心屋仁之助さん×本田健さん夢の共演「不安とのつきあい方」
●遅咲き上等!
「これこれ! この本に僕は励まされたんです。まだ会社に勤めていて、独立するかしないか、この先どうなるのかと不安でたまらなかった時、背中を押してもらいました。2005年1月の初版本です」
取材前の挨拶を済ませ、さぁお話を伺おうと思ったところで、こう言いながら心屋さんがバッグから取り出したもの。真っ赤な表紙に、マーガレットの花一輪。『きっと、よくなる!』(サンマーク出版)。本田さんの人気著書。
2005年といえば確かに、心屋さんが07年にカウンセラーとして独立するよりも前、まだ大手企業の管理職として勤めていた頃だ。けれどその事実よりも気になったのは、心屋さんが発した中の「ある言葉」。それこそが今日、お二人に聞いてみたいと思ったテーマだったから。それは、本田さんの耳にも留まったようだった――。
カリスマカウンセラーも「不安」の大家だった?
本田健さん(以下、本田): 心理カウンセラーとして活躍する心屋さんにも、不安な時期はありましたか。
心屋仁之助さん(以下、心屋): ずっと不安でしたよ。会社を辞めるか迷っていた頃はもちろん、カウンセラーとして独立しても不安だし、本を出しても、それが20万部売れても不安でした。
――20万部……。大ベストセラーですよね。
本田: 実は20万部というのは意外と微妙なラインなんですよ。そのくらいの部数で終わってしまう作家さんはたくさんいます。そこからどう飛躍していったんですか。
心屋: 人の目に留まるようになったのか、テレビ局からメールが来まして。出ませんかと。それでテレビに出始めたら(*)、一気に年間150万部に。多くの方に読んでもらえるようになりました。
(*編集部注:日本テレビ系「解決!ナイナイアンサー」に約2年間にわたり出演)
本田: 僕は、成功者には2通りいると思っています。ビフォー・アフターのある人と、ない人です。不安な時代もあった心屋さんは、前者なわけですね。
――本田さんは、どちらですか。
本田: 僕はアフターだけなんです。仕事も、経済的にもとんとん拍子で、家族ともうまくいっているので、ビフォーがなくて、ずっとアフターといえます。これっていいことばかりのようですけど、ビフォー時代がある人は、今悩んでいる人の気持ちがわかるので、心屋さんが支持される所以でもあると思います。
心屋: 僕自身が、会社員時代の仕事のことや家族のことで悩んだからこそ、心理について学んで、今につながっている。もとはネガティブ出身ですから(笑)。
――大学を出て、企業に勤めて家庭を持って。いわば「普通」の人生を歩んでいた心屋さんが、枠を飛び出したのは……
心屋: やっぱり、独立したときですね。会社員という世間一般的なレールを外れることにした2007年。
本田: それは何歳の時でしょうか?
心屋: 41、42歳。
本田: めっちゃ厄年じゃないですか!(笑)大器晩成の遅咲き型、なんですね。
――そこから、本が出てテレビで一躍人気者に。不安のビフォーが成功のアフターに転換したのは、そうした数々の実績が、自信につながったわけですよね。
心屋: いいえ!全く違います。僕もずっと思ってましたよ、何かを成し遂げ、栄光や評価を得れば不安は消えて、幸せな日々が待っていると。でも、違いました。ビフォーがアフターに転換したのは、断食合宿がきっかけです。
――は……?
脂肪、燃料、もとからあったじゃないか
心屋: 誘われて行ったんですけどね、これがキツかった。何しろ僕は、朝食を食べながら「昼メシ何食べよう?」って考えるタイプ。初日の晩は悶絶しました。お腹が空きすぎて眠れない。食べて良いのは味の薄いスープ一杯、そんなひもじい思いをしても、体重は減る気配すらない。体が、溜めてる脂肪を燃やしてくれないんですね。
でも、いよいよ3日目くらいに体重がストンと落ちた。それで、気づきました。食べられない、満たされない、「ない!ない!」、だから「得よう!得よう!」。身につけなくては、持たなくてはと必死になっていたけど、違ったなと。脂肪、あったじゃないか。
最初ちっとも痩せなかったのは、脳が勘違いしていたから。ないという勘違いで外からあれこれ得ようとしていた、「ない」を溜め込む“欠乏肥満”だったんです。
本田: でも本当は、「ない」と思っていたのが幻で、もとからあったということですね。これは人の才能や魅力も同じですね。
心屋: ええ。それ以降、セミナーは拠点の京都だけで開催することにしました。それまでは、自分が出かけていかなきゃ誰も来てくれない、「ない」んだから行くのは当然と、全国飛び回っていたのを、やめてみた。すると、前より大勢が来てくれるようになりました。ないと思っていたのは、まさに幻。
本田: 自信とは、余計なものを捨てていったら、すでに持っていたと気づくものだと思います。
とことん落ちたら、出てくる笑い
――今、悩んで、苦しい状況にいる人にはどんなふうに接しますか?心がラクになる言葉(フレーズ)を差し出して、自分の口で言ってもらうのが心屋さんのカウンセリングの真骨頂ですが、ネガティブまっただ中の人には、どんな言葉を?
心屋: 「一回、とことん落ちてみぃ」と言います。お金がない?大変だねぇ、みじめだねぇ、どんどん減るよ、まわりの人に借りないとね、迷惑かけて、嫌われて、誰もいなくなっちゃうね。そんなふうに、追い込みます(笑)。
でもね、そうすると、みんな暗―い顔になったあと、最後に必ず言いますよ、
「そんなこと、ないと思います!」って。
最後の最後は、自分は絶対大丈夫なんだからっていう楽天的なものが、なぜかボコッと出てくる。
本田: そして、笑う。
心屋: そう。笑う。これが楽しくてねぇ(笑)。
――余剰脂肪が着火する瞬間、ですね(笑)。お二人とも、今は不安とは無縁の日々ですか?
心屋: それが、また新たなチャレンジを始めちゃって。世界に行きたいんですよ。6月に、アメリカでライブをやります。本じゃなくて、音楽で。どれだけ聴きに来てくださるか、うまくいくか、不安です(笑)。
本田: 僕も、同じく6月に世界に出ます。25カ国以上の言語で初の英語での書き下ろしの著書『Happy Money』が発売されます。ビフォーがなくてアフターだけだからこそ、あえて不安な状況に自分を置くようにしていますよ。
心屋: 定期的に、不定期に?ジェットコースターに乗りたくなりますよね。
本田: 下って、落ちて、悶絶して。「やるなんて言わなきゃよかった……」と思ったり。
心屋: でも、落ちたら、必ず上がってくる。失敗したって、笑いにできる。底の底から最終的に、出てくる言葉は……
本田・心屋: 「大丈夫!!」、なんですよね!
【取材後記】
インタビュー後にお二人は、本田さんが各界のトップランナーにインタビューする会員制のオーディオマガジン「アイウエオーディオ倶楽部」の番組公開収録に臨まれました。そこでは、「失敗した……」と落ち込んだり、悔やんだり、嫌な思いをしたようなとき、どう対処しているかといった貴重なヒントも披露されました。お二人のような「完璧な成功者」にしか見えない方でも落ち込んだりすることがあるのか、と意外ながら、大いに励まされました。勇気をもらえるお話が満載です。収録の模様は、心屋さんのブログでも詳しく紹介されています。
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●心屋仁之助(こころや・じんのすけ)さん
兵庫県生まれ。心理カウンセラー。大手企業の管理職として働いていたが、家族や自分の問題をきっかけに学んだ心理療法を原点に、「自分の性格を変えることで問題を解決する」という「性格リフォーム心理カウンセラー」として活動。京都を拠点として、全国各地でセミナー、講演活動やカウンセリングスクールを運営。その独自の「言ってみる」カウンセリングスタイルは、テレビ番組を通じて全国に知られることとなり 、たったの数分で心が楽になり、現実まで変わると評判。ブログは月間1000万アクセスを誇り、著書累計は450万部を突破。
●本田健(ほんだ・けん)さん
兵庫県生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイア生活に入り、のちに執筆生活をスタート。「お金と幸せ」「ライフワーク」「ワクワクする生き方」をテーマに1000人規模のセミナーや講演会を全国で開催するほか、インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は3800万ダウンロードを記録。『ユダヤ人大富豪の教え』『20代にしてきたい17のこと』(大和書房)、『大富豪からの手紙』(ダイヤモンド社)など130冊以上の著書累計発行部数は700万部を突破。2014年には米大手出版社Simon & Schuster社と契約、初の英語書き下ろしとなる『Happy Money』がヨーロッパ、アジア、中南米など25カ国・地域で2019年6月に発売予定。