自分を変える、旅をしよう。

地球1周のきっかけは仕事と恋人からの逃避行「現地の人と同じ格好で時間共有」が旅の薬

初めてのぼっち旅が1年間かけての地球1周旅行だったという平船智世子さん(33)。学生時代は周囲の空気を読んで同調していくタイプで、「将来の夢がなかった」と言います。そんな平船さんを変えたのは、旅でした。リーマントラベラーの東松寛文さんが紹介するシリーズ「自分を変える、旅をしよう。」は、この平船さんに迫ります。
旅で実感する“一度きりの人生”。ほんの少し心を開くだけで、違う世界が見えた。 ネガティブ女子が奇祭ハンターになれたワケ。魔法の言葉は「なんで?」「どうして?」

●自分を変える、旅をしよう。#8 平船智世子さん(33)前編

リーマントラベラーの東松寛文です! みなさんの中にも「今年こそは」とか、「自分を変えたい」とか、思っていつつも、モヤモヤしている人いませんか? 進学、就職、退職、転職、結婚、離婚……人生の転機はいろいろありますが、旅もそのひとつになると思います。今では「奇祭ハンター」として知られる平船さんの最初の一歩から聞いてきました。

リーマントラベラー東松(以下、――): 旅にハマる前は、どんな働き方や生き方、考え方をしていたのですか?

平船さん(以下、平船): とにかく周りの目を気にする性格で、学生時代は一度も手を挙げて発言したことなかったんじゃないかな……。他人と自分を比べて勝手に落ち込んでいた時もあったほどとても視野が狭いタイプでした。

なるべく目立たないように意識して過ごしていたし、女子ならではのトイレへの連れションもたとえ尿意がなかろうが一緒に行動していたりしていて、1人行動ができない性格でした。

仲間外れになったときはまさにこの世の終わり。あの時の私は、家と学校の二つしか生きる世界を知らなかったんですよね。

――じゃあ、旅で三つ目の世界を見つけたんですね。

平船: 二つの世界しか知らないと、どちらか一方でうまくいかなくなったとき、もうひとつの世界だけだと窮屈になってとても生きづらかったことを覚えています。多数決で決めたような「常識」通りに過ごしていくことに魅力を感じず、かといって常識の枠を越える勇気もなかったです。

当時は、テレビで特集される自分が知らない世界(海外)での考え方というものにどんどんひかれるようになり、疑似体験するかのようにそういうテレビ番組ばかり見ていました。

タイで初めて日本人宿に泊まったときの仲間たちと(平船さん提供)

――自分を変えることになった旅に出るきっかけは何だったんですか?

平船: 昔から家族や友人同士での「海外旅行」の機会はありましたが、「海外への旅」となると世界一周が生まれて初めての一人旅だったと思います。そのときは片道航空券で入国できるマレーシアを選びました。

宿では知らない人同士が部屋を共有するドミトリーを初めて体験し、年齢や職業一切関係ない、それまでの人生では出会わなかったような人たちとの交流を経験しました。そこで出会ったバックパッカーの人たちは、私の求めていた枠にとらわれない考え方ばかりで刺激を受けたのを覚えています。

――ドミトリーは平船さんにとってそれほど居心地がよかったんですね。

平船: 日本にいたら恥ずかしくて言えないようなことを言っても、誰も否定せず、笑い者にしない空気感がとても居心地が良かったです。十人十色の考えを受け入れる、応援し合える仲間は、私の人生で大きな出会いだと思っています。

――話は少し戻るけれど、いきなり世界一周ってすごいですね!

平船: 実は私の場合、「昔からの夢」ではなくて……。

“仕事を辞めたい理由作り”と“お付き合いしていた男性と物理的に離れたい”という理由でした!(笑)

学生時代からとくに将来の夢がなかったタイプで、「いつかやりたいことが出来た時にすぐ動けるようにしておこう」と貯金はしていたので昔の自分に救われました。(笑)

やりたいことがない人は、いろいろと探し回るのも良いですが貯金することもおすすめです!!!

南インドのオナムというお祭り(平船さん提供)

――最初の世界一周はどれぐらいの期間で旅をしたんですか?

平船: 1年間で15ヵ国を周遊しました。その中でもタイとコロンビアは過ごしやすかったですね。タイでは、タイ式マッサージの資格を取ったり、コロンビアでは現地校の日本語クラスに遊びに行ったりして、気が付いたら長期滞在をしていました。

世界2周目は半年で20ヵ国。アメリカ横断やシルクロードをたどるような陸路メインの旅でした。世界三周目は3ヶ月で10ヵ国くらい。西アフリカと南米がメインでした!

――これまでどれくらいの国を旅しましたか?

平船: 2019年現在で85ヵ国です。元々、お祭り巡りをテーマに世界一周を考えていたので、最初から世界2周はするつもりでした。お祭りの時期が被っているから。

――旅をするにあたり自分なりに目的を見つけたのと、旅の仕方も毎回違うようにアレンジしているんですね。

平船: 1周目は西回り、2周目は東回り、3周目は南半球中心。2020年はもしかしたら4周目を達成しているかもしれません!(笑)

――お祭りに注目したのはなぜですか?

平船: 語学が苦手な私でも、現地の人とはやく打ち解けられるのは“なぜだろう?”と考えたときに、地元の人たちが大切にしている1年に1度のお祭りの時間を共有していることが大きいのかなと思っています。

お祭りはその土地の文化や歴史、宗教、名産物など生活に密接しているものを教えてくれます。こちら側の「知りたい」という気持ちは相手がとても喜んでくれる行為で、人と人をくっつける不思議なパワーがあるんです。だからなるべく現地の人と同じ格好になりたいし、苦楽ありの時間さえも共有したい思いが強いです。

バヌアツの女性たちといっしょに撮った1枚(平船さん提供)

私たち日本人にとっては、非日常的な世界に触れることができて、「こんな世界(習慣や考え方)があるんだ!」って視野がぐいぐい広がっていくのもやめられない楽しさですよね!

――印象に残っている旅先は?

平船: 西アフリカの国々ですね。2015年9月と、2018年1月〜3月に訪問しています。2度とも濃厚な大冒険でした。(笑)

――「大冒険」という感覚の旅なんですね

平船: 1度目の西アフリカの旅は、ニジェールにいる遊牧民ボロロ族の婚活祭りを追いかけたときです。遊牧民のお祭りなので、いつ、どこにいるのか分からない、たどり着くための難易度がとても高いお祭りでした。セキュリティを雇ったり、テント生活をしたりしながら、道無き道を進む旅は今でもなかなかありませんからね。

2度目は、ブルキナファソのフェスティマという2年に1度開催される仮面祭りに行ったときです。ATMから現金がなかなかおろせず、実質無一文になってしまって、現地の人が食事をおごってくれたり、家に泊まらせてくれたりしてとても助かったのを覚えています。

日本にいると、治安面などネガティブなイメージが多い西アフリカの国々ですが、私にとっては、地球3周で訪れた国々の中で一番手を差し伸べてくれた、思いやりのある人たちと多く出会えた場所でした。

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旅で実感する“一度きりの人生”。ほんの少し心を開くだけで、違う世界が見えた。 ネガティブ女子が奇祭ハンターになれたワケ。魔法の言葉は「なんで?」「どうして?」
平日は激務の広告代理店で働く傍ら、週末で世界中を旅する「リーマントラベラー」。2016年、毎週末海外へ行き3か月で5大陸18か国を制覇し「働きながら世界一周」を達成。地球の歩き方から旅のプロに選ばれる。以降、TVや新聞、雑誌等のメディアにも多数出演。著書『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』(河出書房新社)、『休み方改革』(徳間書店)。YouTube公式チャンネルも大好評更新中。
リーマントラベラー