オーダースーツ店オーナーの勝友美さん、自己肯定感を高める一歩は「自分を信じること」
1日の時間が限られている中での出版
――“日本人女性初のテーラー”として28歳で起業してから、全力疾走し続けて来られました。このタイミングで2冊目を出そうと思った理由を教えてください。
勝友美さん(以下、勝): 伝えたい内容があったことと、担当編集者の方の熱量です。お声がけいただいた当初は「出版」の優先順位が自分の中で高くなかったのですが、私の要望をくみ取ってくれて。「本当にありがたいことだ」と前向きになれました。
前向きにならない仕事は受けないことが、私の前提としてあります。そして依頼を受ける前、出版に時間を割くことに価値があるか自問自答したところ、自分の答えは「YES」。
今回の書籍出版も含めて、業務外のプロジェクトのオファーがあった場合の私の判断基準は、たとえ睡眠時間を削ったとしても、自分にとってやる価値があるか、否かです。出版については寝る間を惜しんでも、注力する意味を見出せたことが大きかったです。
1日はどうしても24時間しかないので書籍の制作期間は実際、自分の業務をこなした後のほとんどの時間を、この本に費やすことになりました。
ピンチはどこにある?
――著書の冒頭で読者に「あなたは今、何%自分に満足していますか?」と問いかけています。勝さんご自身は?
勝: 私は120%ですね。Re.museを始めてから大変な局面は何度もありましたが、その時も「120%」と答えていたと思います。
満足度というのは何か得たからとか、達成したから感じるものではないと思うのです。むしろ夢を叶えるための過程を楽しむことに意味があります。
ただ、時には不安になることやくじけそうになることもあると思います。そこで、私がお伝えしたいのは「まずは自分を信じてあげて」ということ。何もできなかったとしても、とにかく自分で自分を信じることが全てです。
もしも今後、私にとってピンチが訪れることがあるとしたら、自分を信じられなくなった時だと思っています。借金を背負ったり、お店がなくなったり、社員が辞めてしまったりしたら、もちろん傷つきますが、それは大きな問題ではありません。ピンチとは外側ではなく、内側にあるのです。
どん底にいても、自分を信じられていれば、何度でも立ち上がることができます。だから、みなさんも、とにかく自分自身を信じてあげてほしいと思っています。
モノは自己肯定感を上げてくれない
――心と言葉、行動を一致させることが、自己肯定感や幸福度を上げるということも印象的でした。
勝: 自己肯定感を持つには、自分のことをちゃんと認識することが重要です。20~30代の人が、高いクルマに乗ったり、良い時計をつけたりしている姿をSNSにアップしているのをよく見かけます。好きなブランドを手にする高揚感はよくわかりますし、その気持ち自体を否定したいわけではありません。しかしモノで心の充足感を得たとしても一時的。所有物全てを取っ払った“自分の姿”に信頼を置けなければ、自己肯定感は下がってしまいます。努力した成果や結果の蓄積が、揺るぎない自己肯定に繋がっていくのです。
なりたい自分になるために
――この本を、どんな人に読んでもらいたいですか?
勝: 「本心や夢に、素直になって向き合い、自分らしく生きることで、なりたい自分になれる」ことを伝えたくて、この本を書きました。とにかく、自分がやりたいことを探すのをあきらめないでください。一人でも多くの人にとって、この本がなりたい自分になるための手助けになれればと思っています。
正直なところ、経営者や、自分のやりたいことをして生きている人は読む必要がないと思っています。けれど、そんな人は一部。むしろそうじゃない人の方が大半を占めています。
だからこそ、世代や性別を問わず、まだ自分に120%満足していない人には是非手に取って読んでほしいですね。
●勝友美(かつ・ともみ)さんのプロフィール
1985年、兵庫県宝塚市出身。短期大学卒業後、アパレルメーカーの販売員を務め、入社初日にトップセールスを記録。2013年に独立し、オーダーメイドスーツ店、Re.museを創業。2018年から3度にわたり、テーラー業界では日本初となるミラノ・コレクションに出展。自身の経験をもとに、YouTubeやオンラインサロンを通じ、夢を実現する人に向けた配信も行っている。