Netflixアニメ『極主夫道』声優が「漫画を読んでくれる」という贅沢を堪能
●熱烈鑑賞Netflix 66
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おおのこうすけの漫画が原作のNetflixアニメ『極主夫道』は、アニメとしては作画が異様に少ない。キャラクターの動きはほとんど無しで、アニメというよりは紙芝居のような仕上がりだ。
一見すると「低予算で作った」と思ってしまいがちだが、観れば観るほど、そのこだわりが見えてくる。あえて動きのない紙芝居アニメーションにこだわったことが原作の雰囲気にハマっているし、止まった画に躍動感すら感じるのだから不思議だ。低予算の手抜きどころか、細かい部分に気を配って作られていることがわかる。
オープニングを飛ばすな!『極主夫道』と打首獄門同好会の親和性
“不死身の龍”として恐れられていた伝説のヤクザ・龍(津田健次郎)が、デザイナーとして働くバリバリのキャリアウーマン・美久(伊藤静)のパートナー兼専業主夫に転身。極道に変わって専業主夫の道を極めるために、料理、お買い物、掃除、フリマ、ご近所付き合い、ヨガ、DIY、子どもを預かる、ガーデニング、ママさんバレー、商店街の福引き、妻のご両親におもてなし、子供会のクリスマパーティ、喫茶店のパートなどに挑む。コワモテヤクザと庶民的主夫のギャップが楽しいコメディ作品だ。
昨年冬に放送された玉木宏と川口春奈出演のドラマ版は(日テレ系)オリジナル要素を多く取り入れていたが、こちらはかなり原作に忠実でコンパクトな仕上がりだ。1話はおよそ2~3分のショートストーリーで、1エピソードに5~6話が収録。今のところエピソード5までが配信されている。良いのか寂しいのか、あっという間に全部観終わっちゃう。
打首獄門同好会が担当したオープニングテーマ『シュフノミチ』とエンディングテーマ『極・夫婦街道』は、タイトルからもわかるが、これでもかってくらいアニメのために書き下ろした楽曲だ。
豪快なサウンドに「時が過ぎゆく前に 決めないと今日の晩御飯を 行かないとスーパーに買い物を」なんて歌詞は、短編アニメの作風とスピード感とマッチして非常に気持ちがいい。そもそも打首獄門同好会は「生活密着型ラウドロック」なんてものを名乗っているので、「イカつさ×庶民感」という意味では、『極主夫道』と方向性が同じとも言える。Netflixでアニメを一気見する場合、曲を飛ばしてしまいがちだがそれはちょっともったいない。
声優が「漫画を読んでくれる」贅沢
先にも少し触れたように、原作の忠実度合いがすごい。作画数が少ないからか、画風は原作にかなり近い。画は動かないが、バシバシ静止画が差し込まれ、そこに音響効果、さらには「スッ」(玉子焼きを切る音)「チャポッ」(汚れた衣服を過炭酸ナトリウムを入れた水に沈める音)などの擬音がそれに合ったフォントで可視化されていて、情報がドンドン入ってくるため動かないキャラクターに不思議と躍動感が出ている。
津田健次郎の渋く落ち着いた声がドッシリとした龍の雰囲気を作り出すも、軽快でポップな演出がその雰囲気を一瞬でぶっ壊し、ギャップが生まれる。龍以外のキャラクターたちも、「龍を怖がっている」「龍を警戒している」「龍のことが好き」「龍が怖い人って知らない」「龍に好かれたい」など、龍への思いを一瞬で表現してくれるため、わかりやすくて見やすい。僕はアニメにメチャメチャ詳しいタイプではないのだが、静止画のおかげで声優たちの演技の重要度を高く感じることができた。
動くアニメに合わせた演技ではないためなのだろうか、それとも差し込まれる静止画のリズムによるものなのだろうか、セリフのテンポもちょうど笑いやすい。もともとの「イカついやつが庶民的なことを全力でやる」という前フリもわかりやすいので、さんざん静止画について話しておいてなんだが、画面を見ずに、それこそ家事をしながらでも楽しめそうだ。
作画が少ないアニメ『極主夫道』だが、音響効果のタイミング、静止画の差し込み方などの繊細な演出のおかげで、豪華な声優陣が「漫画を読んでくれる」みたいな贅沢な仕上がりになっている。
『極主夫道』
原作:おおのこうすけ
監督:今千秋
シリーズ構成:山川進
アニメーション制作:J.C.STAFF
キャスト:龍(津田健次郎)、美久(伊藤静)、雅(興津和幸)
主題歌:打首獄門同好会/OP曲「シュフノミチ」、ED曲「極・夫婦街道」
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