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【グラデセダイ50 / かずえちゃん】#私たちはここにいる #滅びないよ

「こうあるべき」という押しつけを軽やかにはねのけて、性別も選択肢も自由に選ぼうとしている「グラデ世代」。今回はYouTubeを通してLGBTQのことを発信している人気YouTuber、かずえちゃんのコラムをお届けします。10月11日は「世界カミングアウトデー」。かずえちゃんは毎年この日に「LGBTQ100人カミングアウト動画」を公開しています。この日を前に、かずえちゃんが思うこととは?

●グラデセダイ50

カミングアウトの概念とは

つい先日、同性愛が広がれば足立区は滅びる……との趣旨の発言をした区議がいました。
そして「生産性」という言葉を用いて、多くの人の心に傷を負わせた衆議院議員もいました。

「なぜ私たちはカミングアウトをするのだろうか」

違う。

「なぜ私たちはカミングアウトをする必要があるのだろうか」

いつかカミングアウトなんていう概念が【滅びる】社会になるように……
そんな想いを込めて、今日はコラムを綴ろうと思います。

2017年から始めた「LGBTQ100人カミングアウト動画」

毎年10月11日は「世界カミングアウトデー」です。
自身の「性的指向 ※1 」や「性自認 ※2 」をカミングアウトしたLGBTQの人々を祝い、LGBTQへの理解や認識の向上を目的とした日と言われています。
そんな世界カミングアウトデーに合わせ、僕は2017年から毎年LGBTQ100人カミングアウト動画を作成しています。

※1 どんな性を好きになるかを指す概念/※2自身の性をどのように認識しているかという自己意識の概念

毎年SNSなどで参加者を募り、全国を巡りながらLGBTQの方々100人と一緒に動画を制作してきました。
緊張した面持ちでカメラのまえに立ち、カミングアウトするみなさんの姿はとても力強く、とても美しく、またとても悲しくもあります。
ファインダー越しに、彼ら一人ひとりの言葉を聞きながら、
なぜ私たちはカミングアウトするのだろうか……と考えることもあります。

無意識の思い込みで差別をしないで

僕が、両親にカミングアウトしたのは24歳のときでした。
大好きな恋人を大切な家族に紹介したい……そう思ったから。
カミングアウトする相手というのは、決して誰でもいい訳ではないと思っています。(ちなみに僕の場合はそうでした)
「この人になら、自分のこと伝えても大丈夫かもしれない」
「この人なら、きっとわかってくれるかもしれない」

「うちの両親なら、きっとわかってくれるだろう……」
多分、そう思える関係があったから、僕はカミングアウトすることを選択したんだと思います。
逆を言えば、両親がゲイに対して差別的な言動や否定的な感情を持っていることをこれまでの生活の中で感じていたら、僕はカミングアウトすることを選択しなかったでしょう。
なぜなら、その感情が自分自身に向けられる可能性があるかもしれないわけだから……。

マイクロアグレッション(Microaggression)という言葉があります。
何気ない日常生活のなかで、自分自身は差別と思っていないけれども、実は「無意識」のうちに行ってしまっている偏見や差別があることを言います。
そして、その無意識の差別というのは、長年かけて少しずつ少しずつ刷り込まれてしまっている「自分が正解」という無意識の思い込みから生まれている気がします。

カミングアウトって居場所を作ること

2020年のカミングアウト動画は、コロナ禍での制作となり、例年のように直接会って撮影をすることができず、全てリモートで行いました。
今年も100名を超える方々が、自分自身の想いをカミングアウトという言葉で伝えてくれました。
カミングアウト「する/しない」はそれぞれの選択であり、「正しいこと/正しくないこと」で判断するものではないと思っています。

しかし、みなさんから送られてきた動画をひとつずつ編集しながら、「なぜカミングアウトをする必要があるのか?」ということが少しだけわかった気がします。
振り返ると、24歳の僕がカミングアウトした背景には、「ここには自分の居場所がある」ということを知りたかったのかもしれません。
「長男とはこうあるべきだ」と知らず識らずのうちに刷り込まれていた「長男像」というものに、自分が応えられない罪悪感や葛藤……。
そして彼らの息子として、ここにいてもいいのだろうかという不安がいつも心のどこかにありました。

「男の人が好きなんだ……ごめんなさい……」
僕と両親、お互いに初めてのカミングアウトでした。

自分はここにいてもいいんだ。
ここには自分の居場所があるんだと知ることができました。

何度も言いますが、カミングアウトをする/しないはその人の選択です。
しかし、カミングアウトすることを選んだその人の背景には、さまざまな想いや葛藤があることを知ってください。
そして「なぜカミングアウトをする必要があるのか?」ということも考えてみてください。
優しさとは想像することだと思います。

10月11日に、「LGBTQ100人カミングアウト2020」が公開されます。
みなさんの勇気と行動を誇りに思います。
そしていつの日か、カミングアウトをする必要がない社会になりますように……。

  • telling,はLGBTQアライ(ally)として、10月11日の「世界カミングアウトデー」をともに祝う気持ちを込め、今回の「グラデセダイ」のトップ画像をLGBTQコミュニティーのシンボルとされるレインボーに変更しています
1982年福井県生まれ。高校卒業後、ウエディングプランナーとして働く。その後24歳で転職。仕事の休みを利用しながら色々な国へ。「いつか海外で生活したい」という思いから、30歳でカナダへ語学留学。同性婚が認められているカナダで約3年間生活した。「LGBTQがもっと暮らしやすい日本にしたい」という思いから、帰国後2016年からYouTubeで動画配信を始める。現在アドレスホッパーとして生活中。 Youtubeチャンネル登録者数7.8万人(2019.9月現在)
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