加藤ローサさん、「育児などの苦労を抜けた地点にいる今は、逆に迷子」

俳優の加藤ローサさんが、結婚・出産、育児を経て10年ぶりに出演した映画「凪の島」が8月19日から全国で順次公開されます。結婚後は夫のサッカー選手・松井大輔さんの海外での選手生活に同行し、仕事をセーブしてこの10年間は子どもと向き合ってきました。今回、本格的に芸能活動の再開を決意した理由などについて聞きました。
加藤ローサさん、10年ぶりの映画は“ロケ地の笠戸島に癒やされた”

「仕事は自然とセーブされた感じ」

――サッカー日本代表だった松井大輔さんと20116月に26歳で結婚。その後の10年間は、お仕事をセーブされてきた印象です。

加藤: 特にセーブしたつもりはないんですが、2011年に結婚してから夫の所属チームの関係でフランス、ブルガリア、ポーランドと海外に計3年住み、その後は静岡に4年。自然とセーブされたという感じですね。特に「休むぞ」と決めたわけでもなく、お仕事をする東京までの距離が物理的に遠かった。今は東京に住んでいるので、ちょっとずつお仕事を再開している感じですね。

――11年に第1子、14年に第2子を出産。フランスなど馴染みのない場所で子育てをされてきました。

加藤: その時期は大変でしたけど、振り返ればいい経験。次男は静岡から東京へ引っ越しただけなんですが、長男は小さいときにあちこちに行くことになって可哀想だったと思います。その場所に「いつまで住むかわからない」から、おもちゃも全然買わなかったし、家具付きのマンションに住んでいたんで、新調することもなく……。

本当に落ち着かない中で、子育てしてしまって。本人に記憶は無いかもしれませんが、母親の私が落ち着いた精神状態で子育てするのが、本当はよかったんですがね。

 コロナ禍で復帰のタイミングを逸して…

――先日もインスタグラムにアップした、バインダーとスポーツ飲料のボトルを持って息子さんのサッカー教室を手伝う様子が話題になっていました。

加藤: 普段は忙しい日々を過ごしています。それも仕事や私のことではなくて、長男の何か、次男の何か、そして家のことで多忙になっちゃうんです。

今は長男が小学5年で次男が2年なのですが、本当は次男が小学校に上がったら、仕事に完全に復帰しようと思っていました。しかし、その時期にコロナ禍になってしまって、出鼻をくじかれたというか、タイミングを逸して……。本格的に復帰したのは最近のことです。

 「家庭を持ってからは、色んな所に飛び込めない」

――育児のストレスは。

加藤: ストレスは当然あります。ない人はいるのかなぁ。発散の方法は1人で乾杯するとか。海外にいる時は特にそうでしたね。友達もいなければ、日本人も近くにいませんでしたから。フランスにいるときは、現地の日本人コミュニティーが結構あって、たまに人と話していたかな。

静岡に移って以降はママ友と協力し合っての子育てになり随分、楽になりました。静岡はめちゃくちゃ住みやすかったですね。公園などの子ども向けの施設もたくさんあって。

静岡で、子ども2人が幼稚園に通っていた時期には、私も習い事を始めました。韓国語講座には3年くらい。「中高年のための韓国講座」という名前だったので、私は最年少で成績優秀でした(笑)。

――本格的に再始動することに不安はなかったですか。

加藤: 休んでいる期間が結果として長くなり過ぎたので、「芸能活動を本当にやりたいのか」と自問自答したり、先の不安ばかりを考えるようになったりしました。忙しくなり過ぎたらどうしよう、と想像して不安になることもありました。家庭を持ってからは、自分自身にブレーキを掛ける癖がついちゃったこともあり、なかなか色んな所に飛び込めない自分が今もいる感じです。ストッパーが付いているみたい。

特に子どもができてからは、最悪のことを考えるようになっちゃったんですよね。家族での旅行だったら、乳飲み子の時期は高熱に備えて薬を持って行ったり、汚れる場合を考えて洋服選びをしたり。色々と先のことを心配したり、考えたりするようになったことは私としては、よくないことだと思っているんですけど……。

――映画としての復帰作は、山口県の自然豊かな島を舞台にした「凪の島」になりました。

加藤: 運命的なものを感じます。ありがたかったし、作品に救われました。撮影中は3連休や4連休が結構あって、1人で色んなことを考える貴重な時間を持てました。これまでは自分のためだけに使う時間を持てなかったので――。本来の自分に戻れた感覚がありました。

“今、できることをより深く”

――同世代で育児をされていて、同じように“飛び込めない”という思いをされている方に伝えたいことはありますか。

加藤: 逆に「どうする?」って聞きたいし、「教えて」って言いたい。色々と勇気が出ないんですよね。だから、誰かに背中を押されたり、引っ張ってもらったりしたい。

――年を重ねて今、感じることや今後の目標は?

加藤: 今は育児などの苦労を抜けた地点にいるんですが、逆に迷子。「好きなようにしていいんだよ」って言われても、よく分からない感じ。

目標ねぇ。結婚前は「○○に挑戦したい」「●●役をやりたい」とか答えていたんだけど、結婚してからは新しいことよりも、今、できることをより深くやっていきたいと思うようになったかな。私が大人になったということでしょうか――。

加藤ローサさん、10年ぶりの映画は“ロケ地の笠戸島に癒やされた”

●加藤ローサさんのプロフィール

1985年生まれ、鹿児島県出身。6歳まで父の母国であるイタリア・ナポリで育ち、高校1年時にオーディションに合格しモデルに。2004年、結婚情報誌『ゼクシィ』のCMで注目を浴び、その後は俳優としても活躍。2011年にサッカー選手の松井大輔さんと結婚し、2人の男児をもうける。

◆ヘアメイク:三宅茜
◆スタイリスト:浜木沙友里

■映画「凪の島」

出演:新津ちせ、島崎遥香、結木滉星、加藤ローサ、徳井義実、嶋田久作、木野花ほか
監督・脚本・編集:長澤雅彦
音楽・主題歌:Kitri「透明な」
プロデューサー:木幡久美、宗森達司
撮影:神戸千木
録音:滝澤修

ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。