24歳で留学、29歳で米国公認会計士取得「やりたいことを見つけるまで時間がかかってもいい」
● ○歳のわたしへ09
「社内恋愛、寿退社……この流れに乗りたくなかった」
24歳のわたしへ
私が新卒でゼネコンに入社した当時は、男女雇用機会均等法がやっと施行されたばかり。とはいえ、女性は男性をサポートする裏方の仕事をしながら、社内恋愛を経て、結婚して辞めていくという道筋ができていました。就職難のなか、親のコネで入社したので、将来何になりたいという夢もありませんでした。そんなモチベーションだったので、特に仕事にも興味が湧かず、ただ漠然と業務をこなすだけの毎日。一方で、みんなと同じ道筋をたどることはしたくないとも思っていました。
この会社で2年半ほど働いてみて、このままでは何も解決しないと思い、24歳の時に退職をしました。仕事を辞めて時間ができたので、友人とハワイを旅していた時、現地の日本人留学生と出会い、彼女の自由な生き方に引かれて、アメリカ留学を決意しました。
ハワイ旅行の約4カ月後には、アメリカ・サンディエゴへ。将来を見据えて、留学して勉強を始めたのが大きなターニングポイントになりました。
「やりたいことを見つけるまでに、時間がかかってもいい」
telling,世代のあなたへ
アメリカで勉強するなかで、あまりにもお金がかかるので、お金を貯めるために日本に帰ることを決めました。再就職先を探す際に、エージェント担当者から「今の時代、女性が本気で働きたいと思ったら、英語のほかに何かできることがないと難しいですよ。数学が得意であれば税理士か公認会計士の資格を取るのはどうですか」と言われて。いろいろ調べていくと、アメリカの公認会計士のことに行き着きました。参考書の内容が意外にもすらすら頭に入ったので、これは自分に合っているんだと気づきました。その後、2年間がむしゃらに勉強して、無事合格。29歳の時に、英語とUSCPA(米国公認会計士)を武器に、外資系家電メーカーに就職しました。
この会社でラッキーだったのは、実績から将来をプランニングする管理会計という仕事から始めることができたこと。この会社でいずれは経理のトップになりたいと思った時こそ、自分のやりたいことが見つかった瞬間でした。
何かやりたいことが見つかるまで、私のように時間がかかる人がいて当たり前。やりたくないことは、やらなくていいと思うんです。自分自身がポジティブであるために、まずはやりたいことを見つけることが大切だなと思います。
「最後は自分を信じるだけ。失敗したっていい」
39歳のわたしへ
その後、フランスの化粧品会社に転職し、管理会計をやることに。大企業だったので、会社全体を見られず、最終的に経理のトップになりたいという夢には少し遠い気がしながらも楽しく働いていました。そんな矢先、ヘッドハンティングの会社から「バートンという会社を知っていますか?」と電話があって。それが39歳の時です。スノーボードをやらなかったので、当時は名前すら知りませんでした(笑)。バートンで経理のトップ、ファイナンスディレクターを探しているので、興味がないかという内容でした。
バートンの理念は「Work hard, Play hard」。一生懸命働いた分、一生懸命に遊ぶ。そういうカルチャーが私には合っていたんでしょうね。働き始めて11年目にファイナンスのVP(VP of Finance/財務担当執行役員)に昇進しました。そこからさらにやる気が出て、もっと一生懸命働いていたら、2年後にオーナーでCEOのドナ・カーペンターから「日本のトップ、GMをやってみませんか?」という話をもらいました。
私のキャリアの最終形はファイナンスのトップだと思っていたので、戸惑いましたがドナから直接言われたことが自信につながって、やってみようと前向きに思えるようになりました。
もちろん不安はありましたが、最後は自分を信じることが大事だと思うんです。どこまで自分を信じて、どこまで自分を試せるのか。失敗したっていいんです。同じ失敗を繰り返さなければ、またほかの道が開けてくる。「自分を信じて、失敗を恐れず」。とにかくやりたいことをやる、そして自分を信じて一歩踏み出すこと。私自身、これからも続けていきたいと思っています。
●須川尚美さんのプロフィール
1965年生まれ。横浜市出身。大学卒業後、米国で公認会計士を取得。フランスの化粧品会社でコーポレートコントローラーとして勤務。2005年、ファイナンシャルディレクターとしてバートンジャパンに入社。財務や総務などの部門を担当し、社長代理も務めた。2019年10月から代表に就任した。業界初の女性ゼネラルマネージャーとして活躍している。
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