考察『六本木クラス』8話。長屋龍河(早乙女太一)のダメっぷり炸裂!平手友梨奈との演技合戦に魅了される

『六本木クラス』(テレビ朝日系)は、Netflix配信中の大人気韓国ドラマ『梨泰院クラス』を竹内涼真主演で「日韓共同プロジェクト」でリメイクした「ジャパン・オリジナル版」。序盤の麻宮葵(平手友梨奈)と長屋龍河(早乙女太一)の駆け引きからスリリングな8話をtelling,で『梨泰院クラス』の全話レビューを手がけたゲーム作家の米光一成が考察します。
考察『六本木クラス』7話。葵(平手友梨奈)の空気を読まない言葉が、新(竹内涼真)のゲス落ちを救った

早乙女太一の演技力、炸裂

『六本木クラス』9月1日の夜9時から第9話が拡大スペシャルで放送。葵が「愛してます」とストレートに新に愛の告白をしている予告編が! そして『梨泰院クラス』でも神回と絶賛された「料理番組対決編」に突入するようである。超期待だ。

第8話は、龍河のダメっぷりが炸裂した最高の回だった。
龍河は、葵をスカウトにやってくる。
「あのヒトの頭の硬さにはうんざりなんですよね」
葵がウソをつく。これにまんまと乗ってしまう龍河。
のけぞって、椅子の肘掛けをバンバン叩き、思わずバタバタさせた脚をテーブルにぶつけてしまうほどの喜びよう、この一連の動き。
「ガキなんだよな、新は」の嬉しそうな顔。
早乙女太一の演技力、炸裂だ。
「法律っていうのは貧乏人を支配するためにあって、俺みたいな上級国民には適用されない」
っていう強烈なフレーズを秘めた声で言うときの内側からゲスっぷりが湧き出てくるトーン。

「わー、かっこいい」
葵の見え透いたウソにまた乗せられて、新の父を轢き殺した罪をもみ消したことを自慢した後の、くくくと笑いが鶏の鳴き真似になっていく怪演も最高!
「宮部新は鶏だ」っていう流れ! ゲスっぷりが溢れ出る。
「わたしは社長を死ぬほど愛してる。でも、問題は社長の頭はいっつも忌まわしい長屋のことでいっぱいだってこと。だから嫉妬してるの。虫けらみたいなあんたたちに」
バストショットで、腕を斜めに自分の前にクロスしてスマホを掲げて、クールとも邪悪とも言いがたい笑みを浮かべる葵。かっこいい。
「このクソガキゃぁ!」
『梨泰院クラス』での2人(グンウォンとイソ)は静かに対峙して駆け引きする場面だったが、早乙女太一と平手友梨奈の絶品暴走演技で、動的な凄い場面になった。
これぐらいアレンジしてもらうと比較して観るのも楽しい。

香川照之、悪役として覚醒

新があれこれ苦労して得られなかった龍河の罪の証拠がゲットできて、攻め時がイッキに訪れる。会長の解任決議を提出するべきだ、と。
そこで、長屋茂(香川照之)は選択を迫られる。会社を取るのか、息子龍河を取るのか。
そもそも、茂が直接的な悪事を働くのは、息子龍河を守るときだけだ。
「龍河常務を切っていただけませんか」という優香(新木優子)の進言を、茂は拒絶する。長屋は潰されないと断言する。
「長屋はわたしそのものだからだ。そんな私に二度と、家族を見捨てろなどと言うな」
この言葉で、解任決議を提出することを決める新たち。

茂会長は、権力を行使する悪人として描かれている。
だが、その多くは周囲が勝手に忖度して、会長自身が直接的な悪事を行使することはあまりない。
新が龍河を殴った件も、校長は退学を言い渡していたが、茂は土下座すれば許してやろうと言った。
優香にも、奨学金を渡し、長屋で出世させた。見方によっては「養護施設で育った少女に個人的に奨学金を出し、自分の会社で育てた社長」という美談だ。
露骨な悪事を行うのは長男の龍河だ。人を殴ったり、新の父を殺したりするわかりやすい悪役だ。
茂会長が直接の悪事に手を染めるのは、この長男を尻拭いをするときだけなのだ。
茂の最大の弱点は「家族」だ。わかりやすい悪を実行してしまう龍河を守ることで、茂は窮地に立たされる。

そして、第8話後半、まさかの大逆転が起こる。
会長解任の決議のまさしくその直前。
茂会長が記者会見を開く。
隠蔽に自分はまったく関わっておらず、息子だけがやったことだとウソを語る。
龍河を見捨て、責任逃れをし、権力の座を守ろうとした。
茂会長、悪役として覚醒である。最大の弱点であった長男を切り捨て、超悪役にパワーアップだ。

仲間からの信頼を得て大きくなっていく宮部新と、家族を切り捨てても長屋を守った茂会長の対決に突入だ。
しかも、葵の愛の告白で、愛の三角関係も激化していく第9話拡大スペシャル。楽しみだ。

考察『六本木クラス』7話。葵(平手友梨奈)の空気を読まない言葉が、新(竹内涼真)のゲス落ちを救った

テレビ朝日系 木曜ドラマ『六本木クラス』

毎週木曜よる9時〜
出演:竹内涼真、新木優子、平手友梨奈、早乙女太一、香川照之、稲森いずみ 他
脚本:徳尾浩司
音楽:髙見優
主題歌:[Alexandros]『Baby's Alright』
監督:田村直己、樹下直美 他
ゼネラルプロデューサー:横地郁英
プロデューサー:大江達樹、西山隆一、菊池誠(アズバーズ)
原作:チョ・グァンジン『六本木クラス~信念を貫いた一発逆転物語~』(『ピッコマ』掲載中)、テレビシリーズ『梨泰院クラス』(JTBC)

ゲーム作家。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「はぁって言うゲーム」「記憶交換ノ儀式」等。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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