皆川玲奈の人生S字クランク

【新連載:皆川玲奈の人生S字クランク#02】同期が教えてくれた”他人と比べない”ということ

TBSアナウンサーの皆川玲奈さんの好評新連載「皆川玲奈の人生S字クランク」。ミレニアル世代のリアルな思いを読者のみなさんに向けて語ります。2回目は、仕事について。アナウンサーとして悩んだ新人時代、それを乗り越えた今、思うこととは?

●皆川玲奈の人生S字クランク #02

30歳を前に振り返る”アナウンサーの仕事”

私は今年の春で入社8年目を迎え、夏には30歳になります。
女性アナウンサーの後輩は、なんと14人! 気付けばあっという間に中堅です。この数字を見ると、いつまでも若手アナウンサーというくくりに甘んじてはいけないなと思うこのごろです。

TBSの場合、アナウンサーの仕事は、意外と知られていないのですが、基本的に番組制作側から発注が来て、各アナウンサーの勤務スケジュールをデスクが確認し(このデスクも先輩アナウンサーです)、仕事が決まります。 
発注には、「皆川で」と指名される場合、若手でスケジュールが空いている人なら誰でもというようなざっくりとした条件付き、指名希望順に第1希望○○さん、第2希望△△さん、第3希望皆川、と前の2人がスケジュールNGで私に回ってくる、こんなケースがあります。

私はこれまで、若手なら誰でもという発注の場合は、積極的に「できます!」と手を挙げてきました。指名していただけることはほとんどなかったですし、指名を待つよりもどんなチャンスでも手にしたいと思っていたからです。

渋谷のハチ公前で待ち合わせをしている人に、今聞いている音楽を聞く街頭インタビューや警視庁から保釈された被告の車を追うヘリコプター中継、志村けんさんのゲーム番組に出させていただいたり、麺がのびる時間と戦ったラーメンショーの中継、坂上さんとデヴィ夫人の激論に慌てふためいたトーク番組など、今でもよく覚えています。
たくさん失敗もしましたが、次は同じようなミスはしないと心に決め、次のチャンスを手に入れるために貪欲にチャレンジしていきました。

これまでのすべての仕事が、今そしてこれからの仕事に繋がってることを実感しています。「NEWS23」での政治取材や星浩さんと毎日打ち合わせで話したことは、その後、ニュースの見方が変わってきました。また、「Nスタ」で堀尾正明さんにプレゼンした時は、短い時間内でどこを伝えるのか、視聴者は何を知りたいのだろうかと考えたのは、今「はやドキ!」でいきています。

新人の頃の立ち位置

よくアナウンサーとして取材を受ける時に「誰みたいになりたいですか?」と聞かれることがあります。この質問にはいつも答えに困ってしまうのですが、「あの人みたいになりたい」思っているばかりではなれないと気づいたからです。

そう思うようになったのは、アナウンサーの同期との関係が大きかったかもしれません。この同期アナウンサーというのが、現在フリーで活躍している宇垣美里さんです。彼女は私とはタイプが違って、初対面の時から人懐っこく話もおもしろいのです。私からするとのびのびと自由で開放的な性格がちょっとうらやましいくらいです(笑)。
私は彼女と最初に会った時から「宇垣」と苗字で呼んでいるので、以下いつも通り、宇垣と書くことにします。
彼女とは“同期”の“女性アナウンサー”ということで、周りからは比べられたこともありました。宇垣はバラエティっぽくて、皆川は報道向きだ、と。
新人の頃は右も左もわからず、毎日の仕事をこなすのが精一杯だったので、そんな声が聞こえるともやもやした気持ちになることも少なくありません。
周りからはそう見られているの!? と気になり始めてしまったんです。

でも当本人の宇垣はというと……、
「そんなこと気にする必要ないよ。れなちゃんはれなちゃんで、私は私」
(私の名前は「れいな」ですが宇垣はこう呼んでくれます)

私も心の中でひっそり、宇垣みたいにかわいらしく、愛嬌ある立ち振る舞いができたらもっと人に愛されるだろうなと思っていましたが、宇垣の言葉通りだとハッと気づかされました。
彼女はいつだって口に出して力強く言ってくれるので、勇気づけられます。

普段、同期のアナウンサーが一緒に仕事をする機会はめずらしいのですが、宇垣とオールスター感謝祭に出演したことがあります。その際は、合間にお互いの置かれている環境について深く話をしたのもいい思い出です。

さて、最初の問いに戻りますが、なりたい人、憧れる人は私にもたくさんいます。できるなら透明人間になって、他局のアナウンサーがお仕事をしているところをのぞきたいくらいです(笑)。
でも、「あの人みたいになりたいなぁ」と思う時は、外見や仕事の内容、周りからの評価など人の表面的なところしか見えていないのではないでしょうか。
宇垣が悩み努力している姿を一番近くで見てきているので、宇垣はこうで皆川はこうだ、とさまざまな見方をされても、その声に惑わされずに、支え合うことができています。
人と同じようなことをしてもその人にはなれないのです。

他人と自分を比べるよりも、過去と今の自分を比べた方が前向きになれると私の大切な同期に教えてもらいました。
宇垣とは、彼女が退社してからも、甘いものを食べに行こうとお互い誘い合い、マシンガントークを繰り広げています(笑)。

先輩からのひと言「見てる人は、ちゃんと見てるから」

とは言っても、自分だけを信じて、自信満々にやっているわけでもなく……。
私はどちらかというと自信がない方で、「きちんと伝えられているだろうか」と仕事のやり方が間違っていないか不安に思うことが多くあります。
アナウンサーの仕事は、見ている方が評価をするものだと思っているので、自分のことをいくら客観的にみても、心配になります。
(ちなみに私は車の運転は得意なのですが、カーナビや地図アプリを見ても真逆に行ってしまうほどの方向音痴です)

そんな迷子になっていた時、先輩からもらったのが、「見てる人は、ちゃんと見てるから。」という言葉でした。
アナウンサーとしてやるべきことを全うすれば、その仕事に向き合った姿勢を見て、次の機会に一緒に仕事をやろうと声をかけてくれる人がいるよ、と。
選ばれるかどうかばかりに気をとられるのではなく、まずは今ベストを尽くすこと。
本音でフィードバックをしてくれる人は、社会人になると貴重なものです。
いつも近くで支えてくれている人に感謝をして、その人の気持ちに応えたい!と思えば、他人の仕事ぶりは気にならなくなるのではないでしょうか。

初回のコラムでは、コメントをたくさんいただき、ありがとうございました!とても励みになりました。
これから、みなさんから寄せられた質問にも答えていければと思っています。引き続き、よろしくお願いします。

TBSアナウンサー。2014年入社。青山学院大学卒。 大学時代に体育会自動車部に所属。中古車をルール内で改造し、サーキット場でレースに出場。 関東大会1位、全国大会3位という実績があり、国内A級ライセンスも所持している。 趣味は、ゴルフやテニスをして体を動かした後に温泉に入ること、パン屋めぐりなど。 出演は、テレビ「報道特集」「はやドキ!」「東大王」、ラジオ「ドライバーズ・リクエスト」「週刊自動車批評」など。
現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。
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