遅咲き上等!

打首獄門同好会 junkoさん「人間失格でも、好きなものには妥協しない」

ラウドロックバンド「打首獄門同好会」のベース担当junkoさんは、昨年還暦と公表して大きな話題になりました。とても還暦には見えない若々しさで、心から音楽を楽しむjunkoさん。好きなものへの思い、そして人生への考え方を語っていただきました。

●遅咲き上等!

好きなもののためには、妥協したくない

――バンドで音楽を続けるためなら、就職も結婚も選ばない。それがストイックというよりは、ただ「好き」という気持ちだけでここまで来られているんですね。

junko: 結局、わがままなんですよ。好きなことに対しては妥協したくないし、好きなこと以外に時間を使いたくない。服装もそうです。自分が好きなら、もし似合わないって言われたとしても着たいって思います。

――junkoさんの服装といえば、ギャル服・ギャルメイクのイメージです。

junko: ギャルは、40歳ちょっと前から始めました。私はとにかく海が好きで、ココナツの芳香剤やハイビスカスの装飾なんかを車に置いたり……。ちょうど90年代のギャルブームの時に、自分の好きなものがギャルのテイストに一致したっていう感じです。

私がギャルを始めた頃は、当時のバンドのメンバーは私の年齢を知っていたので「そんな年でやめなよ」と言われたこともあります。コンビニで『egg』を立ち読みしていたらたしなめられたり(笑)。当時、バンドをやっている女性には「ミュージシャンっぽく見られたいファッション」が流行っていたと思います。黒っぽい服、膝が破けたスリムパンツ、髪の毛の一部を赤や緑に染めたり、ね(笑)。でも私はそういうのには興味なかったんですよね。

――海が好きとのことですが、実際に海に行ったりも?

junko: 海と夕日がとにかく、極端に好きなんです。本当に、1日海にいてボーッとして夕日を見て帰る、みたいなこともありますよ。友達と海に行っても、ふらふら~って海岸まで行ってずーっと海を見続けちゃう。その間友達のことは完全に頭から消えてます(笑)。自分の好きなものが目の前にあると、何も見えなくなっちゃうんですよ。

人生頑張ってないし、人間失格だとは思うけど

――本当に好きなものには一直線なんですね。

junko: あとは、音楽以外の何かをいつもしていたいっていう気持ちもありますね。今習い事で、タヒチアンダンスとキックボクシングをしています。特にキックボクシングは、筋肉をつけたくて始めました。やっぱり 60 歳という年齢は自分でわかっているので、年々筋力が落ちてきたり、腰痛になったりもします。ステージで思いっきりはじけるためには、好きなことをするための筋力や体力は鍛えておきたい。

正直人生頑張ってないし、人間失格してるっていうのは自分でも思います。でも、好きなもののためにはいくらでも時間を使える。この間、「ギャル服一生着る宣言」をしたんですが、着るからにはみっともないことにはなりたくない、そのための努力ならします。毎日体重計に乗るし、数値にもこだわっています。自分の許せないラインを超えたら、本当にがむしゃらに頑張りますよ。

人生なんて、些細なことでひっくり返る

――自分の中で「やるべきこと」がはっきり見えているjunkoさん。「telling,」読者の中には、「このままでいいのかな」とか「どうしたらいいのかな」とモヤモヤしている人も多くいます。そういったミレニアル世代の女性にアドバイスするとしたら?

junko: なんでしょう、正直言うと、「もやってしてる」っていう感覚がわかんないんです(笑)本当にわがままに生きてきちゃったんで。

まあでも悩むのはしょうがない。私が一つ言えることは、どんなに好きに生きてきたとしても、些細なことで人生はひっくり返る、ということ。
私は2006年に打首獄門同好会にメンバーとして加入して、まあ私の人生こんなもんだろうな、ずっとバンドやって、旅行にもほどほどに行って、まあいい感じに続くだろう、って思ってたんですよ。ついこの間まで、ここまでバンドで生活できるようになるとは一切思っていませんでした。

でも、私も自分の年齢を公表したことで、人生ががらっと変わっちゃったと実感しているし、今までよりもさらに幸せになったなって思います。

50歳、60歳になって人生こんなもんだよ、って思ったとしても、絶対違いますから。今30歳前後で「ちょっとうまくいかない」なんて思っていたとしても、絶対大丈夫ですから。多少つまづいたっていくらでも修正がきくよ!って言いたい。

――何歳になっても、人生を諦める必要はないっていうことですね。

junko: そうですよ。だって私、武道館での初ライブが59歳の時ですからね。今も、何に対しても何も諦めてません。何も考えてなくてもどうにでもなる!って自信を持って言えます。この先の60代、なにがあるかなってワクワクしてますよ。まあ寿命があるから死んじゃうかもしれないんですが、それはそれで(笑)。

【取材後記】
「人間失格」「わがまま」といいつつも、好きなもののためには全力を注ぐjunkoさんは、すごく自然体でハッピーな方だな、とお会いして感じました。人生はいつだってひっくり返る。だから何歳でもあきらめる必要なんてない。私も一生あきらめず、好きなことをもっと楽しもう、と思わされた出会いでした。

朝日新聞バーティカルメディアの編集者。撮影、分析などにも携わるなんでも屋。横浜DeNAベイスターズファン。旅行が大好物で、日本縦断2回、世界一周2回経験あり。特に好きな場所は横浜、沖縄、ハワイ、軽井沢。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。
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