熱烈鑑賞Netflix

「メディカル・ポリス」シーズン1 え、感染症コメディ? シリアスな状況でも笑いは生まれる希望、全10話1話25分をイッキ観で【熱烈鑑賞Netflix】

世界最大の動画配信サービス、Netflix。いつでもどこでも好きなときに好きなだけ見られる、毎日の生活に欠かせないサービスになりつつあります。そこで、自他共に認めるNetflix大好きライターが膨大な作品のなかから今すぐみるべき、ドラマ、映画、リアリティーショーを厳選。今回取り上げるのは、“コロナ疲れ”のあなたにオススメのNetflixオリジナルドラマ「メディカル・ポリス」。こんな時こそ、コメディドラマを観よう!

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新型コロナウイルスの拡散で世界が大変である。ニュースやデマや情報が交錯して、つかれたー、もうつかれたー、と魂が悲鳴をあげている。
そんなときにオススメなのは、すべてを笑い飛ばすひととき。ずっと歩きつづけることはできないから、ときには休みが必要なように、少しのあいだバカバカしいドラマを観よう。

そこで、「メディカル・ポリス」をオススメする。2020年1月10日から配信スタートしたNetflixオリジナルドラマ。シーズン1は、全10話。1話が25分ぐらいの短いドラマだ。

脱線につぐ脱線の感染症コメディ?

主人公は、サンパウロの小児科医院に勤務するローラとオーウェン。首筋に同じ発疹のある患者がつづけざまに運び込まれる。
「感染症の緊急対策を!」
ローラが、患者の組織サンプルを検査して、情報をCDC(アメリカ疾病予防管理センター)にメール。それがきっかけで、ふたりはCDCの秘密基地へ。
ベルリンで感染が発生したということで、アメリカ空軍機に乗り込む。
飛行中に、銃撃戦が発生。
急遽、ふたりは特別捜査官に任命され、パラシュートなしで飛び降りることになって!
と、1話の前半をどうにかこうにか説明しようとがんばっみたが、ムリーーーー!
感染症ディザスタードラマだが、映画「コンテイジョン」みたいなシリアスさはない。
なにしろ、脱線につぐ脱線、めまぐるしい展開のB級コメディ、悪ふざけ炸裂のドラマなのだ。

医者であり特別捜査官でもあるローラとオーウェン/Netflixオリジナルシリーズ『メディカル・ポリス』独占配信中

たとえば第3話。
バイオテロ犯人の医療記録を盗むためにフィレンツェの病院に忍び込んだふたり。
警察官に見つかり、警報音がなる。
逃げる。窓ガラスを割り、ベランダへ。
下を見ると、ちょうど配送トラックのマットレスがある。拳銃をかまえた警官がやってくる。
「やるしかない」
ギリギリのタイミングで飛び降りるふたり。
ここまでは、アクション映画あるある、だ。
だが、ジャンプしたふたりは、目測を見誤り、トラックの荷台の角と運転席の屋根に落下、激突、大失敗である。

ドラマのあるあるを、絶妙にズラし、物語は脱臼の連続。

民族とか宗教とかで犯人だと決めつけたりしてない?

正直、1話では、まだ乗り切れないかもしれない。
ひねりとクセのある独特なコメディだし、感染症をあつかっているし、日常のハードモードからスイッチを切り替えるのはそんなに簡単じゃない。
だが、2話、3話と観ているうちに(1話約25分なので、ぜひ続けて観てほしい)、どんどんバカバカしさに波長が合ってくる。合ってくるというより、悪ふざけがはげしくて、合わせてやらなきゃしょうがないという気持ちになってくる。

第3話、感染現場で怪しいアラブ人を発見し追うシークエンスもひどい。
聞き込みをはじめると、怪しい男が逃げ出す。
「ひとり逃げたぞ、あとを追う!」
バイオテロ犯の可能性があるのだ。
「待って、待って。あきらかに怪しいわよね。でも、民族とか宗教とかで勝手に判断して犯人だと決めつけたりしてない?」
ポリティカルにコレクトネスかどうか、急に気にしはじめるのだ。
「俺も同じことを考えてた。でも、彼が犯人の可能性が高いと思う」
「わかった」
「まあ、ともかくこの話し合いができて嬉しいよ」
てなことをやってうちに、怪しい男を見失う。

脱線の連続だと思っていたら、後半では意外な伏線がいくつも収束して、「けっこう緻密に構成してんな!」と褒めてあげたくなる。
世界各国をめぐる捜査も、ブラジル(?)→サンパウロ→ベルリン→ニューハンプシャー州→フィレンツェ→フロリダ→ラトビア→上海→ブータンとスケールがでかい。
世界の観光案内番組かというツッコミを先回りして、途中、観光案内的セリフが挿入される。
(小児科医がブラジルにあるという奇妙な設定は、同じメンバー制作の「チルドレンホスピタル」が元ネタ)。

手術中に札束をにぎりしめるオーウェン/Netflixオリジナルシリーズ『メディカル・ポリス』独占配信中

このバカバカしさが必要

もちろん感染症に関することも、笑い飛ばす。
詳しくは書かないので、ぜひ観てほしい。
最終話のラスト、不謹慎だと怒り出す人がいるかもしれない。
だが、不要不急の外出を控え、たくさんの人がマスクをし、軽い咳をするのにもビクついている今こそ、このバカバカしさが必要だ。
ここまで不謹慎なら、いっそすがすがしい。
どんなシリアスな状況だって、ひとは笑うことができる。お腹だって空く。それは希望だ。

「メディカル・ポリス」

原作・制作:ロブ・コードリー デヴィッド・ウェイン クリスター・ジョンソン ジョナサン・スターン
出演:エリン・ヘイズ ロブ・ヒューベル マリン・アカーマン ロブ・コードリー ケン・マリーノ

ゲーム作家。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「はぁって言うゲーム」「記憶交換ノ儀式」等。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。
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