加藤ローサさん、10年ぶりの映画は“ロケ地の笠戸島に癒やされた”
久々の映画も「安心して撮影に臨むことができました」
――久々の映画の撮影はいかがでしたか。
加藤ローサ(以下加藤): 撮影前は結構、怖く感じていた部分はありました。ただ、芸能活動を少しお休みする前の最後の仕事も映画でしたし、長澤監督とは映画「天国はまだ遠く」(2008年)などで、お世話になっていて今回が3回目。安心して撮影に臨むことができましたね。
撮影自体は昨年の夏で、コロナの第5波の真っ最中。オールロケの映画だったので、その中で3週間ほどロケ地の山口県の小さな島に行きました。撮影が休みの日も、コロナの状況が悪かったので、東京には帰らず山口にいることになりました。
瀬戸内海側にある笠戸島というところで、瀬戸内海は「これが海なのかなぁ」というくらい穏やかで。泊まっていた国民宿舎からの風景もきれいでした。
――撮影は昨夏ということですが、コロナ下で現場の雰囲気はいかがでしたか。
加藤: エキストラの方や俳優さんの半分くらいは、地元の方だったり、九州から来られていたり。現地の方々に身の回りのことをサポートしていただき、すぐに撮影の現場に溶け込める環境でした。
ただ、残念なことに、コロナがあって、みんなで食事を楽しむことはできなかったんです。数日おきに共演のみなさんとスーパーの鮮魚コーナーでお刺し身を買って、各自が自室で食べるという……。でも海鮮は本当に美味しかったですね。
ロケ地で「今までお疲れ様」と言われているような…
――今回の「凪の島」は、普段は快活なのに、頻繁に過呼吸になる小学4年生の凪が主人公。両親が離婚し、母の故郷である瀬戸内海にある小さな島で暮らすことになり、他にも心に傷を抱えている人が多く登場します。加藤さんが演じた凪の母で看護師の真央も離婚歴などがあり、都会から地元の島への“出戻り”。ご自身と真央には、何か似ている所はありましたか?
加藤: 真央はギリギリまで頑張って頑張って、それでも限界が来て島に戻ってきた。そして島で癒やされたと思うんです。私も結婚後10年という節目で出た映画。ロケ地で瀬戸内海を眺めていたら、これまでの育児などについて「今までお疲れ様」って言われているような気分になりました。
――違うところは?
加藤: 映画の中では、新津ちせちゃん演じる凪の方がしっかりしている感じですが、実際の私は子どもに対しては厳しいんです。私が演じる真央の母親役で、島唯一の医師の佳子さん(木野花)のように厳しく、「母です」と常に前面に出している感じかな。
――その、ちせさんは連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(NHK・2021年)でヒロインの幼少期も演じました。印象はいかがでしたか。
加藤: 本当に天真爛漫で好奇心がすごい。その辺りは私の長男に似ていますね。一方で、しっかりしているところもあって、子どもと接しているというより、対等な立場で話すことができる感じ。漢字博士でもあるので、色々教わりました。ホオズキを持って撮影するときがあったのですが、「漢字あるの?」と、ちせちゃんに聞いたら「『鬼』に『灯』ですよ」と返ってきました。それに昆虫好きの一面もあって。
役者としても、もちろん対等。現場には女優という意識を持ってしっかり臨んでいました。
「徳井さんの終始、気楽な感じが、楽しかった」
――登場人物それぞれが何らかの傷を負っています。
加藤: 普段は笑わないことで逆に“わらじい”と呼ばれる小学校の用務員さん(嶋田久作)と、真央の母で医師の佳子さん(木野花)との過去の“傷”をめぐるやりとりはとても印象的でした。キャラクター的に、わらじいは私のツボでもありました。
――加藤さん演じる真央の元夫で、アルコール依存症だった純也を演じるのは徳井義実さん。長澤監督の「天国はまだ遠く」で共演されています。
加藤: 徳井さんのダメっぷりにも笑いました。ある日、いきなり登場して、島にいる人たちをかき乱す。徳井さんとは何回も共演しているのですが、今回は撮影でご一緒したのは3日間くらい。パッと来て、すぐに笠戸島から帰りましたしね。海に落ちるシーンを撮った後に「いい夏の思い出になったわ」って。終始、気楽な感じが、楽しかったです。
――改めて映画の見どころを教えてください。
加藤: 愛くるしいキャラクターがたくさん出てきて、とてもほっこりする映画になっています。読者のみなさんにも、ロケ地の笠戸島に行って、深呼吸してもらいたいくらい。ストレス過多なこの時代だからこそ、見ていただきたい映画だと思います。
●加藤ローサさんのプロフィール
1985年生まれ、鹿児島県出身。6歳まで父の母国であるイタリア・ナポリで育ち、高校1年時にオーディションに合格しモデルに。2004年、結婚情報誌『ゼクシィ』のCMで注目を浴び、その後は俳優としても活躍。2011年にサッカー選手の松井大輔さんと結婚し、2人の男児をもうける。
◆ヘアメイク:三宅茜
◆スタイリスト:浜木沙友里
出演:新津ちせ、島崎遥香、結木滉星、加藤ローサ、徳井義実、嶋田久作、木野花ほか
監督・脚本・編集:長澤雅彦
音楽・主題歌:Kitri「透明な」
プロデューサー:木幡久美、宗森達司
撮影:神戸千木
録音:滝澤修