子どものいない女性たち 「生きづらさ」もたらす社会の意識、変えるには

様々な理由で「子どものいない人生」を歩む女性たちの悩みに耳を傾けてきた、くどうみやこさん。著書『誰も教えてくれなかった 子どものいない女性の生き方』(主婦の友社)では、何年もその苦しみを人に話せなかった人、家に引きこもりがちになってしまった人など、切実な声も紹介されています。女性たちが生きづらさを感じる背景と、どうすれば変えられるかについて、くどうさんに聞きました。

「産み育てるべき」というプレッシャー

――子どものいない女性たちが生きづらさを感じる社会的背景には、どのようなものがあると見ていますか。

くどうみやこさん: 「女性は子どもを産み育てるべきだ」という意識が社会の中でまだ根強く残っていて、それが生きづらさ、悩みの言いづらさにつながっています。そもそも、産み育てることは女性だけの問題ではないにも関わらず、そのプレッシャーが女性に向かうことがこれまで多かった。多様性という言葉自体は浸透してきましたが、ライフコースの多様性という意味では、まだまだ日本社会が対応できていない部分があります。
生きづらさには、それぞれの気持ちの部分など内的要因も関わっていると思いますが、社会からの圧力など外的要因も大きい。そうした外的要因が少しでも軽減されると良いなと思います。

――結婚や出産に対する親世代との価値観の違いに苦しんでいる人も多いと思います。

くどう: 確かに世代で家族観は異なるので、そこに苦悩されている方は少なくありません。ただ、世代による考えの違いを変えようとしてもなかなか難しい。若い世代がより生きやすくすることに、力を注いだ方が良いと私は思っています。いま、家族のあり方は多様になってきていますよね。自分の中にもある無意識の偏見に気づき、様々な家族の形を受け入れていくことが大切だと思っています。

安心して話せる場の必要性

――著書を読んでいて胸をしめつけられたのが、「公園で子どもを見るとつらくなってしまう」といった当事者の声でした。そういう悩みはなかなか言えないですよね。

くどう: 子どもを望んでいた女性は、そう感じてしまうことに落ち込み、さらに自己嫌悪に陥ってしまうんですよね。ただ、子どもが欲しかった人にとっては、よくある悩みでもあります。子どもの写真が載った年賀状を見るとつらい、といった声も「あるある」ですよね。

「私なんか、子どもが多そうな場所へは最初から行かないようにしているよ」などと、時には本音を吐露して、似たような思いを抱える人と話すだけでだいぶ気持ちが軽くなります。あまり暗くなりすぎずに、少し「ブラック」な気持ちも出していく。そんな安心して話ができる場は、日常にはなかなかないですよね。

――生きづらさを解消するために、制度や慣習の面ではどんなことを変えていけば良いと思いますか。

くどう: 子どものいない女性たちからよく聞くのが、「『女性活躍支援』とよく言われるけど、子どもがいて、働いている女性だけが対象になっていないか」という声です。少子化を背景に国や自治体は様々な政策を打ち出し、子育て支援策は充実してきています。もちろんそれは重要です。

ただ、そうした政策の外に置かれてしまっている感覚を持っている方もいます。家族の形が多様化していることを踏まえた取り組みにも、踏み出してほしいです。例えば、自治体は様々な市民講座を開いていますが、子どものいない人に向けた老後のマネー講座などもあると良いですよね。あらゆる立場の人に向けた取り組みをすることで、「色んな生き方を尊重している」というメッセージにもつながるのではないか、と思います。

8年で感じる、社会の変化

――くどうさんが子どものいない女性たちの声を聞き、発信する活動を始めて8年がたちました。社会の変化は感じますか。

くどう: 現実的に子どものいない人生を送る人は増えています。なかなか悩みを打ち明けにくく、深く苦悩し、中には外に出られなくなるほど重篤な人もいます。心理的なサポートがあれば、仕事など社会活動にも再び意欲的に取り組むことができます。始めたばかりの頃は、そうした子どものいない人を支援する意味を理解してもらえないこともありました。ですが、少しずつみんなが声をあげられるようになり、変わってきたと思います。
少数派であるがゆえに声をあげにくいジレンマはありますが、社会に気づいてもらうためには大事なことだと思って発信を続けています。また、少子化の背景を考える上でも、子どものいない人の声を聞くことは重要だと思います。

――伝えることの難しさも感じてきましたか。

くどう: 単純に、子どもがいない人の悩みを「知らなかった」という方も多かったので、まずは知ってもらいたいですね。いまは価値観が変化する過渡期でもあり、批判的な意見が来ることが必ずしも悪いわけではありません。それよりも、議論の機会を増やすことが大事だと思っています。

くどうみやこさん=本人提供

自分らしいライフコース選べるように

――telling,の読者世代でもある20代~30代のミレニアル世代は、ライフコースの多様化への理解が進んでいると思います。一方で結婚や出産ができなかったときの不安感も持っていると感じます。どんなことを伝えたいですか。

くどう: ある女子大学で、就活を控えた3、4年生向けに、多様なライフコースをテーマに講義をしたことがあります。子どもがいない女性にも様々な事情や生き方があることを伝えると、「そういう話は初めて聞きました」という感想をもらいました。いまの若い世代は、子育てをしながら働くことを学生時代から意識せざるを得ない社会的な背景があると思います。「自分らしいライフコースを選んで良いんだよ」と伝えると、気持ちが楽になった学生もいたようでした。

どんなライフコースを選んでも、リスクはあります。「まったく不安のない人生はない」ということを知り、結婚や出産の有無に関わらず自分の軸でしっかり立っていられるようにすることも大事だと思う。どんなライフコースでも歩いていけるような、強さやしなやかさを持って生きてほしいなと思います。

――今後の展望を教えてください。

くどう: いま不妊治療をする人が増え、5.5組に1組の夫婦が不妊治療を経験しています(*)。成功例が取り上げられがちですが、授からなかった方も多い。その心理的なサポートの必要性も感じます。サポートがあると、立ち上がりも早くなるからです。
この活動を始めて、社会に埋もれている声があることに気づきました。そういう声を発信することで、子どもがいてもいなくても、結婚していてもしていなくても、どんなライフコースでも自分らしく堂々と生きていける社会になってほしいと思います。

*注)国立社会保障・人口問題研究所「2015 年社会保障・人口問題基本調査」よると、日本では、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は、全体で18.2%、子どものいない夫婦では28.2%で、夫婦全体の5.5 組に1組に当たる。

●くどうみやこさんのプロフィール 大人ライフプロデューサー/トレンドウォッチャー。子どもがいない女性を応援する「マダネ プロジェクト」を主宰し、「女性の生き方」を調査・研究する。また、大人世代のライフスタイルやトレンドについて独自の視点で情報を発信。メディア出演から番組の企画、執筆、講演など、多岐にわたり活動している。著書に「誰も教えてくれなかった 子どものいない人生の歩き方」「誰も教えてくれなかった 子どものいない女性の生き方」(いずれも主婦の友社)など。

『誰も教えてくれなかった 子どものいない女性の生き方』

著者:くどうみやこ
発行:主婦の友社
価格:1400円(税抜き)

記者・編集者。telling,編集部員。これまで鳥取、神戸、大阪、東京で記事を書いてきました。関心分野は、働き方・キャリア、ジェンダー、カルチャーなど。多様な働き方、生き方を取材しています。
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