妻だけED? 陽一(永山瑛太)の告白で、衝撃を受けたみち(奈緒)は……「あなたがしてくれなくても」第6話

ドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジ系)は、建設会社の営業推進部で働く吉野みち(奈緒)と、その夫でありカフェ店長の陽一(永山瑛太)、そして、みちの上司である新名誠(岩田剛典)と、その妻でありファッション誌副編集長の楓(田中みな実)、二組の30代夫婦に焦点を当てた「セックスレス」がテーマの物語。第6話は、陽一による“まさかの告白”が、みちを傷つけることに……。
陽の当たらない恋に未来はあるか。セックスレス夫婦の進む先 『あなたがしてくれなくても』5話 「レス」なのに夫が浮気!許せる? 楓(田中みな実)とみち(奈緒)は沈黙の対面へ 『あなたがしてくれなくても』7話

引きずったコードとヘッドハンティング

誠(岩田)への思いを断ち切り、夫である陽一(永山)と向き合おうと決めたみち(奈緒)。誠はタイミングを見計らって、なおもみちと話す機会を狙うが、みちの決心は固そうだ。誠が「話したい」と言っても、みちは「夫と向き合うって決めたんです」と揺るがない。

しかし、みちが慌てて片付けた機器の電源コードを引きずりながら小走りする描写は、彼女の心情を巧みに表しているように見えた。だらりと垂れ下がったコード。みちは、“ちょっとしたきっかけ”ですぐにでも引き戻されてしまうのではないか。

タイミングを同じくして、誠の元へ転職エージェントからヘッドハンティングのメールが。あえて理性的に考えるならば、ここで誘いに乗ったほうが彼のためにもなる。これ以上みちと一緒に働いて、むやみに思いを増幅させないためにも。

コードを引きずっていることを指摘されたみちと、ヘッドハンティングに乗るか乗らないか逡巡(しゅんじゅん)する誠は、それぞれ心中で何を思い巡らせているのか。ひとつ選択を間違えれば、いよいよ引き返せない地点まで行ってしまう。きっと誠もみちも、それは痛いほどわかっているだろう。

仕事も夫婦関係も諦めない楓

誠の変化を敏感にキャッチしていた楓。忙しい仕事の合間を縫って夫婦の時間をつくろうとする姿が、なんともけなげに映る。

楓が誠に「ずっとひとりぼっちにしてごめん」と言ったように、確かに誠は一人だったのかもしれない。夫婦いっしょに暮らしているのに、その意味が見出せず、苦しんでいたのかもしれない。それは、いつしか誠が口にした「なんで一緒にいるのかな」というストレートな言葉にもあらわれている。

仕事も大事。でも、誠との関係も大事。ずっと誠といるために、楓は“編集長になる夢”を諦めてしまうかもしれない……。しかし、楓は誠に抱きついてハッキリと「誠も仕事も、どっちも大事なんだ」「だから、どっちも頑張る」と言った。

誠が花束を買って楓の元へ戻った真意は、まだわからない。これ以上みちとの関係が進展しなそうだと判断したがゆえの“妥協”でないことを、祈るしかない。

陽一の告白は誰のため?

久々に温泉旅行へ出かけるため、準備を進めるみち。心なしか表情も柔らかい。夫婦の問題である“セックスレス”が顕在化してからというもの、陽一や誠との関係に翻弄(ほんろう)されてばかりの彼女。しかし、はた目にはようやくトンネルの出口が見えてきたようにも感じる。

しかし、陽一が抱える“苦悩”は、反比例するかのように増幅していた。「部屋、露天風呂あるんだってさ」とはしゃぐみちとは裏腹に、「俺、旅行いってもできないかも」と思わず吐露する陽一。そのまま、コップの縁でギリギリ耐えていた水があふれるかのように、秘密を告白してしまう。

「みちだけできないなんて」「ごめん、俺、一度だけみちのこと……裏切った」と苦しげに言う陽一の姿は、一刻も早く楽になりたそうにも見えた。いっときの過ちを懺悔(ざんげ)した側は、重たい荷物を降ろしたように肩が軽くなるはず。いっぽうで、懺悔を受けた側は代わりに荷物を押し付けられることになる。だからこそ、耐えきれなくなったみちは誠を求めて走り出さざるを得なかったのだろう。

吉野夫婦に決定的な亀裂が入ったその瞬間、新名夫婦の関係はすんでのところで繋ぎとめられようとしていた。誠が買って帰った大きな花束は、もちろん楓への愛情を思い出した証でもあるかもしれない。そして、せっかく上手くいきそうなみちのことを邪魔してはいけない、という気持ちも込められているのではないか。食い違う思いとタイミングが交差して、皮肉な星座をかたどっている。

陽の当たらない恋に未来はあるか。セックスレス夫婦の進む先 『あなたがしてくれなくても』5話 「レス」なのに夫が浮気!許せる? 楓(田中みな実)とみち(奈緒)は沈黙の対面へ 『あなたがしてくれなくても』7話

『あなたがしてくれなくても』

フジ系木曜22時~
出演:奈緒、永山瑛太、岩田剛典、田中みな実、さとうほなみ、武田玲奈、宇野祥平、MEGUMI、大塚寧々ほか
原作:ハルノ晴
脚本:市川貴幸、おかざきさとこ、黒田狭
音楽:菅野祐悟
主題歌:稲葉浩志『Stray Hearts』
挿入歌:稲葉浩志『ダンスはうまく踊れない』
プロデュース:三竿玲子
演出:西谷弘、髙野舞、三橋利行(FILM)

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ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。
福岡県出身。現在は大阪在住のイラストレーター&クリエイター。"変化を起こすトキメキ"をテーマにPOPなイラストを描いています。WEBサイト、ノベルティーグッズ、イベントロゴ、動画などでイラストを提供中。趣味は映画、ドラマ、アニメ、ミュージカルなど鑑賞に偏りがち。
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