ともさかりえ「子どもが生まれてからが、私の青春でした」

8月31日から公開される映画「SUNNY 強い気持ち・強い愛」。ロングヒットとなった韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」の設定を1990年代の日本に置き換えてリメイクした本作で、5歳の娘を育てる役を演じているともさかりえさん。映画と同じく90年代に10代を送ったともさかさんは、この役をどのように感じ、演じたのでしょうか。

韓国版を見たときに「この役を演じられたらいいな」と思った

――ともさかさんが演じる「心(しん)」は、90年代のコギャルブームを謳歌した明るい少女が、40代になって離婚し、子どもを実家に預けて場末のスナックで雇われママとして働いている役柄です。

 私自身、元になった韓国版の映画を見たときに彼女のもの悲しい雰囲気に魅力を感じて「この役を演じられたらいいな」と思いました。私が演じた大人の「心」はストーリー上一番最後の合流だったので出演シーンはそんなに多くなかったのですが、それまでの映画の流れを一変させるようなところがあるキャラクターで。中途半端な感情で演じてはいけないな、と感じていました。かつてキラキラ輝いていた女子高生時代からは想像できないくらい落ちた「心」が、20年ぶりに再会した親友「奈美」(篠原涼子さん)と激しくぶつかるという、とても大切なシーンがありました。大根仁監督はリアリティにこだわるので、実はそのシーン「もう涙、一滴も出ません!」というくらい撮り直したんですよ(笑)。

――大根監督とは、以前から面識がおありだったそうですね。

 初めて監督にお会いしたのは10代――ちょうど、今回の映画に出てくる女子高校生たちと同じくらいの年齢でした。
 それから年月がたって、こうやってまたお仕事をご一緒させていただけて。長くやっているといろいろなことがありますが、本当にご褒美のようなこの作品に参加できて幸せです!そしてこれからも女優として、「自分にしかできない役」を演じられたらいいなと思っています。

青春時代と呼べるのは子どもが生まれてから

――12歳のころから女優や歌手として活躍し続けてこられましたが、「青春」といえば何を思い浮かべますか。

 10代から20代のはじめの頃は目の前の仕事をこなすのに精いっぱいで、25歳で子どもを生んでからやっと自分のことを見つめる時間を持てたんですよね。もしかしたらそこからようやく「青春」がおとずれたのかもしれません。もちろん、息子が生まれてから3年間は子育てで忙しくて、「一生、自分一人の時間を持つことはムリかもしれない」と思ったこともありました。時間的にも物理的にも子どもが生まれてからのほうがはるかに制限はあったのですが、精神的には自由になれました。
 
――これから子どもを産みたいなと考える女性のなかには、「出産でキャリアを中断されると思うと産むのを躊躇してしまう」という人もいます。

 その気持ち、すごくよくわかります。私も息子が小学生になった頃に、仕事をセーブしたんです。子どもって思った以上にあっという間に大きくなってしまう。「かわいいね」「お母さん大好き」って一緒に時間を過ごせるときって、実はすごく短い。もっと一緒にいてあげたいと思って、仕事をセーブすることにしました。セーブしたことで、お断りせざるを得なかったお仕事もありましたが、後悔はありません。

 しかし実際の話、私と息子が生きていくためには仕事は必要です。そして何より仕事は自分が心から打ち込めるものなので外すことができないもの。あたりまえのことですが子どもと仕事、どっちも大事です。

常にときめきを求めていた自分しか思い出せないけど、今は……

――ともさかさんといえば、恋多き女性というイメージがあります。

 そうですか?…けど、たしかに常にときめきを求めていたかもしれません……(笑)。でも、2回離婚を経験して、この数年間は修行僧のように生きてきたので、恋する、ということを忘れちゃって。今は、小さなときめきはありますが、そこからどういうふうに発展していくのかがわからなくなってきました(笑)。今は、ミュージカルや演劇が好きなんです。実際に劇場に観に行って、非現実的なところでときめいて、エネルギーをもらって、「よし! 生活がんばろう」って。
 最近、リアルなときめきを忘れがちなので、女性としてこれはいかんなって(笑)。でも、それも含めて、自分なんだなと。いろいろな選択肢がありますが、自分がその瞬間に良いと思ったことや、楽しいと思ったことを選び取っていけたら、それでいいと思います。

明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。