知念美加子の「MY LIFE, MY CLOSET」06

女性の世界へ「性別を越えて」きてくれた男性たちの目線に助けられながら

女性誌「ViVi」などで活躍中のスタイリスト知念美加子さんにとって、ファッションは「自分自身を高めてくれる日常」。その日、見た・感じた・聞いたことから感じたインスピレーションをファッションに反映するそうです。知念さんのファッションのルーツを知るべく、頭の中をのぞいてみました。

●MY LIFE, MY CLOSET 06ファッション×性別を越える

女性誌に必要な男性編集者の目線

女性誌や女性向けアパレルブランドとのお仕事が中心の私は、比較的、女性という性別によって壁を感じたり、やりづらさを覚える機会は少ない方なのかもしれません。

ただ、現在お仕事している女性誌の男性編集長や、携わっているアパレルブランドのディレクターの男性には、大いに助けてもらっています。

女性向けコンテンツにとって、男性はどんな存在か。

以前、こんなことがありました。
私服の1カ月着回しコーディネート企画で、私はその冬着たかった2着のアウターを提案しました。カーキのMA-1とネイビーのスタジャン。

それが編集長チェックの時に「これとこれ、一緒じゃない?」とバッサリ。

確かにビックサイズのシルエットで似てないこともないけど、色も違うし、ファッション好きの女の子からしたらこの2着って全然別ものでしょう?

でも、どちらかを違うアウターにしてほしいと言われ、納得がいかないながらも、片方をシンプルなロングコートに変更しました。

ところが、1カ月分のコーディネートを組み終わった時に「あぁ、このセレクトでよかった」と思ったんです。

読者に喜ばれるのは、わかりやすく「真似ができる」それぞれに特徴のあるコート。
高校生が初めてのアルバイト代でコートを買おう!と思って雑誌を開いてくれた時に、似たような形の2着が見本として並ぶより、全然違う形の2パターンの中から選べる方が参考になりますよね。

良い意味で「女子のこだわり」が無い、男性編集長ならではの意見だったと感じ、感謝しています。

「男って、わかってない。」を逆手に取る

「男性って、わかってないよね」という視点は実は重要なのかもしれません。
女性だけの会議や企画では話が通じるのに、男性に説明すると理解してもらえない。そんなことってありますよね。

特にファッションやメイクの世界はそれがトコトン好き!という人たちが集まるだけに、「このデザイン、カワイイ!」「この色、写真映えするね!!」と、どんどんクリエイティブに、言い方を変えれば「尖って」いくこともしばしば。男性からすると「それって、可愛いの?」なんて言われてしまうことも。

それを「男性って、わかってないよね」であきらめないで、逆手に取るんです。

「俺には違いがわからないんだけど、読者に伝わるの?」そんな問いかけに対して、
「今の若い女の子たちはこんな風に考えていて」とか、「こんなリサーチをしてきました!」と納得してもらうための材料を用意してプレゼンする。
男性を説得できたらホンモノ。これは女性だけの自己満足の企画じゃないぞっていう自信がもてます。

女性目線、女性中心、の仕事だからこそ、反対意見やその場では少数派である男性の考え方をもらったり、ディスカッションすることはとても大事なことだと感じています。

「性別を越えて」くれた男性たちへ。

ファッションの世界もユニセックスの文化がどんどん定番化してきています。メンズラインの服を女性が着るのはもはや定番だし、いつかは男性がスカートを当たり前に着こなす時代もくるかも。そんな中で、私は女性向け産業にいる男性の存在を心強く思っています。

たとえばスポーティなアイテムを説明するときに「◯◯さんが持っているようなバッグのイメージで」と、女性のためのものづくりの主役が時に男性だったりする。それが良いものを生む刺激になる。
そんな場面が、その時々で、男女の立場を変えて世の中でももっと増えていったらいいなぁと思っています。

自分はたまたま女性が中心の業界で働いていますが、そんな世界に「性別を越えて」きてくれた男性たちの意見も上手く受け入れてみる。大事なのはどちらの性別の人が作ったか、ではなく、どれだけ良いものを世の中に送り出せるか、だから。

続きの記事<沖縄で「スタイリスト」として生きていく方法とは?>はこちら

1987年、那覇市生まれ。スタイリストのアシスタントを2年経験し、2011年に独立。雑誌「ViVi」を中心に活動する人気スタイリスト。
大学卒業後、芸能事務所のマネージャーとして俳優・アイドル・漫画家や作家などのマネージメントを行う。その後、未経験からフリーライターの道へ。
行こうぜ!性別の向こうへ