加藤ローサさん、10年ぶりの映画は“ロケ地の笠戸島に癒やされた”

山口県の自然豊かな離島を舞台に少女の成長を描いた映画「凪の島」(なぎのしま・長澤雅彦監督)が、8月19日から全国で順次公開されます。主役の凪の母・真央を演じるのは10年ぶりの映画出演となる加藤ローサさん(37)です。サッカー選手の松井大輔さんと結婚し、2児を出産。久しぶりの映画撮影の現場で感じたことや、見どころなどについてうかがいました。
加藤ローサさん、「育児などの苦労を抜けた地点にいる今は、逆に迷子」

久々の映画も「安心して撮影に臨むことができました」

――久々の映画の撮影はいかがでしたか。

加藤ローサ(以下加藤): 撮影前は結構、怖く感じていた部分はありました。ただ、芸能活動を少しお休みする前の最後の仕事も映画でしたし、長澤監督とは映画「天国はまだ遠く」(2008年)などで、お世話になっていて今回が3回目。安心して撮影に臨むことができましたね。

撮影自体は昨年の夏で、コロナの第5波の真っ最中。オールロケの映画だったので、その中で3週間ほどロケ地の山口県の小さな島に行きました。撮影が休みの日も、コロナの状況が悪かったので、東京には帰らず山口にいることになりました。

瀬戸内海側にある笠戸島というところで、瀬戸内海は「これが海なのかなぁ」というくらい穏やかで。泊まっていた国民宿舎からの風景もきれいでした。

――撮影は昨夏ということですが、コロナ下で現場の雰囲気はいかがでしたか。

加藤: エキストラの方や俳優さんの半分くらいは、地元の方だったり、九州から来られていたり。現地の方々に身の回りのことをサポートしていただき、すぐに撮影の現場に溶け込める環境でした。

ただ、残念なことに、コロナがあって、みんなで食事を楽しむことはできなかったんです。数日おきに共演のみなさんとスーパーの鮮魚コーナーでお刺し身を買って、各自が自室で食べるという……。でも海鮮は本当に美味しかったですね。

ロケ地で「今までお疲れ様」と言われているような…

――今回の「凪の島」は、普段は快活なのに、頻繁に過呼吸になる小学4年生の凪が主人公。両親が離婚し、母の故郷である瀬戸内海にある小さな島で暮らすことになり、他にも心に傷を抱えている人が多く登場します。加藤さんが演じた凪の母で看護師の真央も離婚歴などがあり、都会から地元の島への出戻り。ご自身と真央には、何か似ている所はありましたか?

加藤: 真央はギリギリまで頑張って頑張って、それでも限界が来て島に戻ってきた。そして島で癒やされたと思うんです。私も結婚後10年という節目で出た映画。ロケ地で瀬戸内海を眺めていたら、これまでの育児などについて「今までお疲れ様」って言われているような気分になりました。

――違うところは?

加藤: 映画の中では、新津ちせちゃん演じる凪の方がしっかりしている感じですが、実際の私は子どもに対しては厳しいんです。私が演じる真央の母親役で、島唯一の医師の佳子さん(木野花)のように厳しく、「母です」と常に前面に出している感じかな。

――その、ちせさんは連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(NHK2021年)でヒロインの幼少期も演じました。印象はいかがでしたか。

加藤: 本当に天真爛漫で好奇心がすごい。その辺りは私の長男に似ていますね。一方で、しっかりしているところもあって、子どもと接しているというより、対等な立場で話すことができる感じ。漢字博士でもあるので、色々教わりました。ホオズキを持って撮影するときがあったのですが、「漢字あるの?」と、ちせちゃんに聞いたら「『鬼』に『灯』ですよ」と返ってきました。それに昆虫好きの一面もあって。

役者としても、もちろん対等。現場には女優という意識を持ってしっかり臨んでいました。

 「徳井さんの終始、気楽な感じが、楽しかった」

――登場人物それぞれが何らかの傷を負っています。

加藤: 普段は笑わないことで逆に“わらじい”と呼ばれる小学校の用務員さん(嶋田久作)と、真央の母で医師の佳子さん(木野花)との過去の“傷”をめぐるやりとりはとても印象的でした。キャラクター的に、わらじいは私のツボでもありました。

――加藤さん演じる真央の元夫で、アルコール依存症だった純也を演じるのは徳井義実さん。長澤監督の「天国はまだ遠く」で共演されています。

加藤: 徳井さんのダメっぷりにも笑いました。ある日、いきなり登場して、島にいる人たちをかき乱す。徳井さんとは何回も共演しているのですが、今回は撮影でご一緒したのは3日間くらい。パッと来て、すぐに笠戸島から帰りましたしね。海に落ちるシーンを撮った後に「いい夏の思い出になったわ」って。終始、気楽な感じが、楽しかったです。

――改めて映画の見どころを教えてください。

加藤: 愛くるしいキャラクターがたくさん出てきて、とてもほっこりする映画になっています。読者のみなさんにも、ロケ地の笠戸島に行って、深呼吸してもらいたいくらい。ストレス過多なこの時代だからこそ、見ていただきたい映画だと思います。

加藤ローサさん、「育児などの苦労を抜けた地点にいる今は、逆に迷子」

●加藤ローサさんのプロフィール

1985年生まれ、鹿児島県出身。6歳まで父の母国であるイタリア・ナポリで育ち、高校1年時にオーディションに合格しモデルに。2004年、結婚情報誌『ゼクシィ』のCMで注目を浴び、その後は俳優としても活躍。2011年にサッカー選手の松井大輔さんと結婚し、2人の男児をもうける。

◆ヘアメイク:三宅茜
◆スタイリスト:浜木沙友里

■映画「凪の島」

出演:新津ちせ、島崎遥香、結木滉星、加藤ローサ、徳井義実、嶋田久作、木野花ほか
監督・脚本・編集:長澤雅彦
音楽・主題歌:Kitri「透明な」
プロデューサー:木幡久美、宗森達司
撮影:神戸千木
録音:滝澤修

ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。