Netflix『拝見!こだわりの住空間』どうせ客なんてめったに来ないんだから思い切りふざけた部屋にしよう
●熱烈鑑賞Netflix 86
なんのために部屋をコーディネートしているのだろう。自分だけの空間のはずなのに、どこか人目を気にして家具を配置してしまっている、そんな人は多いのではないだろうか。
この記事を書く僕もそんな一人で、家具は黒や白や木目調の無難なものばかりだ。しかし、よくよく考えてみると、ふつう来客なんて半年に1~2組(僕が特別少ないのかもしれないが)だけだし、来てもどうせ気心の知れた友人で、無難な自分なんて見せる必要のない人間ばかりだ。気を遣う来客なんて、一年に一組も来ない。そんな時のために、恥ずかしくないよう普通の家に仕上げておくなんて損している気がする。
そんな他人の目を度外視でふざけた家を作っちゃった外国人たちを紹介するのが、邦題はちょっとダサいが、Netflixオリジナル『拝見!こだわりの住空間』だ。
個性が強過ぎる家が続々登場
この番組に登場するのは、「リビングでスキューバダイビングができる家」「お化け屋敷なみに怪物が立ち並ぶ恐怖の家」「SF博物館みたいな家」「全てがピンクな家」「ネオンで眩し過ぎる家」「悪名高い独裁者をテーマにした家」などなど。遊び心満載なんてもんじゃない、もはやただの遊びだ。
1エピソードは25分ほどで、3~4つの家を紹介する。なので、自分が住んでみたい家も絶対に住みたくない家もドンドン出てくるから楽しい。これから新たな個性的な家づくりに挑む人に密着する『大改造!!劇的ビフォアアフター』(テレビ朝日系)を自分でやるパターンと、すでに出来上がった家を紹介するだけの『渡辺篤史の建もの探訪』(同じくテレビ朝日系)パターンもあって飽きさせない。
印象的だったのは、これから作る人とすでに出来上がった人の表情の違いだ。これから作る人はもちろんワクワクはしているものの、時に「うまくいくかわからない」と不安を口にしたり、時に「他人になんて言われてもいい」「自分のやりたいようにやるだけだよ」と自分を鼓舞したり。日本人は他人の目を気にし過ぎるなんてよく言われているが、ここに登場する個性豊かな外国人たちも一緒。ちゃんと他人を気にした上で、自分らしく生きようと頑張っているのだ。
一方、出来上がった人たちはもう得意満面。自慢の家を歌うように紹介し、周りの目を気にするどころか、見てくれと言わんばかりに胸を張る。作っている最中の人たちも、いずれはこうなるのかと思うとなんだか微笑ましい。人の目を気にしないで自由に生きるには、ある種の覚悟が必要なのかもしれない。
ギネス認定!素人が作った最大のジェットコースターがある家
個性的な家とはちょっとニュアンスが違うが、全シリーズで一番インパクト大だったのは、庭にジェットコースターを作るウィルさん。たまにバラエティ番組の特集で木製のレールにトロッコを乗っけた手作りコースターを見かけるが、ウィルさんのは本格的な鉄製。なんと愛息子のライル君のために、これまで4つのコースターを作り上げているそうで、今回のはこれまでの全作品を足したものよりも大きなものにするという。
プロが作ったジェットコースターを下見すると、ウィルさんは「(規模は半分だが)これより2倍早く2倍高く感じるものを作る」と嬉しそうだ。仲の良い友人ら数人と、鉄を削り、木で支えて作り上げたジェットコースターに、試運転で人形を乗せてみる。しかし、当たり前のようにコースターは横転し、人形は落下。それを見て笑い合うウィルさんたちの心情がわからない。ライル君は、「遊園地はプロが数百人で作っているのに、こっちは数人。イカれてるよ」と笑っていたが、それを楽しみにしているライル君もまぁまぁイカれてる。
初めての乗車は命懸け
紆余曲折あって出来上がったのは、全長146m、高さ13m、最高速度37kmの遊園地にあっても不思議ではないレベルのものだった。しかし、レールこそしっかりしているように見えるが、肝心の乗車部分はパイプでそれっぽく作られただけで、乗り手は露出しまくりのスカスカ。もし、落ちたら簡単に死んでしまいそうな仕上がりだ。「8500ドル掛けた」と胸を張っていたが、日本円で90万円ちょっとは、安い気がしてしまう。
友人一同を呼んでウィルさんは、初乗車を試みる。なんと、実際の人間が乗る重さを載せて試運転したことがないというのだからビックリだ。「可能性は2つ。イエーイと楽しく終わるか、すぐに撤去するか」とアメリカンジョークを飛ばすウィルさんもウィルさんだが、それを笑う友人たちも友人たちだ。ウィルさんが乗り込み上昇し始めると、一緒に作った仲間の一人が「もっとブレーキを強化したい。誰にもケガさせたくない」と今さらすごいことを言い出したり、とんでもない。
もちろん試運転は無事に終わるのだが、ウィルさんは「2箇所でガタついた」とやはり完璧ではなかったよう。しかし、満足そうな表情はキラキラで、「作ったことを誇りに思う。庭にジェットコースターを作った人より、宇宙に行った人の方が多いんだからね」と挑戦に満足が行った様子だった。
ジェットコースターのウィルさんだけでなく、個性的な家を作り上げた人たちの顔は晴れやかだった。自分もこんな風に自由に生きてみたいものだ、とは思うものの、日本の住宅事情を考えると、狭かったり賃貸だったり近所迷惑だったりで、ここまで個性を出すのは難しそう。
でも、壁紙を張り替えるのは意外と簡単だし、トイレや子供部屋、自分の部屋の一角だけでも、他人の目を気にせずに挑戦してみたらいいかもしれない。どうせ他人なんて来ないのだから。
『拝見!こだわりの住空間』
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