ソムリエが教える 家飲み×コンビニ ワイン術 05

【連載】最後は砂糖との闘い。スペイン産赤×牛カルビ弁当

身近なコンビニやスーパーでも安くてそこそこ美味しいワインが手に入るようになりました。でもワインのお供のフードまでは、なかなかピンとくる出会いがないのではないでしょうか。『男と女のワイン術』の共著もある銀座のワインビストロのオーナーソムリエ兼シェフが、身近に手に入る食材とリーズナブルなワインとで、ミレニアル世代も納得の“マリアージュ”を、ちょっぴり科学的に提案します。

オーナーソムリエ直伝の家のみワイン術、連載5回目は、コンビニで買える肉料理を取り上げてみたいと思います。

前回はコロッケやポテトフライなどのジャガイモを使った揚げ物フードとワインを合わせるコツをお伝えしました。ここでのポイントは、食べるときの味付けとして、とんかつソースの代わりにレモン、またケチャップの代わりにマヨネーズを使うこと。つまり、砂糖の添加をなくす、あるいは酸味や油分をプラスして砂糖の割合を極力減らす、でしたね。

肉料理は、その調理法や味付けによって相性のいいワインの色や種類が異なります。火を通して白っぽくなった鶏肉や豚肉には白ワインが、火を通して赤色が茶色に近くなった牛肉や羊肉などには赤ワインが合わせやすいです(調理後の肉の色に近い色のワインを合わせるのがポイント!)。前回は白ワインでしたので、今回は、コンビニでは比較的少ないながらも赤ワインに合わせやすい牛肉を使った商品をみていくことにしましょう。

焼き肉、それともハンバーグ?

コンビニに並んでいる牛肉を使った食べ物というと:

牛カルビ焼き
牛丼の具
ハンバーグ
パストラミビーフ
ビーフジャーキー
コンビーフ
……
といったところでしょうか。ワインとの相性でいうと、牛肉そのものというより、タレやソース(例えばデミグラス)などの味付けによるところが大きいようです。

牛カルビと牛丼の具は醤油・砂糖の甘辛味ですから、そのまま食べてワインを飲むと砂糖からの“干渉”があります。つまり、甘さが邪魔をしてワインを味わいにくくなります。

ハンバーグも中身と味付けが商品によりまちまちではありますが、やはり多くのものに砂糖の存在があります。これがなかなか無視できない存在感なのですが、ハンバーグは商品単価300円を超えたあたりから砂糖分が減っていくようで、ワインとの相性がぐんとよくなることが分かりました。それと同時に、300円を境に、いわゆる豚と混合の合挽きから牛肉の割合が上がっていき、赤ワインとの相性がさらによくなりました。

パストラミ(塩漬)とジャーキーも砂糖と思われる味付けがみられます。台形の缶の素朴なコンビーフも原材料名に砂糖が記されていますが、その割合が少ないのか、これが一番ワインと合わせやすいな、と感じました。

「砂糖との闘い」は第2章へ

前回の最後に、ワインをより楽しく飲むための「賢い食べ方」をご紹介しましたが、ここでも実践してみましょう。

まずは牛(カルビ)焼肉弁当を用意してください。ワインは相性を意識して、スペイン産の赤でいきましょう。コンビニで並んでいるのは1000円前後でしょう。800円台のものもあります。まずは上にのっている肉だけを食べてから、スペイン産赤を飲んでみてください。肉にはタレがしっかりと絡んでいるので、砂糖からの影響を感じられるかと思います。

そこで次は、下の御飯を肉と一緒に口の中に運んで噛み合わせてから、ワインを含んでみましょう。いかがでしょうか? 白米によってタレの砂糖分が薄まるのか、肉だけのときよりしっくりきて一体感が現れるようです。

自宅や焼肉屋さんで肉を焼いてワインを飲むときは、塩こしょうで食べる、またはタレの使い方に気をつければ大丈夫ですが、もう既に付いてしまっているものについては、「砂糖を削ぐ」という考え方でいきましょう。

糖質制限をしているから御飯はあまり食べたくないという人は、冷凍ショーケースに並んでいる「牛カルビ焼き」がおすすめです。最初から御飯はありません。

それと野菜だけのサラダパックを購入してください。ドレッシングは不要です。そしてカルビとドレッシングなしの野菜を一緒に食べてワインを飲んでみてください。御飯と同じような効果が実感できるはずです。もちろんワインもすすみますし、サラダとの組み合わせはヘルシーですね。

牛肉と赤ワインの相性論のはずが、気がつけば「続・砂糖との闘い」になってしまいました(笑)。豚肉・鶏肉と白ワインでも、身近にあるコンビニ商品は似たような状況です。

スーパーで生の未調理の牛肉を買ってきて、さあこれから飲むワインに合わせるぞというとき、どのスパイスを使い、どんな野菜と組み合わせてどう調理しようかと、私は“足し算”の方向で頭を巡らせます。でも調理済みの食べ物でワインを飲むときは「砂糖を削ぐ」、つまり“引き算”のマインドが大事。そのことを頭の片隅に留めておくと、いまある食材で、ワインがより楽しめますよ。

続きの記事<油と酸味で一挙解決 フランス産ボルドー×サバ缶>はこちら

芝浦工業大学工業化学科卒。人工サファイア製造メーカーに勤務時のフランス出張でワインに目覚め、29歳で転身。2000年に銀座に「わいん厨房たるたる」を開業。オーナーソムリエ兼シェフ。趣味はワインのブラインドテイスティング(利き酒)。 共著本に「男と女のワイン術」(日経プレミアシリーズ新書)
出版社に勤務中、定時に帰宅できる部署に異動になったのを機にワインスクールに通い始め、ワインにハマる。2019年3月、出版社を退社。現在はライター業の傍ら、ワインバーを開く夢に向かって飲食店で修業中。
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