髪を武器に、なりたい自分で生きるには? 『女は、髪と、生きていく』著者とミレニアル女子たちが考えた
ワークショップを主催したのは、telling,の姉妹サイトで20代の女性たちのコンプレックスと自己表現がテーマの「かがみよかがみ」。二つのサイトの読者を中心に、20代~30代の女性たち約30人が集まりました。
美容院と病院は似ている!?
「日本初のヘアライター・エディター」の肩書を持つさとゆみさんは、女性誌の髪型特集やヘアカタログの取材などで、これまでに約4万人・200万カットのヘアスタイル撮影に立ち会ってきたそうです。
そんな経験から、さとゆみさんが最初に挙げたポイントは「似合う髪型には2つある」ということ。
「髪や髪質に合う髪型と、自分の気持ちや気分に合う髪型と。前者は美容師という“プロ”に任せればいい。でも後者は、自分でちゃんと伝えないといけません」
たとえば「肩ぐらいの長さのボブ」と一口に言っても、カットラインが「前上がり」なら可愛らしく自然体に、「前下がり」だとクール、「水平」だとモードなオシャレ感というように、与える印象も変わります。だからこそ、その髪型で「どんな自分になりたいか」をきちんと伝えないとならないのです。
さとゆみさんによれば、プロの美容師ならお客さんが目の前に座った瞬間、似合う髪形を10個くらいすぐ思いつくそうです。「でも今のあなたがどうなりたいかは、言葉で伝えないとわからない。病院に行くとお医者さんに症状を説明しますよね。それでお医者さんは診断ができ、処方箋が出せる。美容室は病院みたいなもの。美容師さんに『お任せで』というのは、病院でお医者さんに『何してくださってもいいですよ』というのと同じです」
髪型にはキャラがある
次にさとゆみさんが指摘したのは、ロング、ボブ、ショートから前髪の様々なスタイルまで、髪型には「キャラ」がある、ということです。
たとえば、歴代日本の女性閣僚の髪型は圧倒的にショートやボブが多いそうです。さとゆみさんが調べたところ、40人中38人が肩上の長さのショートかボブという結果になり、例外は稲田朋美氏、片山さつき氏の2人くらい。ただ、これが区議や市議などより身近な地方議会になると、今度はグッと丸みのあるボブやストレートが増えてくるそう。
「有権者が議員に何を求めるかが反映されています。区議や市議なら、保育園や介護の問題など身近なテーマを相談しやすい優しい感じの人に託したい。一方で国会議員には外国のトップと渡り合う強さが欲しい。そこで強さやリーダーシップを象徴するショートが選ばれるのです」
ほかにも誰もが知るマンガやアニメの登場人物を紹介しつつ、さとゆみさんが強調したのは、私たちが思う以上に、髪型がその人物の「キャラ」と密接に結びついているということでした。
続いて、さとゆみさんはこの日のワークショップの“キモ”とも言うべき、大事な問題を提起しました。私たちの髪形が「うまくいかない」のは、「自分がどうなりたいかをあまり考えたことがないから」だというのです。
「いまどんな気持ちなのか、どういう気分なのかをあまり振り返らない人が多いんじゃないか。特に女の子は、彼氏が優先になったり、仕事のことが気になったりして自分に矢印が向かない人が多いような気がします」
髪型で「なりたい自分」に近付いていく
そこで、「もし何の制限もなかったらどんな髪型にしたいか」を考えた後、「どんな言葉で形容される(ほめられる)自分になりたいか」というお題で20個のキーワードを考えるワークをしました。そして、「誰といる時がいちばん気持ちいいか」を踏まえて、特になりたい3つのキーワードに絞り込みます。
ワークの後、この作業が苦しかった人は?と聞かれて手を挙げた女性が「いろんな自分になりたくて、どうすればいいんだろうと思ってしまった」と言うと、さとゆみさんはこう答えました。
「たくさんの自分があっていいと思います。作家の平野啓一郎さんが提唱した『分人主義』という考え方があります。人には自分が会う人の数だけ“分人”がある。仕事をする時、夫といる時、子どもと向き合う時、友だちといる時……。どの分人でいる時が一番心地よいか、楽しいかを考えるのが、髪型を選ぶ時にはいいですね」
「今の自分にとって何が最大の優先事項か。髪型を選ぶタイミングで、何度も振り返ってみてください」
さとゆみさんいわく、髪型はキャラクターと直結しているといいます。
「なりたい自分(内面)と髪型が一致していると、とても生きやすくなります。本当は個性的なのにそう見られないなら、髪型を個性的にしてみる。すると周囲は『個性的な人なんだな』と思うようになります」。
そして二つの方向性をアドバイスしてくれました。
1.本当のキャラ(内面)と髪キャラ(外面)を近付けていくこと
2.髪キャラ(外面)を先につくり、本当のキャラを近づけていくこと
さとゆみさんのお話に、ワークを通じた参加者同士の会話も弾み、2時間のワークショップはあっという間でした。29歳の会社員の女性は「最近、髪型がしっくりこないな」と感じて参加し、「ありたい自分」が変わりつつあることに気付いたそうです。
「ここ数年は明るくはっきりした印象のショートでしたが、最近は柔らかい印象のウェーブにしたいと思うようになったんです。かっこよく見られたいけど、可愛いとも思われたい。自分の中の矛盾する思いを受け止め、今はどの自分を大事にしたいかを考えていきたいです。気持ちにも見た目にもフィットする髪型は、日々の自分に自信を与えてくれそうです」
●【あわせて読みたい】さとゆみさんの連載コラム「本という贅沢。」のオススメ記事はこちら!
・『女は、髪と、生きていく』(佐藤友美/幻冬舎)人と比べないから楽になれる。自己肯定感クライシスに「髪型」でひとつの解を
・『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』(中島輝/SBクリエイティブ)/「どうせ私なんか」と決別する。SNS時代の自己肯定感の高め方
・『この世でいちばん美しいのはだれ?』(神崎恵/ダイヤモンド社)/女に生まれてよかったと大声で言っちゃいけない感じそろそろやめたい
著者:佐藤友美
telling, の本の連載でもおなじみ、ヘアライターとして20年近く活躍されてきた佐藤友美さんの新刊が発売になりました。 ファッションより、メイクより、人生を変えるのは「髪」だった! 本当に似合う髪型を探すためのヒント満載の1冊です。