知念美加子の「MY LIFE, MY CLOSET」08

コンプレックスを「克服」するの、やめませんか?

女性誌「ViVi」などで活躍中のスタイリスト知念美加子さんにとって、ファッションは「自分自身を高めてくれる日常」。その日、見た・感じた・聞いたことから感じたインスピレーションをファッションに反映するそうです。知念さんのファッションのルーツを知るべく、頭の中をのぞいてみました。

●MY LIFE, MY CLOSET 08ファッション×コンプレックス

日本人は「似合っているか」を気にするんじゃなくて「似合ってないか」を気にする文化

「体系別お悩み企画」、ファッション誌の大定番ですよね。でもこれって、海外の雑誌ではまず見かけることのない、日本ならではの企画なんですよ。しかもその悩みが、かなり細かい。身長や体つき、バストの大きさまで。

私もよく読者の方から「身長が低くても似合う洋服はありますか?」なんて相談を受けることがあります。ただ、同じ「150cm」の女の子が10人いたとしても、全員に同じアドバイスはできないんです。顔の形、系統、髪の色、みんなそれぞれ違うので。
「Sサイズ“克服”コーディネート!」というように、ネガティブなものを乗り越えるような方向性の企画も、もう少しなんとかできないかと思っていました。本当にそれって、「ダメ」で「乗り越えなきゃいけない」ものなのかなって。悩んでいる方の切実な気持ちに応えたいとは思うのですが、実は密かにプレッシャーを感じながらそういった企画と向き合ってきました。

ちまたで流行ってるメイクの「イエベ」「ブルベ」みたいなカテゴライズにも同じことを思っていて、「あなたの肌の色にはこれ!」っていうのは逆に「あなたにはこれしか似合わない!」って言われているような気分になったり。私個人的には最近はもう、ほとんど無視しちゃってます(笑)。でも、みんなそうやって自分の悩みに対して正解が欲しいんだなぁと思うと、日本の女の子のコンプレックスの根深さを感じて悔しい気持ちになります。

ブルベ・イエベ無視してメイクしてます

ロンドンの街ではとにかくみんながお互いを褒めていた

2016年に留学していたロンドンには「ファッション指南」とか「恋愛相談」とか、そういうタイプの記事が載っている女性誌はありませんでした。ファッション雑誌といえばモード誌。「みんな悩み、ないの?」っていうくらい(笑)。

海外にいると、道を歩いているだけで「そのシューズ似合ってる!」「それどこで買ったの?」なんて声をかけてくれる人がたくさんいます。浴衣でフェスに出向けば「cool!」と褒められたし、かつて留学していたオーストラリアの海岸で小学生の女の子に「あなたの水着、ちょーカワイイ!」と話しかけられたこともあります。
そこに、「丈が身長に合ってない」とか「もっと痩せてたら着こなせてるのに」なんていうネガティブな感想はありません。コンプレックスが生まれる場が圧倒的に少なく、むしろ自信を生む場が多いように思います。

ロンドンのフェスティバルにて。たくさん声をかけられました

「克服コーデ」じゃなく…

ロンドンから帰国後、「コンプレックスとファッション」の発信に対して自分が抱いていた違和感はクリアになりました。今はできるだけ「◯◯を克服するための」といった切り口での提案や「◯◯ならそのコンプレックスを隠せるよ」と断定するのはやめ、ポジティブな表現を心がけています。

ロンドンの街でされたように「そのシャツ、貴方にピッタリよ!」と東京の表参道で声を掛ける……なんてところまではいかないけれど、相手の素敵な部分を言葉にして伝えるようにもしています。
まだまだ「コンプレックスはネガティブなもの」「恥ずかしい短所」みたいな風潮が強い日本で、「そここそがチャームポイントじゃない!?」と言い合って自分たちのコンプレックスを愛しあえる日がくるのは先のことかもしれないけど。
誰かの「似合ってない」をお直しするような世界から、「似合ってる」を大切に育む世界へと変えていけるような仕事をしていきたいと思っています。

続きの記事<1回しか着ない洋服を買ってしまった。これって失敗だったの?>はこちら

1987年、那覇市生まれ。スタイリストのアシスタントを2年経験し、2011年に独立。雑誌「ViVi」を中心に活動する人気スタイリスト。
現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
コンプレックスは愛