【ふかわりょう】ヘイセイサイゴノン現る
●ふかわりょうの連載エッセイ「プリズム」20
ヘイセイサイゴノン現る
寒さがひとしお身にしみる頃となりました。みなさま、お変わりないでしょうか。さて、この度、みなさまにご連絡しておかなければならないことがあります。と言うのも、最近、得体の知れない謎のモンスターが出没しているからです。
今年にはいってから目撃情報が寄せられるようになり、当初はいたずらの可能性が強いと思われていたのですが、年末に差し掛かるあたりから急激に増加しているため、問題視されるようになりました。
寄せられた情報をまとめますと、サイズは極めて小さなものから巨大なものまであり、主にスーパーや百貨店、イベント会場やテレビ・ラジオ局などのマスコミ関連。飲み会でのちょっとした挨拶時などで多く目撃されているようです。
専門家によりますと、昨年の末ごろに産卵されたものが春にふ化し、夏に急成長、そして今、一気に行動範囲を広げているのではないかとの見方が強まっています。人間に直接危害を加えることはないとのことですが、「なんてことのない事柄を、さも重大な局面に差し掛かっているように思わせる」習性があり、
「ヘイセイサイゴノォォオオ!」と叫ぶようです。
急激に増殖するモンスターたちに、地域住民らも「このままだと侵略されてしまうのではないか」と不安を募らせる一方で、おそらく来年の5月ごろには一気に収束するのではというのが専門家の見方。しかし、直前の3、4月は想像を超える量のモンスターたちがさらなる猛威を振るう危険性もあると警鐘を鳴らしています。
学術的には、「ビンジョーショーホー科」「ノッカレルモノニノッカレ目」に属していますが、その叫び声から、「ヘイセイサイゴノン」と呼ばれるようになりました。
万が一、襲われた時の対処として、まだ研究段階ではありますが、「◯◯のマクアケ」と叫ぶと尻尾を巻いて逃げてしまうそうです。肝心の◯◯の部分が判明するのは、来年4月頃になるのではと言われています。
海外での目撃情報はないので、外来種による影響はないと考えられていますが、外国人観光客の土産物などにまぎれて海を越える可能性も考えられるとのこと。
以上のことを踏まえ、もし目撃した場合は、可及的速やかに通報するようお願いします。興味本位で近寄ったり、餌付けなどはくれぐれも、お控えください。
何かと慌ただしい年の瀬ではございます、どうか穏やかに新年を迎えられるよう願っております。それでは、良いお年を。
タイトル写真:坂脇卓也