レスリング川井梨紗子さん「吉田沙保里さん、伊調馨さんに近づきたい」 金メダリストが背負う新しい責任【川井姉妹・前編】

開催が延期された東京オリンピック。女子レスリング57キロ級代表に内定している川井梨紗子さん(25)には2大会連続の金メダルの期待が集まります。62キロ級では妹の友香子さん(25)も代表が内定しており、姉妹出場も注目されています。そんなお二人にtelling,がオンラインでインタビュー。3日連続でお届けします。初回は、姉の梨紗子さん。4年前のリオ五輪の際にはなかった特別な感情が芽生えているという胸中とは――。

あこがれの選手を超えて

――63キロ級で金メダルを獲ったリオ五輪後、梨紗子さんは本来の階級である57キロ級で東京を目指しました。昨年7月、五輪4連覇の伊調馨さんに勝ったことで、東京への切符を引き寄せましたね。梨紗子さんにとって伊調さんはどんな存在でしょうか。

川井梨紗子さん(以下、梨紗子): 試合が終わって最初に妹の友香子に会ったとき、出た一言目が「疲れた」でした。勝ってうれしいとかそんなんじゃなく、体も心も、ただただ「疲れた」。

馨さんは私にとって、一番あこがれの存在です。昔も今も、それはずっと変わらない。

馨さんと試合をするときはライバル同士。「憎い」とはまた違うのですが、「この人さえいなければ」「勝たないとオリンピックに行けない」という気持ちにはなっていました。敵ではないけれど……。それでも、昔からテレビで見てきている先輩なので、あこがれの気持ちの方が今でも強いです。

2019年7月6日、女子57キロ級プレーオフで伊調馨さん=前=を背後から攻める川井梨紗子さん。林敏行撮影

――五輪初出場のリオでは、女子の日本代表には伊調さんのほか、五輪3連覇の吉田沙保里さんもいました。現段階で来年の東京に出る五輪経験者は、梨紗子さんと土性沙羅さんの二人ですね。

梨紗子: 今度は、リオの時とは立場が違うと思っています。初出場じゃないので、自分が引っ張っていかなきゃいけない。

4年前、先輩方……沙保里さんや馨さんと一緒に大会に出た一人として、二人のようになれるとは思わないですが、少しでも近づけるようにいたいと思います。

新型コロナウイルス感染拡大による練習自粛期間中、梨紗子さんはツイッターを再開。4年前に撮影された吉田沙保里さんや伊調馨さんらとのスナップを上げました。

――個人への期待も高まっています。日本レスリング協会は、女子の「金」獲得目標を3個と設定。梨紗子さんは2019年の世界選手権で金メダルに輝いたことから、最有力との声も聞かれます。

梨紗子: リオが終わり、東京を目指すとなったときから、大会ごとに反省点は出ていて、自分の課題としてその都度見つめています。

自粛期間中には家でストレッチを始めました。それまで、ストレッチは練習前後にやるくらいだったのですが、コロナでできなくなったのを機にネットショップでヨガマットを買い、毎朝やる習慣をつくりました。

コロナで、接触を避けられないマットでの本格的な練習ができなくて、ウエイトトレーニングに重点を置いていたら、負荷がかかったのか、初めてぎっくり腰になったんです。予防のためにもがんばっています。

髪色で気持ちに変化も

――気分転換には何をしていましたか。

梨紗子: いま、髪の色がピンクです。大好きな歌手の倖田來未さんの真似をしました(笑)。何日かで落ちるカラー剤で染めたんですけど、ブリーチをしていたからか、すごく色が入りました。髪形や色を変えるのが結構好きで、なんでもやってみたくなっちゃうタイプです。気分も変わりますね。

家ではマニキュアもします。試合前にはお店でペディキュアもします。好きな色や、これも倖田來未さんのネイルを参考にして。

もし今年、東京オリンピックが開かれていたら、今ごろ、赤一色か白一色かの、シンプルでかっこいいネイルをしていたと思いますね。

――7月に入ると全日本の合宿も再開されます。改めて目標を教えてください。

梨紗子: 東京五輪は、地元開催という一生に一度の巡り合わせの大会だと思っています。開催されれば2連覇を狙っていきたい。簡単ではないですが、妹の友香子と二人で金メダルを実現できたらと思います。

●川井梨紗子(かわい・りさこ)さんのプロフィール
1994年11月生まれ、石川県津幡町出身。ジャパンビバレッジ所属。小学2年生のとき金沢ジュニアレスリングクラブでレスリングを始める。中学3年時に全国中学生選手権41キロ級で優勝。レスリングの強豪、愛知・至学館高校へ進学し、全国高校女子選手権で2度優勝(52キロ級、56キロ級)。至学館大時代にリオ五輪で金。2017、18、19年と世界選手権3連覇。

見渡す限り山と田んぼの里山育ち。記者として関西、東海、首都圏で取材。最近はウェブ周りをうろうろしています。
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