ソムリエが教える 家飲み×コンビニ ワイン術 04

【連載】ホットスナックとワインの妙 チリ産シャルドネ×コロッケ+「α」

身近なコンビニやスーパーでも安くてそこそこ美味しいワインが手に入るようになりました。でもワインのお供のフードまでは、なかなかピンとくる出会いがないのではないでしょうか。『男と女のワイン術』の共著もある銀座のワインビストロのオーナーソムリエ兼シェフが、身近に手に入る食材とリーズナブルなワインとで、ミレニアル世代も納得の“マリアージュ”を、ちょっぴり科学的に提案します。

これまで3回にわたって、ワインの基本的な味わいである「果実味」「酸味」「(赤なら)渋味」に着目して、食べ物との相性を探ってきました。

ここでちょっとおさらいしてみましょう。

・砂糖はワインの味に影響する(果糖はOK)
・食べ物の酸味とワインの酸味を重ねるとよい
・渋味は油脂を癒やす

――でしたね。これらの「基本」を意識しながら、食べ物とワインの相性をみていきましょう。

ここでおなじみの「実験」です。今回は、身近な食材であるジャガイモを使った食べ物でトライしてみましょう。コンビニに並ぶ惣菜やお菓子にも、かなりの頻度でジャガイモが使われていますね。ワインとの相性はどんなものでしょうか。

コロッケにトンカツソースはNO!

まずはコンビニのレジ横ショーケースに並ぶコロッケを選んでみました。どのチェーンでも人気の揚げ物系フードです。ワインは第1回のときと同じ、チリ産白シャルドネでいきましょう。

コロッケは、焼きそばやお好み焼きに使う「ソース」(ウスター・中濃・濃厚の種類があるソースのことを指していますが、ここでは以下、総称して「とんかつソース」と書きます)をかけて食べる人が多いと思いますが、市販のとんかつソースには砂糖が入っているものが多いので、ワインの味わいに影響を与えます。むしろ何もかけずにコロッケをそのまま食べてワインを飲む方がしっくりきます。(なかにはコロッケのタネそのものに砂糖が入っていることもあります!)

そこで、とんかつソースの代わりにレモン汁をかけて食べてみましょう。生レモンだと使い切れないこともありますが、第2回でも紹介した小容量ボトルで売られているレモン果汁を使えばムダがなく便利ですね。飲むワインの量に対してどれくらいのレモン汁が適量なのでしょう? 口中での“一体感”がもっとも高まる点があるはずですので、自分でレモン汁の量を調整しながらいろいろ試してみると面白いですよ。とんかつソースのスパイシーな味に染まっていないコロッケの味わいも新鮮です。

ポテトフライにはケチャップ?それとも…

次はポテトフライ。こちらもコンビニのレジ横に並んでいますし、レンジで温める冷凍タイプもあります。飲食店では肉料理によく添えられてきますね。フライ自体には砂糖が使われていないので歓迎ですが、使う調味料に問題があります。

外飲みでポテトフライを頼むとほぼセットで付いてくるのが「ケチャップ」です。第2回でもケチャップには砂糖が多く使われているという話をしました。つまりケチャップを使うとワインとは合いにくくなってしまうわけです。

そこでケチャップに代わる提案が「マヨネーズ」です。マヨネーズのなかには砂糖を加えたものもありますが、総じてケチャップよりは少なく、おもに酸味が加わることで、ワインとの一体感が高まります。そしてコロッケ+レモン汁のときと同じく、マヨネーズの量を少しずつ調整しながらワインを飲んでみましょう。自分が「ここ!」と思うベストマッチングの到達点がきっとあるはずです。

ところで、マヨネーズには油も使われていますよね。第3回でお話した「渋味」と油脂の相性のよさを思い出してください。マヨをたっぷりつけた場合は、軽い渋味をもつ、色が薄めのロゼワインに相性がシフトしていきます。ぜひポテトフライ+マヨネーズに、ロゼワインも合わせて飲んでみてください。

そしてコンビニの人気ジャガイモ惣菜といえばもう一品、ポテトサラダがあります。が、こちらも残念ながら砂糖が入っているものがほとんどです。コロッケと比べてもその割合は高く、ワインと合うように後から味を調整するのは難しいというのが私の実感です。ポテトチップスなどのジャガイモ系スナック菓子も状況は同じなのですが、私がスーパーやコンビニで探したところ、他と比べて少し高額のポテチ商品の中に、砂糖を使用していないものを見つけることができました。ワインと合わせるときは袋の裏面の原材料名をみて、砂糖が記されていないものを買うことをおすすめします。

といっても、砂糖がまったくダメという訳でもないようです。コロッケにレモン汁をかけることによって酸味が足されただけでなく、その結果、砂糖分が薄まったように、味わいの中で砂糖が突出するバランスがよくないと、とたんにワインとの相性が悪くなってくるのです。私は、ワインにとって砂糖分の許容量というものがあるように思っています。

ワインをより楽しむための、賢い食べ方をこれからもお話していきますね!

芝浦工業大学工業化学科卒。人工サファイア製造メーカーに勤務時のフランス出張でワインに目覚め、29歳で転身。2000年に銀座に「わいん厨房たるたる」を開業。オーナーソムリエ兼シェフ。趣味はワインのブラインドテイスティング(利き酒)。 共著本に「男と女のワイン術」(日経プレミアシリーズ新書)
出版社に勤務中、定時に帰宅できる部署に異動になったのを機にワインスクールに通い始め、ワインにハマる。2019年3月、出版社を退社。現在はライター業の傍ら、ワインバーを開く夢に向かって飲食店で修業中。
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