松岡茉優×三浦春馬「おカネの切れ目が恋のはじまり」1話。その笑顔につい目が吸い寄せられてしまう

お金を清く正しく使いモノに恋に一途な清貧女子VS御曹司でお金にルーズな浪費男子、松岡茉優と三浦春馬のタッグで放送前から話題を集めていた「おカネの切れ目が恋のはじまり」。極端な二人が出会った第1話を振り返ります。

極端なキャラクターを憎めない存在にする三浦春馬の力

お金を自分の思う通りに正しく使い、清貧をめざす九鬼玲子(松岡茉優)。ある日、1年間片思いを続け、ついに“お迎え”に行った1680円の豆皿を、軽そうな男に目の前で買われてしまう。その男こそ、玲子の働くおもちゃメーカーの御曹司、猿渡慶太(三浦春馬)だった。あまりの浪費癖に父親(草刈正雄)の怒りを買い、営業部から経理部へと飛ばされた慶太。玲子はその教育係に任命される。

慶太の奔放な御曹司ぶりが気持ちいい。その笑顔につい目が吸い寄せられてしまう。背が高くて、顔もよくて、お金に困っていない余裕が端々に見える鷹揚な雰囲気。けれども同僚にお菓子を買ってきたり、玲子のポーカーフェイスの奥に潜む苛立ちを見透かしたり、周りを観察している様子も垣間見える。元カノに「どうして俺じゃダメだったの〜」と笑顔で問いかけるシーンのやるせなさもよかった。何もかもを持っているように見えても、どうにもならないこともある(その後、進展がありそうなところを自業自得でくじかれるわけだけど)。慶太という一歩間違えば嫌味になりそうなキャラクターが、ぎりぎりのところで憎めない存在にとどまっているのは、春馬の魅力によるところが大きいだろう。

松岡×三浦春馬、北村匠海、三浦翔平の関係性

会社では、非売品の販促グッズがフリマアプリで売られていることが問題に。そんな中、玲子は営業部のエース・板垣(北村匠海)の領収書に目をつける。板垣は幼い弟や妹を抱え、両親の町工場の経営不振に悩まされていた。ちなみに、町工場で働く板垣の父親としてワンシーンだけ登場したのがモンスターエンジンの西森洋一。実家が大阪の町工場である西森をここでわざわざ起用する遊び心よ。そうそう、お皿のお店の店主は安齋肇でしたね。

飲めない人が感じるワリカン飲み会の不公平感というささやかなところから、奨学金の返還が負担になっていることまで……。このドラマにはお金にまつわる問題が大小取り混ぜて組み込まれていて、それがどれも現実的だ。慶太の浪費ぶりと玲子のつつましさが両極端にありつつ、その中で起こることに共感したり理解したりできる。

北村匠海と松岡といえば、映画「勝手にふるえてろ」を思い出す人もいただろう。松岡演じる主人公ヨシカの長き片思いの相手イチを北村が演じていた。今回、板垣の横領を突き止め、彼のお金に関する苦しみを吐き出させた玲子は、さらに板垣の提出書類の美しさを褒める。ささやかな仕事ぶりを見ていてもらえることが、どれだけ励みになることか。玲子と板垣の関係性もこれから気になるところだ。

玲子は「ほころびが気になった」という理由で板垣に救いの手を差し伸べ、慶太に金銭感覚を身に着けさせようとする。常に自分を律し、お金をコントロールしているように見えた彼女だが、初恋の相手であるお金の専門家、早乙女(三浦翔平)に対してはタガが外れることが1話最後に発覚する。慶太と玲子、ほころびのある二人はこの先、どんなふうに変わっていくのだろう。

(C)TBS

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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