子どもがいてもいなくても「自分らしく生きられるように」 くどうみやこさんの願い

子どものいない女性は、どんな人生を歩むのだろう――。病気で出産の可能性がなくなった自身の経験をきっかけに、8年前から子どものいない女性たちの話に耳を傾けてきた、くどうみやこさん。当事者らの話をもとに執筆した著書『誰も教えてくれなかった 子どものいない女性の生き方』(主婦の友社)は大きな反響を呼びました。これまで500人ほどの話を聞き、感じてきたことを、くどうさんに聞きました。

「選択できる」「できない」 その違い

くどうさんが「子どものいない女性の生き方」に向き合ったのは、自身の経験からだ。40歳を過ぎ、子宮の病気で出産の可能性がなくなったことがきっかけだった。

小さい頃から「いつかは自分も子どもを産み育てるだろう」と漠然と思っていた。30代で結婚したものの、日々忙しく仕事をしていた。会社員からフリーランスに転じ、育休が取りにくい状況も重なった。子どもができたらうれしいけれど、いない人生が絶対に嫌なわけではない――。先送りするうちに年齢を重ね、次第にそんな気持ちになっていたという。

だが、病気によって可能性が絶たれたことに、くどうさんは大きなショックを受けた。「選択できることと、もう選択できないこととの違いは、大きかった」と振り返る。産まなかった、産めなかった、産みそびれた。そんな複雑な感情が混ざり合った。

子どものいない人生は、どんなものなのだろう。くどうさんの周りにいる先輩方は子育てを経験した人が多く、子どもや孫がいないまま、年を重ねていくイメージが持てなかった。もともと「トレンドウォッチャー」という肩書で仕事をしており、流行の社会的な背景を調べることを得意としていた。「産めないことが確定したのだから、そこに向き合いたい」と、子どものいない女性の生き方を調べるため、データや文献を探した。そこで感じたのが、子どものいる生き方と比べて、圧倒的に「データが少ない」ということだった。

「誰にも話したことがなかった」

くどうさんはまず、子どもがいない女性たちの声を聞く会を開くことから始めた。初回は15人が参加してくれた。「誰にも苦しさを話したことがなかった」「初めて本音を話した」。そんな声が口々にあがり、泣き出してしまう人もいた。

調べ始めた当初感じた「データの少なさ」。それは、苦しんでいる人はたくさんいるにも関わらず、その声が社会に表面化していなかったからだと、くどうさんは思った。

「自分以外の人たちの気持ちを初めて知り、衝撃を受けました。これほどまでに本音を話す場所がないんだ、と思いました」と語る。

参加者の悩みは深く、くどうさん自身もどう対応すれば良いのか悩んだという。ただ、会を開くごとに、参加者に変化があらわれることがわかった。

会では、子どもがいない人生を生きることになった経緯や、その悩みをそれぞれが打ち明ける。話せたことですぐにすっきりした表情になる人もいれば、何度か参加するうちにようやく本音を話せるようになる人もいる。変化の速度は人によって異なるが、「はき出すことで楽になれる」ことには、確信を持てたという。

「マダネ プロジェクト」と名付け、当事者の声を聞く会を続けて8年。参加者は20代から80代と幅広く、特に30代後半から40代が多く参加する。マダネの由来は、人生は「まだまだこれから!」というメッセージと、新しい女性像を意味する「ネオ(neo)」を組み合わせた造語だ。

くどうみやこさん=本人提供

60代以上のロールモデルが「灯台」に

くどうさんがこれまで話を聞いた当事者は500人ほどにのぼる。不妊治療を経て授からなかった人、仕事などの事情で出産のタイミングを逃した人、パートナーとの縁がなかった人、病気で出産の可能性がなくなった人……。その背景は様々だ。

中には、自ら子どものいない人生を選んだものの、「子どもをほしくないと思う自分はおかしいのではないか」と思い悩み、誰にも打ち明けられずにいた人もいた。10年以上苦しんだ人、「3カ月ぶりに外に出た」という人も。「子どもがいない」という共通項はあれども、その背景と苦しみは、くどうさんの想像を超えていた。

60代以上の子どものいない女性たちを「グランマダネ」と名付け、話を聞く機会も設けた。子どもがいないことがいまよりも少数派だった時代を生き抜いてきた先駆者であり、仕事や趣味を楽しんで生きるグランマダネたち。その経験を聞き、「暗いトンネルの中にいる自分にとって、グランマダネの存在は灯台のようです」と言った40代の参加者もいたという。

マジョリティーが正解ではない

コロナ禍のいまも、オンラインで会を開き続けている。毎回すぐに定員が埋まってしまうほど、関心は高いという。運営は、主旨に賛同してくれた友人やこれまで参加した女性たちがボランティアで手伝ってくれている。

家族には多様な形があり、マジョリティーが正解ではないこと。幸せの定義は人それぞれで違い、時代によっても変化すること。「子どものいない女性の生き方」というテーマに出会い、くどうさん自身にもたくさんの気づきがあったという。

「子どもがいてもいなくても、結婚していてもしていなくても、どんなライフコースでも自分らしく堂々と生きていける社会になってほしい。そのための発信を、これからも続けていきたいですね」

●くどうみやこさんのプロフィール 大人ライフプロデューサー/トレンドウォッチャー。子どもがいない女性を応援する「マダネ プロジェクト」を主宰し、「女性の生き方」を調査・研究する。また、大人世代のライフスタイルやトレンドについて独自の視点で情報を発信。メディア出演から番組の企画、執筆、講演など、多岐にわたり活動している。著書に「誰も教えてくれなかった 子どものいない人生の歩き方」「誰も教えてくれなかった 子どものいない女性の生き方」(いずれも主婦の友社)など。

『誰も教えてくれなかった 子どものいない女性の生き方』

著者:くどうみやこ
発行:主婦の友社
価格:1400円(税抜き)

記者・編集者。telling,編集部員。これまで鳥取、神戸、大阪、東京で記事を書いてきました。関心分野は、働き方・キャリア、ジェンダー、カルチャーなど。多様な働き方、生き方を取材しています。
産まない人生を考える