ソムリエが教える 家飲み×コンビニ ワイン術 07

【連載】コンビニで買えるフードでソーヴィニヨン・ブランを楽しむなら?

身近なコンビニやスーパーでも安くてそこそこ美味しいワインが手に入るようになりました。でもワインのお供のフードまでは、なかなかピンとくる出会いがないのではないでしょうか。『男と女のワイン術』の共著もある銀座のワインビストロのオーナーソムリエ兼シェフが、身近に手に入る食材とリーズナブルなワインとで、ミレニアル世代も納得の“マリアージュ”を、ちょっぴり科学的に提案します。

連載も7回目を迎えました。今回は白ワイン。爽やかなソーヴィニヨン・ブラン種のワインをご紹介します。

連載第1回では、冷凍マンゴーに合わせて「シャルドネ」というブドウ品種を使ったチリ産の白ワインを取り上げました。第4回でも同じくチリのシャルドネが登場しましたね。シャルドネの白ワインは、蜜のような風合いが特徴です。なかにはトロピカルフルーツのような華やかな香りを放つものや、ブドウを熟成させる樽を由来とする、バニラや焼き芋、甘栗といった甘いものが焦げたような香りを持つものもあります。

爽やかな「ソーヴィニヨン・ブラン」に合うのは?

そんな丸みのあるシャルドネに対し、酸味が主張してより引き締まったタイプの白ワインがSauvignon Blanc(ソーヴィニヨン・ブラン)というブドウ品種を主体に造られた白ワインです。ハーブを連想させる香りが持ち味で、柑橘を一瞬口に含んだような清涼感が印象的です。蒸し暑い日などに冷やして飲むのがおすすめの、清々しい白ワインです。

このソーヴィニヨン・ブラン種のワインをより楽しむには、どんな食べ物がよいでしょうか? さっそくコンビニをのぞいてみましょう。

コンビニには、おもにチリ産、ニュージーランド産、フランス産が並んでいます。まずは500円前後で買えるチリ産から飲んでみます。この価格帯のチリ産ソーヴィニヨン・ブランをひとことで言うなら「さっぱり白」。これと一緒に惣菜コーナーにあるミニトマトを購入してください。

ミニトマトを調味料なしでそのまま食べると、酸味と共にトマト独特の青っぽさ、甘みが感じられますね。ここでソーヴィニヨン・ブランを含んでみてください。

いかがでしょう?ワインにも酸味があり、ライムのような青みやグレープフルーツのような果実味もある。ワインがトマトの味と似た要素を持つため、互いに融け合うような感覚があるかと思います。

ダイエット中の方には、野菜スティックもソーヴィニヨン・ブランのよいお供になります。添付の「味噌マヨ」などはつけずに、野菜そのものの味を感じながらワインを飲むと面白いですよ。キュウリや大根などの水分の多い野菜より、ニンジンやキャベツといった風味の強い野菜のほうがソーヴィニヨン・ブランとはより相性がいいようです。

「風味」つながりでもう一つ、好相性の食べ物があります。「さけるチーズ」という商品名のチーズ。選ぶなら、その中の「スモーク味」がおすすめです。チーズを口に入れ、噛んで風味が出たところでワインを含みます。抜群のマリアージュですね!チーズそのものよりもスモークの風味が相性に寄与しているようです。

ワンコイン前後のワインに何を合わせる?

価格とワインを対照すると…

ここで、ワインを選ぶ際に無視できない「価格」の話をしましょう。ソーヴィニヨン・ブランにしろ、シャルドネにしろ、価格には幅があります。価格の違いによって、相性のいい食べ物が違ってくるのがワインの面白いところです。
ソーヴィニヨン・ブラン種のワインには、以下のように三つの価格帯があります。
・ワンコイン(500円)前後組
・1000円でおつりがくる組
・1000円を超える組

こちらはセブン-イレブンの「ワンコイン前後組」と「1000円でおつりがくる組」

1000円でおつりがくる価格帯のものになると、500円前後のものと比べ、香りはより強く、味も濃くなり、余韻は長く続き、飲みごたえも出てきます。したがって合わせる食べ物も、より味の強いもののほうが好相性になっていきます。おすすめは「サラダサーモン」。サーモンを食べて「1000円でおつり組」のニュージーランド産ソーヴィニヨン・ブランを飲むと、一体感とともに、サーモンの味とワインの味を足し合わせた以上のふくらみが生まれます。サーモン自体の独特の風味、そしてスモークの風味とワインの風味が口中で絡まり合って好相性を醸し出すのです。

ここで、比較するために、先のミニトマトを食べて「おつり組」のニュージーランド産を飲むと、ワインの味わいの方が勝っているからか、先に起きたような“良好な変化”が起きないようです。そんなときは調味料の力を借りましょう。ミニトマトに塩をつけ、さらにエキストラヴァージンオリーブオイルをかける。そこで「おつり組」のニュージーランド産を飲む。よし、これで“一体感”が生まれます。トマトとワインとの間にあった味わいの強弱の差を埋めることが出来ました。

1000円でおつり組ワインに何を合わせる?

高級ワインには重厚なおつまみを

次に「1000円を超える組」です。おもにチリ産、ニュージーランド産、フランス産があり、どれも価格に応じた飲みごたえがあります。先ほどの「おつり組」のニュージーランド産と抜群の相性をみたサラダサーモンも、「超える組」と合わせると、なんとなく物足りなさを感じるはずです。ワインの味の強さのほうが勝ってしまうからです。

「超える組」にサラダサーモンを合わせる場合、上に記したように、サーモンにエキストラヴァージンオリーブオイルをかけるとよいでしょう。そして、より辛口で酸味の強い傾向があるフランス産には、飲むワインの酸味に応じて、さらに「レモン汁」をプラスします。そうすることで一体感を高めることができます。

1000円超えのワインに何を合わせる?

いかがですか?ワインと食べ物を合わせるコツが少しずつつかめてきたのではないでしょうか。あとは実践あるのみ!コンビニにはさまざまな国や品種のワインが並んでいますから、どんどん冒険してみてください。

芝浦工業大学工業化学科卒。人工サファイア製造メーカーに勤務時のフランス出張でワインに目覚め、29歳で転身。2000年に銀座に「わいん厨房たるたる」を開業。オーナーソムリエ兼シェフ。趣味はワインのブラインドテイスティング(利き酒)。 共著本に「男と女のワイン術」(日経プレミアシリーズ新書)
出版社に勤務中、定時に帰宅できる部署に異動になったのを機にワインスクールに通い始め、ワインにハマる。2019年3月、出版社を退社。現在はライター業の傍ら、ワインバーを開く夢に向かって飲食店で修業中。
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