【連載】渋みが大事です。チリ産カベルネ×バター付きぶどうパン
バターのあとには渋~いカベルネ・ソーヴィニヨン
渋味は、それだけでは心地好いものではないですね。日本人は日常で煎茶を飲みますが、湯温に気づかい、渋味をやわらげるようにするくらいですから、日本人にとって渋味は慣れていない味わいと言えるでしょう。
食パンにレーズンが入った「ぶどうパン」を買ってきてください。それからバター(有塩)、ワインはチリ産の赤、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)とラベルに刷られたもので、今回はちょっと高めの1400円くらいのものを用意して下さい。カベルネ・ソーヴィニヨンとは第1回のシャルドネと同様、ぶどう品種の名前でもあります。
チリ産カベルネ・ソーヴィニヨンはこの半値で買うことも出来ますが、実は渋味のしっかりした赤ワインというのは1000円以内ではなかなか得られないのです。カベルネ・ソーヴィニヨンはもともと渋味の強い品種ですが、高いワインになるほどその本領を発揮します。今回は渋味をより感じてもらうためにこの価格帯のものを選びましたが、渋味と価格の関係も覚えておくとよいでしょう。
まずはぶどうパンを食べましょう。よく噛んでパンとレーズンが混ざり合って一様な味わいとなったところで、カベルネを含みます。同じぶどう同士なので実に合う。一体感があります。レーズンの甘味は果糖ですから、第1回の冷凍マンゴーと同じですね。レーズンには甘さだけでなく酸味もあり、ワインとの相性をさらによくしています。パンを噛んで口中は乾いていますから、水分がやって来た嬉しさもある。しかし一方で、ワインの渋味はしっかり主張し続けています。飲みこんだあとにも、舌がぴりぴりするような渋味が残りますね。
では次に、ぶどうパンにバターをたっぷりつけて食べて下さい。そしてカベルネを含みましょう。その瞬間、渋味がやわらいで軽くなったように感じられませんか? バターの脂っこさも拭われて口の中がすっきりとしているはずです。
渋味には脂を中和するような作用があります。鶏のササミなどは別として、肉には脂がつきものですから、渋味のある赤は肉料理のお供によいわけです。ワインを含むと口中がリフレッシュされると同時に味覚もリセットされるので、また肉に向かいたくなります。先ほど日本の食生活での渋味として煎茶を挙げましたが、例えばマグロのトロのお寿司など、脂ののったネタを食べた後にお茶をすすると口が洗われますし、中華料理ではウーロン茶などを飲むのも同じでしょう。アルコールを飲むという感覚でなく、箸休めや口直しとして、日本の食卓にもっと赤ワインが登場してもよいのではないかと思っています。
バター付きパンを一緒に食べると赤ワインの渋味が緩和されましたが、逆に、渋味のある赤をより楽しむために、料理に油を取り入れるという発想もあります。イタリア人が、食べ物なら何にでもオリーブ油をかけるのは、赤ワインを飲むためかもしれません。イタリア産やスペイン産赤ワインとオリーブ油はとても合うので、ぜひ試してみて下さい。チリ産赤でもイケます。
今回は動物性油脂のバターと赤ワインを合わせて、油分の強い食材や料理にはワインの渋味が口直しになることを知ってもらいました。油を使った様々な料理がスーパーやコンビニに並んでいますし、油のなかには健康によいとされる種類の油もあります。賢くおいしく油を摂るために、それらにどんなワインが合うのかを、今後提案していきたいと思います。
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