ソムリエが教える 家飲み×コンビニ ワイン術 08

【連載】赤の個性派シラーと合わせる コンビニで買えるおつまみ3選

身近なコンビニやスーパーでも安くてそこそこ美味しいワインが手に入るようになりました。でもワインのお供のフードまでは、なかなかピンとくる出会いがないのではないでしょうか。『男と女のワイン術』の共著もある銀座のワインビストロのオーナーソムリエ兼シェフが、身近に手に入る食材とリーズナブルなワインとで、ミレニアル世代も納得の“マリアージュ”を、ちょっぴり科学的に提案します。

いよいよこの連載も最終回です。今回はシラー(シラーズ)種の赤ワインについて、相性を絡めながらお話ししていくことにしましょう。

コンビニで探すとSyrah(シラー)、またはShiraz(シラーズ)とラベルに記載されたワインが見つかります。産地によってスペルと発音は異なりますが、どちらも同じブドウ品種です。オーストラリア、チリ、フランス産などがあり、コンビニに並ぶこのワインの価格帯は600円前後と1000円前後になります。

連載第3回で取り上げたカベルネ・ソーヴィニヨンとの違いは“香り・風味”といえるでしょう。シラー(シラーズ)には、果物のライチや香料のムスクを連想させる甘い香りと、胡椒のようなスパイシーな香りがより多く感じられます。食べ物との相性でさらに違いを見ていくことにします。

くるみはシラー、ピスタチオにはカベルネ、カシューナッツには?

コンビニの一角に「ナッツ」が並んでいますね。ピーナツ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、くるみ、といったところです。この中の「くるみ」を食べ、ワインは600円前後のチリ産シラーを飲んでください。くるみには独特の苦みや渋味がありますが、シラーのワインは、口の中に長く残るそれらをまろやかなものにしてくれます。

また、くるみの油分はワインのほどよい渋味でゆすがれて食べやすくなり、さらに美味しく感じられます。ナッツ類は健康によいとされるオメガ3系脂肪酸を多く含み、中でもくるみは一番です。ただし風味が強いので、食べにくいと感じる人もいるでしょう。ワインをお供にすると美味しく食べられるのはうれしいですね。

ここで試しに同じ価格帯のチリ産カベルネ・ソーヴィニヨンを飲んでみると、くるみの強い風味に少し押されてしまうようです。今回のシラーと同じ価格帯のカベルネ・ソーヴィニヨンには、ピスタチオをおすすめします。ピスタチオは、噛むと「青っぽい」風味が感じられますが、カベルネ・ソーヴィニヨンにも杉やメンソールといったそれに似た風味があるため、互いに寄り添うからです。ちなみに、コクのあるカシューナッツにはシャルドネの白ワインがよいでしょう。煎ったピーナツは味が軽すぎるのか、ワインとの相性はいまひとつですが、薄皮付きの茹でピーナツならば、これまでに紹介したボルドー赤やスペイン産赤とはなかなかの相性でした。

1000円前後のシラーにはワインと最も好相性のあれ

シラー(シラーズ)も1000円前後になると、前回のソーヴィニヨン・ブランと同じく、より飲み応えが出てきます。オーストラリア産、フランス産、チリ産などが買えますが、あえて600円台と同じくチリ産を飲んでみましょう。合わせる食べ物は、連載第5回においてコンビニの牛肉加工品のなかで最もワインと相性がよいとお話しした「コンビーフ」です。

シラーのスパイシーさを鑑みて、同じコンビニに並ぶ「粗挽き黒胡椒味」のコンビーフを選びました。双方が持つ、甘い香りをともなうスパイス風味が絡み合い、さらにワインの渋味がコンビーフの脂を拭います。コンビーフに胡椒が効いているのもポイントのようです。スタンダードなコンビーフなら、黒胡椒を適宜使うとよいですね。1000円前後のチリ産シラーは果実味が強く、甘いような感じがあり、それによって食べ物の辛味が洗われます。相反するものの組み合わせ、これもマリアージュのひとつです。

ナッツと同様に、このコンビーフに合わせて1000円前後のチリ産カベルネ・ソーヴィニヨンを飲んでみます。シラーと同じような作用はあるものの、コンビーフの風味の方がやや勝っているためか、シラーのときほどの一体感はありません。コンビニ内の牛肉加工食品なら、レトルト商品「ハンバーグ」の方がカベルネ・ソーヴィニヨンにはしっくりきます。ハンバーグは商品単価300円を超えるあたりから牛肉の割合が増え、味付けもより赤ワインに寄り添ってきます。単価200円しないものは豚や鶏も使われている上、味付けにも砂糖を感じるものがあり、ワインとの相性においては距離ができてしまうようです。

ワインの“永遠の伴侶”チーズのお話

これまで8回の連載を通じて、コンビニで買えるワインと相性のいい食べ物をいくつも紹介してきました。最後に、「チーズ」の話をしておきたいと思います。ここで言うチーズとは「ナチュラルチーズ」です。ナチュラルチーズを溶かして再度固めた「プロセスチーズ」は外すという条件だと、コンビニで買えるチーズは「カマンベール」になります。

どのチーズにどのワインを合わせるとよいか? このテーマは非常に面白いのですが、専門性の高い話になり、これだけで10回の連載ができてしまうくらいです。というわけで、いきなり結論です。ナチュラルチーズとワインは、これまで紹介してきたいくつもの組み合わせが吹き飛ぶくらいな相性のよさです。チーズを食べてワインを飲むと、どちらもより美味しく感じられます。要するに、ワインなら何でもOKなのです。

私はいつも、お客様に「家でワインを開けて、不本意なもの、好みでないものに当たってしまったら、チーズを食べて飲めばなんだっていけますよ」と話しています。チーズはいざという時、本当に便利なお助け食材です。レストランでの食事の際、デザートの前にワインがまだ残っていたら、それをゆっくり楽しむためのおつまみと考え、チーズをオーダーするとよいでしょう。ただし、さらに杯を重ねたくなってしまいますから要注意ですね。

この連載をきっかけに、みなさんがワインをより好きになり、これまで以上にワインライフを楽しんでくだされば幸いです。「これからはワインも飲んでみようかな」という人が一人でも増えてくれることを願っています。

芝浦工業大学工業化学科卒。人工サファイア製造メーカーに勤務時のフランス出張でワインに目覚め、29歳で転身。2000年に銀座に「わいん厨房たるたる」を開業。オーナーソムリエ兼シェフ。趣味はワインのブラインドテイスティング(利き酒)。 共著本に「男と女のワイン術」(日経プレミアシリーズ新書)
出版社に勤務中、定時に帰宅できる部署に異動になったのを機にワインスクールに通い始め、ワインにハマる。2019年3月、出版社を退社。現在はライター業の傍ら、ワインバーを開く夢に向かって飲食店で修業中。
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