独身偽装する男性心理に迫る!「妻以外」に求めるものとは……
年に4-5人は付き合う
「安心感を与えるとよく言われますね。性格も優しいほうだと思います」
そう語るのは、3年前にコンサルティング会社を起業した佐々木純平さん(仮名)。まだ20代後半という若さながら、同社の代表を務め、年収は1000万円を軽く超えます。プライベートでは結婚3年目。子供はいないそうですが、「昼か、夕食のどちらかは妻と一緒に食事をしています」と愛妻ぶりを隠そうとしません。
その一方で佐々木さんは3年にわたって「独身偽装」を続けています。しかも年4~5人というハイペースで、妻以外の女性と交際しているとか!「妻のことをいちばん大切にしている」と言いながら、なぜこのような生活を続けているのでしょうか。そのきっかけを聞くと、佐々木さんはちょっと変わった生い立ちを話し始めました。
「大学のころから銀座や六本木のクラブやキャバクラによく顔を出していたんです。もともと父の仕事の関係で、就職はせずに起業をしたいという思いが強く、人脈づくりのために夜の街を徘徊していたんです。まだコロナの影も形もない頃で、銀座は背広姿のおじさんたちで賑わっていました。キャストの方から“アフター”をお願いされることも多かったです。二十歳前後の僕は圧倒的に若く、きっと誘いやすかったのでしょう。それを断るために『実は結婚している』と嘘をついていました。いわば独身偽装ではなく、“結婚偽装”をしていたんです」
二十歳の頃のこの経験がきっかけで、身分を偽ることに抵抗感がなくなったという佐々木さん。その結果、結婚後に今度は独身と偽るという皮肉な逆転現象が起きてしまいます。
佐々木さんは、「独身偽装」をする何よりの理由について、「妻以外の女性と将来や夢について話せるのが楽しい」と話します。
家賃や食費の面倒を見た人も
「勘違いしてもらいたくないのですが、独身偽装で交際した彼女たちを“性のはけ口”にしたことはありません。女性から求められることを除いて、身体の関係はありません。結婚していると、どうしても会話が現実的な内容になりがちですが、一方で『将来はああなりたい』『こんな夢がある』という話を交際してきた女性から聞くのが好きなんです。もちろん、彼女たちの願い事で本当に叶えられるものがあるなら、叶えてあげることもあります。家賃から食費までひと通りの生活の面倒をみた人もいます」
まるで「あしながおじさん」のような佐々木さんは、これまで地方局のアナウンサー、歯科衛生士、フリーターなどさまざまな女性と交際してきました。マッチングアプリをきっかけにした出会いもあるそうですが、ほとんどは日常のふとした出会いから発展するといいます。なかでも印象残っているのが、とある大学生のことだとか。
「知り合ったきっかけは病院の待合室でした。ふとしたきっかけから一言、二言交わすようになり、そのうち彼女が芝居に興味あることがわかった。たまたま舞台俳優に知り合いがいたので、『もしよかったら招待するので今度一緒に見に行きましょう』とお誘いし、その帰りに食事をしながら彼女の身の上話を聞いているうちに、打ち解けていきました」
そこから自然な流れでデートを繰り返すようになった2人。佐々木さんは誘われたらどんな用事も断らないようで「交際相手の親と会うのはもちろん、一緒に住む予定のモデルルームを見に行ったり、親戚の集まりや法事に顔を出したこともあります」と語ります。
普段から結婚指輪をつけておらず、中肉中背の佐々木さん、童顔で一見すると10代後半のような印象です。交際相手の親戚の集まりに参加したときでも、「結婚しているの?」と聞かれることはなかったといいます。
バレたのは2割
「これまで既婚だとバレたのは2割くらい。知り合い同士がたまたまつながって、噂が耳に入ってしまったくらいです。そういうときは完全に信じ込んでいたせいか、状況を理解できないで、『嘘でしょ』『本当は独身でしょ』と言われることが多いです。もしバレたとしても、僕から謝ることはないです。『理解してくれて(付き合ってくれて)ありがとう』と。
不思議なことに、そう言われた相手は怒らないです。すぐに謝られると、(謝られた)相手は何かひどいことをされた気になりますが、逆に感謝されると、怒るタイミングを逸してしまうんです。僕から連絡することはないので自然とフェードアウトしてますね」
話だけだと、にわかには信じられない佐々木さんの恋愛テクニック。とはいえ、結局は「独身偽装」なので、最後は「飽きちゃった」の一言で終わりを告げるようです。
「僕と出会ってしばらくすると、仕事をやめちゃう人も多いんです。お金を与えて甘やかしているのからかもしれませんが、相手の性格や態度がどんどん変わってきちゃう。夢や将来の話をせずに、『あれがほしい』『これを買ってほしい』とわがままになる(笑)。そうすると、飽きちゃうというか。もういいかなと思って嫌になってしまうんです。
ただ、最近、ストーカー化してしまった女性がいました。その方は登録料30万円かかる結婚相談所に登録して、本気で婚活していたようで、自宅などは教えていなかったのですが、後をつけてくるようになってしまって、最後は警察を呼びました。事情聴取されましたが、警官に怒られましたね(笑)」
そんな佐々木さんですが、マッチングアプリで女性と出会うことも少なくないといいます。スマホでのやり取りは、通知や履歴で妻にバレそうな気もしますが、どう隠しているのでしょうか。
「仕事の関係で、スマホを複数所有していて、LINEアカウントは3個もあるんです。アカウント名や名字だけで、本名を伝えていないで交際してきた人もいました。とはいえ、マッチングアプリはあくまで興味本位で使ったことがあるだけです」
しかしながら、いわゆるマッチングアプリのなかには利用規約に「独身者であること」を掲げているものがほとんどであり、佐々木さんの行為は明らかに規約違反です。こうした使い方をしているユーザーは「ほかにもたくさんいる」(佐々木さん)のが現実でしょうが、そこで、マッチングアプリ大手に話を聞きました。
マッチングアプリ、「独身確認」は事実上なし
日本のマッチングアプリ大手の運営者は、多くが以下のような規約を掲げています。
「日本在住の18歳以上(高校生は除く)で、交際相手がいない方、独身の方(現在離婚している方も含む)のみが、日本国内において利用可能な婚活をサポートするサービスです」(Pairs、第6条 利用資格)
「18歳以上(高校生は除きます)で、かつ独身の方のみ、当サービスの会員登録や当サービス、ウェブサイトをご利用いただけます。違反された場合、会員登録は無効となります」(Omiai,第4条 資格)
「本サービスは18歳以上(高校生は除く)の方で、かつ、独身(現在離婚している方も含む)である方のみが利用可能なサービスとなります」(with,第3条 会員資格等)
これらのマッチングアプリの運営者に取材を申し込むと、「Omiai」を運営するネットマーケティング社は「会員利用規約に違反する不正目的利用については、当社も重大な問題と認識しており、被害防止の為の対策強化に全力で努めております」と回答しました。
「今回ご指摘のあった『独身偽装』等の身分やプロフィールを詐称する行為については、会員登録時に頂いた情報と本人確認用の公的書類との整合性をAIフィルタリング、および人的目視により全て確認を行っておりますが、そのポイントや数値、その他詳細は対策有効性の観点から非公表とさせていただいております」(広報担当)
一方で、あくまで自主申告がベースとなる点については、「完全な防止対策は困難であること」を認めた上で次のように話しました。「当社では独自の『イエローカード制度』を導入しており、明らかな利用規約違反、もしくは複数人のユーザー様からの通報が認められた場合等、不正行為報告に対して適切に対応できるような基準を設けて運用しています」(同前)
各社とも、免許証などによる本人確認をしているところはあっても、独身証明書などの提出を義務付けるところは少ないようです。また、たとえ証明書を提出しても入会時だけで、その後は定期的に提出を要求しないなど、独身証明も厳密なものではありません。
あくまで本人による自主的な申告にとどまっており、既婚者の不正利用についての防止策は事実上、取ることが難しいと言えます。実際、不正利用の実態については「件数が多すぎ、たとえアカウントを削除しても、別の名前などを使ってすぐに復活する。いたちごっこです」(別のマッチングアプリ会社社員)という声もあります。
マッチングアプリ会社も頭を悩ませている「独身偽装」。今回の佐々木さんのケースで見たように、その背景には既婚男性にありがちな「妻以外の女性と深い話がしたい」という軽い心理状況があるようですが、真剣交際を望む女性側にとっては大問題であるという認識は聞きませんでした。浮気や不倫といった男女間トラブルにつながる独身偽装の問題。利用者と運営者が手を取り合い、一体となった解決が望まれます。