考察『愛しい嘘～優しい闇～』3話。優美（黒川智花）が殺したかったのは本当にDV夫だったのか

• 前回はこちら：『愛しい嘘～優しい闇～』1話を考察。望緒（波瑠）は、なぜ「中野幸」を「くん付け」したのか？

『愛しい嘘～優しい闇～』（テレビ朝日系）はミステリードラマとして、とてもフェアだ。怪しい描写や見当もつかない謎を連発して煙に巻くのではなく、最小限の謎と驚くほど早いネタバラシでドンドン展開していく。1月28日放送の3話終了時点で解決された謎は意外にあり、残った謎もそれほど多くはない。情報量の多さで誤魔化さないやり方は、記憶力が落ちてきたおじさんの僕に取ってもすごくありがたい

中野家の火事と4人の秘密

望緒（波瑠）、雨宮（林遣都）、玲子（本仮屋ユイカ）、稜（溝端淳平）、奈々江（新川優愛）、優美（黒川智花）の仲良し6人組と、転校してしまった謎の同級生・中野幸。その関係性の輪郭が早くも見え始めた。中学の時に6人で行った夏祭り。高熱を出した望緒と、その望緒を家まで送った雨宮は、途中に離脱していたことが発覚した。そして同日に、中野の家が火事になっていたことも明らかになった。

予告動画を見る限り、望緒・雨宮以外の4人はこの後に花火をしているよう。共通に抱える秘密の正体は、「花火で中野家の火事を引き起こしてしまった」の可能性が高い。望緒の記憶が曖昧なのも高熱が原因と考えることができる。1話で提示された大きな謎について、3話の時点でここまで明かされたことに驚く。この先もいろいろな展開が用意されている証だろう。

また、3話のハイライト「奈々江を偲ぶ会」を計画中、雨宮が「中野くんも呼ぶ……？なんてね」と、玲子と稜をおちょくるようなシーンがあった。雨宮は火事の原因を知っているようで、他の4人に対して何か思うことがあるのだろう。

優美を毒殺したのは？

優美をDV夫（徳重聡）から救うために計画された「奈々江を偲ぶ会」。優美は夫を殺すためにワインに毒物を混入する。だが、いつのまにかグラスが入れ替わったのか、自らが飲んで死んでしまう。

毒入りワイン計画は、「優美の独断で行った」ように描写されている。もし、共犯者がいるとしたら、それはまだ明かされていない優美の不倫相手になるだろう。不倫相手と結託し、夫を殺そうとしたのだ。となると、計画を知っていたのは優美と不倫相手だけになる。つまり、優美に毒を誤飲させることができたのは、不倫相手だけではなかろうか。不倫相手は同卓だった雨宮か稜？

しかし、優美は毒入りワインを直接DV夫に手渡していてる。横にいた雨宮が「すいません。そのワインちょっといいですか？」とテーブルに置かれた優美のワインをわざわざ持ち上げてすり替えるのはあまりにも不自然。また、優美にワインを渡した稜も同様だ。よってその場で「DV夫と優美のワインをすり替える」を実行できた人物はいない。

そうなると、もう一つの可能性が考えられる。実は優美が殺そうとしたのはDV夫ではなく、同卓の雨宮という説だ。優美は、不倫相手である雨宮に弱みを握られ、ワインに毒を盛ったのだ。そしてその毒に気づいた雨宮が、置いてあった優美のワインと自分の毒入りワインをすり替え、優美を殺したという流れだ。逆に雨宮も優美に生きていられると困る理由があったのかもしれない。

もちろん、毒はワイン以外の食べ物にも混入できるから、全く別の人間が優美を殺した可能性は否定できないが、今のところは雨宮が不倫相手で、優美を殺した犯人である可能性が高そうに見える。

「雨宮＝中野くん」説はありえるのか？

3話のラストで、死ぬ間際の優美が奈々江を殺したことを告白した。終盤まで引っ張る事件と思っていたのですごく驚いたのだが、もちろんこれがこの事件の全貌とは限らない。裏で何者かが動き、優美が殺すよう仕向けたのかもしれないからだ。

優美の動機は、「不倫していたことをバカにされた」だった。たったそれだけで？ とも思われそうだが、高飛車な奈々江に激しくマウントを取られ、恨みが溜まっていたのだろう。何か弱みを握られていたのかもしれない。ちなみに、毒入りワインで優美が雨宮を殺そうとしたとしたら、動機は「雨宮に奈々江殺しを知られたから」がしっくりくる。

ここで大事なのは、「なぜ奈々江が不倫のことを知っていたのか？」だ。奈々江と優美の関係から察するに、不倫の相談をした可能性は薄い。となると、不倫相手、つまり雨宮が奈々江に不倫を明かしていたことになる。自分にアプローチしてくる奈々江に対して、雨宮は優美との不倫関係を明かすことで奈々江の感情を揺さぶり、2人の関係にヒビを入れたのだ。「優美が奈々江を殺す」まで想定の範囲だったかはわからないが、裏で雨宮が糸を引いているのだ。では、なぜ雨宮がそんなことをするのか？

ネットで「家を火事にされた中野が雨宮になりすましている」という説を見かけた。確かにドラマ的にしっくりくるのだが、「なりすます」のはなかなか困難そうだ。整形で顔をそっくりにするのはまだ成立するとしても、雨宮はイケイケのIT社長でそれなりに有名人。簡単にはなりすませない。一体いつからなりすましているのか？ そして本物の雨宮はどこにいるのか？ という疑問が生じる。

もし、中野が雨宮を殺してなりすましたとするなら、おそらく起業前、まだ有名人ではないころだろう。だがそうすると、「なりすました後に起業して会社を大きくして、その後に復讐を実行する」という行動の意味がわからない。復讐するなら、なりすましてすぐのハズだ。以上の理由で、僕は雨宮が中野くんになりすましている可能性は薄いと考える。

ただ、雨宮が事件に全くの無関係とも考えづらい。よって、雨宮と中野くんは同一人物ではなく結託しているだけ、もしくは雨宮が中野くんの意思を継いでいるのではないだろうか。

結局、望緒が一番怪しい？

そもそもまだ3話が終わったばかり。全てを見抜くのは無理がある。むしろ、この時点で「事件の全貌が見えた気になる」ということ自体がドラマの仕掛けなのかもしれない。
色々な謎をぶちまけて、視聴者に「？」を浮かばせるのではなく、ある程度予想させておいて思いっきり裏切る。視聴者としては、これをされるのが一番楽しいのだから。

まだまだ、玲子も稜も本心を明かしていない様子。前回のレビューでも書いたが、主人公である望緒が覚えていないはずの中野幸（なかのみゆき）を迷わず「くん付け」したことも腑に落ちない。なにせ謳い文句は「登場人物全員嘘つき!?」なのだ。