小さな一人の声も、それが集まれば大きな力になるということ、私たちは声を出していいのだということを、示してくれる企画です。

来場者の声が集まり、ミモザのブーケが出来上がっていく
来場者の声が集まり、ミモザのブーケが出来上がっていく

ここ数年で、たくさんのフェムテック・フェムケア商品やサービスが世に出てきました。人生の選択肢が増えるのはいいことだと感じる一方、その中から本当に自分に合ったものを選ぶのは、容易ではないとも感じます。今回、さまざまな商品やサービスに触れ、まず自分の体や心、性について知ることが、自分にとって必要なケアを選び取る力になると実感しました。

会場の「声」のブーケには、「生理休暇が取りやすい社会に」「女性にとって温かい社会になりますように」「性別による差別ゼロに!」などの声が寄せられていました。こうした一人ひとりの声が、一時のムーブメントだったり、ビジネス優先の論理だったりでかき消されてしまわぬように。フェムテック・フェムケアの広がりに今後も注目していきたいと思います。

ライターやエディターとして活動。女性の様々な生き方に関心を持ち、日常の中のセルフケアや美容、ウェルネスをテーマに取材・執筆を続ける。また、ファッションやコスメブランドのコピーライティングなども手がけている。
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。
国際女性デー