「レス」なのに夫が浮気！許せる？ 楓（田中みな実）とみち（奈緒）は沈黙の対面へ 『あなたがしてくれなくても』7話

そもそも誠は楓を愛していたのか？

みち（奈緒）には会いにいかず、花束を買って自宅へ帰った誠（岩田）。言葉にすれば、みちではなく楓（田中）を選んだことになる。第7話では、誠と楓がともにレストランで食事をしながら、楓が誠に服を選んであげたときのほほえましい思い出について語り合うシーンも。その様子は、仲睦（むつ）まじい夫婦に見える。

しかし、誠は楓を愛しているのか？ いや、そもそも愛していたのか？

新名夫妻がセックスレスに陥った原因のひとつに、楓の多忙さがあった。仕事が忙しすぎて夫婦の時間が取れないことに加え、子どもを持つことを先延ばしにしていた要素もあっただろう。就寝前の数分しか話せないすれ違い生活が続いたことは、誠に孤独を感じさせた。

だからといって、100%楓だけが悪いと言い切れるのか。楓自身は、仕事に邁進（まいしん）しっ放しだった己を反省している。しかし、誠がみちに惹かれ、結果的に浮気となったのは別問題ではないか。

誠のこれまでの言動を振り返ると、性交渉を控える理由について弁明する楓に対し「いつまで待てばいいのか」といった態度をとったり、「なんで一緒にいるのかな」などと口にしたりしている。これらは、「夫婦である以上、性交渉はなくてはならないものであり、その時間が持てないなら夫婦でいる必要性はない」という意味にとらえられてもおかしくないのではないか。

そうかと思えば、楓が歩み寄る姿勢を示しても、今度は誠から拒否する始末。もうすでに、誠の心はおおかた、みちへと移ってしまっているように見える。

みちの後輩・北原華の重要性

第7話は、みちが勤める会社の後輩・北原華（武田玲奈）の重要性が光る回でもあった。あけすけな物言いで好き嫌いがわかれるキャラクターではあるが、誠と不倫関係に陥りそうなみちに、“陽の当たらない恋”を続ける覚悟について説いたり、浮気を告白した陽一（永山）に対し激怒するみちに「先輩ひとりだけが被害者なんですかね？」と率直な一言を口にしたりしている。

この物語は、みちや楓など“女性側”に対して共感する人が多いかもしれない。 そこに一石を投じるのが北原華の存在だ。いくらみちがセックスレスに悩んでいるとはいえ、華は「浮気は現実逃避」だと突きつけてくる。

かといって、むやみにみちを責めることもない。カラオケに付き合ってみちの話を聞いたり、夫婦で温泉旅行を楽しんだように見せかけるため、ダミーのお土産を用意したりする。華は、視聴者が女性側、あるいは男性側に偏らないよう、フラットな視線を保つトリガー（きっかけ）のような存在になっているように思える。

陽一が言った「許さないでいい」の真意

陽一の告白にショックを受け、しばらく自宅に帰らずにいたみち。荷物を取りに顔を出した彼女を見ても、言いよどみつつ何も言葉を発さない陽一は、第三者から見れば頼りなく映るかもしれない。

しかし、彼は彼なりに行動を起こす。自宅に帰ってこないみちと話そうと、彼女が勤める会社まで出向いた。華の言うように「帰ってこい」の一言でも口にできればよかったが、あと一歩及ばず。しかし、最終的に陽一は「許さないでいいから、それでもここにいてほしい」とみちに頭を下げる。

陽一が三島結衣花（さとうほなみ）とのことを告白したのは、確かに、自分の心に刺さったトゲを抜いて楽になりたかったからかもしれない。しかし、これからも夫婦としてみちに向き合いたいと思ったからこそ、妻を裏切った自分をゼロにしたい気持ちもあったのではないか。それは自己保身でしかないし、ただの身勝手な男としか見えないだろう。陽一の「許さないでいい」の真意はどこにあるのか。それは、みちが探し、受け止めるべきものだ。

夫婦の関係性を修復するにあたって、吉野夫妻にはあるように見える希望が、新名夫妻にはない。誠のスマホを勝手に盗み見て浮気相手を特定し、みちの元へ突撃した楓は、少なくとも冷静ではないだろう。続く第8話で巻き起こるだろう“嵐”を前に、それぞれの夫妻に用意された未来に思いをはせる。明るい将来があるのは、果たしてどちらなのか。