遅咲き上等!

主婦からブックオフ社長へ。橋本真由美さん「70歳過ぎた今も全力投球です」

「もしブックオフの仕事をしていなかったら? 怖~いママゴンになっていたわね(笑)」。そう語るのは、41歳のときにアルバイトで入ったブックオフで社長にまで昇りつめた橋本真由美さん(70)。仕事について聞いた前編に続き、後編では専業主婦時代からから仕事を始めて大きく変わった生活について聞いてみました。

●遅咲き上等!

人前に出るのが苦手で家にいるほうが楽だった

――橋本さんは、ブックオフでの仕事を始める前は専業主婦でいらしたんですよね。元々、リーダーシップが強い性格だったんですか。

橋本真由美さん(以下、橋本): いえいえ! そんなことないですよ。実は私、人前で話すのが恥ずかしくて。子どもの学校でPTA活動をするときも、「橋本の母でございます」と一言発するだけで心臓が爆発しそうなくらいドキドキしてたんです。それくらい人前に出るのがダメで、家にいる方が気持ち的に楽だったんです。

――結婚前は、どんな仕事をしていたんですか?

橋本: 私は、昔から目の前のことをやるのに必死でした。結婚前は栄養士の仕事をしていて、そのときも夢中で働きました。栄養士が作った献立を調理師に渡して作ってもらうんですが、「こんなの作れるか!」と反発されることもある。そんなときは現場に立って調理師と同じ目線で物事を見てからコミュニケーションを取るようにしました。そうすると、最初は反発していた調理師さんもだんだん話を聞いてくれるようになってくるんですね。

結婚後は、良き妻、良き母になることが目標だった

――それだけ夢中になってやっていた仕事を結婚で辞めるというのは、後ろ髪を引かれる思いもあったのでは?

橋本: 全然! むしろ早く辞めたかったくらいです(笑)。結婚後のプランは、良き妻、良き母になることでしたから。結婚してすぐに子どもが生まれて、とにかく家事と子育てに一生懸命でした。

夫の会社で運動会をやるといえば、みんながお弁当をつまめるように多めに作っていき、終わった後も最後まで残って片付けを手伝いました。PTA活動も子どものためにと思って積極的に参加して。8年間、そんな生活を送っていました。

次女の事故で仕事に迷い。「家族が大変なときに続けるべきなのか」

――これまで30年近く仕事を続けられてきたわけですが、辞めたいと思ったことはありますか?

橋本: 何度もあります。中でも一番つらかったのは、次女が交通事故にあったとき。ある日、仕事で大変なことがあり、帰りが夜中の2時になってしまったんです。家に帰ったら、家中電気がついているのに誰もいない。そこで初めて、子どもが事故に遭い入院したことを知ったんです。そのとき、私は仕事に生きがいもやりがいも感じていたんですが、家族が大変なときに何が仕事だって思って……。 

――それでも続けたのはなぜですか?

橋本: けがをした次女が、長女に「お母さん、仕事辞めるって言ってない? 私も将来お母さんみたいになりたい。お母さん辞めるって言ったら嫌だな」と話していたらしいのです。それを聞いて、続けようと思いました。

父の介護でも悩みました。ここ数年、父がいる福井の実家と関東の自宅を5、6時間かけて何度も往復したんですが、父を置いて家を出るのがつらくて。たった一人の父親なんだから、私が仕事をやめて面倒をみようと思ったんですけれど、父も「仕事を辞めたらだめだよ。俺の面倒はヘルパーさんが見てくれるから大丈夫」と言うんですよ。

それでも父を放ってはおけないと思い、2018年9月末、仕事を辞めました。「お父さん、待っててね。あと少しだから。仕事を辞めたらこれからはずっと一緒にいられるから」。そう言って仕事を辞めたのに、父は翌月の10月25日に亡くなってしまった。たった1カ月しか一緒にいられませんでした。「私、なんのために仕事を辞めたんだろう」って、複雑な心境になりました。

仕事があったからこそ夫の死を乗り越えられた

――仕事に全力投球しながら、ご家族との絆も大切になさっていたんですね。

橋本: でもね、仕事があってよかったと思うこともたくさんありましたよ。2009年に主人が亡くなったんですが、亡くなる前の4カ月ほどはずっと入院生活だった。仕事を続けていなかったら、私はもっと落ち込んでいたと思います。

――旦那さんは、橋本さんが会社で出世していくことに嫉妬などはなかったのでしょうか?

橋本: 彼はなにも言いませんでしたが、あったと思います。逆にほめてもくれませんでしたが。ただ、私が仕事を始めたことで、主人との会話が変わっていきました。

専業主婦のときは、どんなに家事で疲れていても主人を駅まで送り迎えしていました。その間、わずか7分間が夫婦の会話の時間だったのに、私はご近所の人間関係の愚痴ばかり言っていたんですよ。

でも、仕事を始めてからは「こんな人がいるんだけど、お父さんのところはどう?」と、悩んでいることを聞くと、「オレのところもそういう人はいるよ。こういうふうに対処したらいいよ」と、アドバイスしてくれるようになった。私の頭の中は常に仕事でいっぱいでしたから(笑)。

主人が亡くなったあと、会社の人から「奥様の活躍が書かれた新聞の切り抜きなどをスクラップして見せてくれていたんですよ」と聞きました。後でそのスクラップ帳が出てきて、すごくうれしかったです。「ああ、私のことを認めてくれていたんだな」って、あらためて実感することができましたから。

退職後も目の前のことに全力投球

――お仕事を辞めた今、どんな生活をなさっていますか?

橋本: 娘が忙しいときに、私が孫を保育園に迎えに行っています。それで夕食を作っておいてあげるんです。私が迎えに行くと、娘が行く時間よりも早いから、夕空を見た孫が「わぁ。空が明るい」と言うんです。娘も帰ってきて「食事ができているって、幸せね」って。それで「また迎えに行かなくちゃ! 夕食を作らなくちゃ」と思うんですよね(笑)。

仕事を辞め、70歳を過ぎた今でも、目の前のことを一生懸命やる。それはこの先もずっと続くと思います。

明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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