Netflix『ラブ・ハード』クリスマス直前、マッチングアプリで恋したイケメンが成りすましだったら?
2021年ならではのロマンティック・コメディ
2021年、クリスマスのロマンティック・コメディを一本だけ選べというならば映画『ラブ・ハード』をオススメする。
めちゃくちゃストレートで王道のロマコメ展開でありながら、道具立てはめちゃくちゃ新鮮、2021年ならでは。
監督は、エルナン・ヒメネス。コスタリカの映画監督・脚本家であり、大人気スタンダップコメディアン。脚本はダニー・マッキー、レベッカ・ユーイング。
主演は、ニーナ・ドブレフ。ティーンホラー・ドラマ『ヴァンパイア・ダイアリーズ』で人気急上昇した彼女が、そのチャームをフルに発揮した。そして、もうひとりの主役がジミー・O・ヤン、香港出身。ドラマ『シリコンバレー』では、中国アクセントが強いたどたどしい英語を話す役を演じていたが、13歳でアメリカへ移住したジミー・O・ヤンは英語ペラペラだ。
『ラブ・アクチュアリー』vs『ダイ・ハード』
ニーナ・ドブレフが演じるナタリーは、マッチングアプリでいろんな男性と出会うが、どれもこれも最低のデートになってしまう。だが、仕事上はそれが好都合。というのも「悲惨なデート」というコラムを執筆し続けていて、大人気連載になっているのだ。
ナタリーはマッチングアプリで、「最高のクリスマス映画:ラブ・アクチュアリー」というボードを持ったイケメンのジョシュとマッチングし、チャットを開始。
「僕の大好きな映画に対する君の感想は?」
「外見で恋に落ちる人の物語」と、ナタリーは『ラブ・アクチュアリー』に批判的だ。
「僕は現実に対する愛の勝利だと思う」
さらに、「君のクリスマス映画は?」という質問に、ナタリーは『ダイ・ハード』と答える。
「ダイ・ハードがクリスマス映画?」には「イピカイエー そうよ!(Yippee Ki Yay, I do!)」と返信。イピカイエーは、『ダイ・ハード』でブルース・ウィリスが言う決め台詞だ(カウボーイがよく使う掛け声らしい)。
ナタリーが、『ダイ・ハード』がクリスマス映画である7つの理由を説明し、やりとりが盛り上がる。語学堪能、イケメン、話も合う。電話での会話も楽しいジョシュ。
ナタリーはカリフォルニア州のロサンゼルス在住で、ジョシュはニューヨーク州のレークプラシッド在住。スマホのチャットや電話で、オンライン・デートを重ねる。寝落ちして朝まで電話をつなぎっぱなしだったり(定額プランにしておけばよかった!)、一緒に映画を見たり、プライベートなことも話せる仲に発展していく。
ジョシュにぞっこんのナタリーは、飛行機で4800キロを移動してサプライズでジョシュに会いに行く。
だが、ついに出会った現実のジョシュは、写真とはまったく違う外見だった。友人タグ(ダレン・バーネット)の写真を勝手に使った成りすまし(catfish)だったのだ。
成りすましだったことに激怒したメアリーは、立ち去り、ひとりバーに入る。と、そこに写真を使われてたタグがやってくる。半ばヤケになってたナタリーは、セクシーカラオケで誘惑しようとするが大失敗してしまう。
ジョシュは謝りながら、メアリーに提案する。「ぼくがタグをゲットする作戦を手伝ってあげるから、クリスマスまで(家族の前では)恋人のフリをしてくれ」と。
愛は完璧じゃなくていい
ここから先は、ロマンティック・コメディの王道展開が、観る者の予想をまったく裏切らずに繰り広げられる。華やかなパーティー、歌と踊り、粋なジョークとユーモア、街はデラックスなクリスマスの装飾、クリスマスの日にすべてが向かっていくストーリー。2021年に作られた古典といっていいほどの王道っぷり。
だが、随所に出てくるギミックやエピソードは、アップトゥデートされた最新版だ。
たとえば、フランク・レッサーのクリスマス・デュエット曲「Baby, It's Cold Outside」を歌うシーンがあるが、そのままでは歌われない。ナタリーが「デートレイプを推奨している歌だ」と主張し、ジョシュが、「ぼくのパートの歌詞を変えればデートレイプには聞こえなくなる」と言って、政治的に正しい替え歌にして歌うのだ。
「Baby, It's Cold Outside」は、デートで男性の家にい来た女性が「もう帰らないと」と言ってるのを、男性が何だかんだ言って引き留めようとする掛け合いの歌だ。これを、ジョシュは「(今夜は)完全に合意のもと(とても楽しかった)。無事に帰ってくれ」「(ねえ何か入ってる?)ただのレモン炭酸水だ」等と替えて、ふたりでデュエットする。
もちろん「ラブ・ハード」といえども、完璧なロマコメではない。
家族の前でプロポーズして強制的にイエスを言わせる状態にしたのはヤリ過ぎだと思う人もいるだろう。ナタリーとジョシュのロマンスがあっさりしすぎじゃないかっていう人もいるだろう(だが、これはこれで2021年らしいと思うけどね)。
だけど、ロマンティック・コメディは完璧じゃなくていい。映画の中のふたりがパーフェクトすぎると、カップルで観た後にちょっと気まずい。現実は完璧じゃないからね。
「僕が何かを学んだとしたら愛は完璧じゃなくていい。正直であるべきだ( If I've learned anything, it's that love doesn't have to be perfect.It just has to be honest.)」というジョシュのセリフは、2021年の今にちょうどいい愛の言葉だと思う。
出演:ニーナ・ドブレフ、ジミー・O・ヤン、ダレン・バーネット
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