熱烈鑑賞Netflix

Netflix『クリックベイト』がヤバい「視聴回数500万で死ぬ」予告動画にさらされた男の運命は?

世界最大の動画配信サービス、Netflix。いつでもどこでも好きなときに好きなだけ見られる、毎日の生活に欠かせないサービスになりつつあります。そこで、自他共に認めるNetflix大好きライターが膨大な作品のなかから今すぐみるべき、ドラマ、映画、リアリティショーを厳選します。今回ご紹介するのは、クライムミステリードラマ『クリックベイト』。それぞれのエピソードがタイトルの人物をメインに展開され、デジタル社会の恐ろしさをあらためて感じること間違いなし!
Netflix『拝見!こだわりの住空間』どうせ客なんてめったに来ないんだから思い切りふざけた部屋にしよう

●熱烈鑑賞Netflix 87

発端から猛スピードで展開

「私は女を虐待してる。視聴回数500万で死ぬ」と書かれたボードを掲げた兄を、ネット動画で見つける。
兄は、額から血を流し、縛られている。
しかも、アクセス数がぐんぐん伸びる。
どういうこと!?
という発端から、猛スピードで展開していくドラマ『クリックベイト』、大傑作。
後半のどんでん返しの連続が凄いので、5話目ぐらいからは展開予想しながら観ると面白さ倍増。予想の斜め上をガンガン突っ走るうえに、説得力がある展開に唸る。

各話ごとに焦点人物が決まっていて、その構成も見事。
1話 妹
2話 刑事
3話 妻
4話 愛人
5話 記者
6話 兄
7話 息子
8話 答え

全8話のリミテッドシリーズ。
最終話のタイトルが「答え THE ANSWER」なのも「みなさん、答えが予測つきますか?」っていう製作者陣の挑戦状、もしくは自信の現れだろう。
焦点人物が違うことで、各話のトーンが微妙に変化するのもグイグイ引き込まれる要因のひとつだ。

「ネットの闇」がキー

1話は、「視聴回数500万で死ぬ」の驚愕動画を発見した妹が焦点人物。金髪でおかっぱ頭だ。職場の大学に行くが兄はいない。妻のところへ行く。警察にも行く(例によって警察はなかなか動いてくれない)。ネットオタクの高校生にも兄を見つける手助けを乞う。ガンガン行動する。
ネットマニアの集合知で重要なヒントが見つかり、警察も動きはじめる。記者がやってきて、カメラを向け「彼の告白は真実?」などと突撃してくる。アクセス数は非情にもどんどん伸びていく。バズってしまう。タイムリミット!(しかも、このタイムリミットをだらだらと先延ばしにしない展開も早ッ)

この妹が、ちょとイラっとしちゃうガサツなキャラクターなんだけど、そのおかげで展開が停滞せずテンポよく進む。ガサツだからそこ勝手に入っちゃいますね、って、1話に3話ぶんぐらいの濃縮度で展開していくのだ。

兄の妻ソフィー・ブルーワーを演じるのはベッティ・ガブリエル。Netflixシリーズ『クリックベイト』独占配信中

とにかくテンポの良さを重視していて、ネット検索で簡単に判明しすぎる場面が3回ぐらいあるのだが、「ぐだぐだ遠回りして調べてテンポが落ちる」よりも何百倍も気持ちいい。
「GeoNicking」というニックを探すためのサイトも立ち上がったり、デートアプリで意外な人物がつながっていたりと、「ネットの闇」がキーとなっていく。事件の影響範囲は拡がり、マスコミも嗅ぎまわり、兄や、その妻の過去や過ちが暴かれていく。
妹を演じるのは、『ルビー・スパークス』『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』のゾーイ・カザン。兄の妻を演じるのが『ゲット・アウト』のベッティ・ガブリエルで、めちゃくちゃ存在感あります。

イッキ観必至のサスペンスだけど、印象に残るエピソードが見る人によって違うのも『クリックベイト』の特徴だろう。
スクープをとりたくて、どんどん闇落ちしていく記者を描いた第5話「記者」に、ぼくはグッときた。

2021年、オーストラリア作品。
原作・制作は、『グリッチ』『ステートレスー彷徨の行方—』のトニー・エアーズと、クリスチャン・ホワイト。
監督は、『フラクチャート』『ベイルート』『マシニスト』『ザ・コール 緊急通報指令室』のブラッド・アンダーソン。

各話によって印象が異なりながら、まるごとジェットコースタームービー的なドラマとしてまとまっている奇跡。構成の妙と、伏線ちゃんと貼ってたかどうかの確認で、もう一度観たくなる。

Netflix『拝見!こだわりの住空間』どうせ客なんてめったに来ないんだから思い切りふざけた部屋にしよう
ゲーム作家。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「はぁって言うゲーム」「記憶交換ノ儀式」等。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。
熱烈鑑賞Netflix