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XXしない女たち #14

性の話に臆さない女たち 「パートナーを選ぶ基準のひとつ」

情報爆発時代の中で、私たちはさまざまな「HAVE TO:やらなければならないこと」に囲まれている。でもそれって本当にやらなきゃいけないこと? 働く女性たちを研究している博報堂キャリジョ研プラスによる連載「XXしない女たち」第14回は、性の話に躊躇しなくなった女たち。少し前までは、セックスの具体的な内容などを女性が人前で話すことはタブーとされてきたが、最近では著名人が自身の性の具体的な話を公の場面で発信する場面も見られる。恥ずかしがったり揶揄されたりする内容ではないと感じ、自ら口にするのをためらわない。今回は、そんな性の話に臆さない女性たちのリアルをお届けします。
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堂々と話すのがかっこいい

官公庁に勤めるBさん(26)。高校までは性に関する知識は人よりも乏しいほうで「高校までは、キスすれば子どもができると思っていました」と言う。中学生になり、周囲が性に関して好奇心が出てきても、誰と誰が「ヤッたらしい」という話を聞いていても、意味がよくわかっていなかった。

性に関する知識が少しついて来た大学生の時、ある男性に出会った。Bさんより少し年上で知的で尊敬できる人だった。そんな彼があるとき社会人のコミュニティにBさんを紹介してくれ、当たり障りのない会話をみんなでしていたときに、その彼は「セックスの時に同時にイクことはとてもいいことなんだよ」と真面目に話した。「驚いたけれど、いやらしさはなかったです。むしろそういう性の話は大事にして臆せず話している姿がかっこいいと思いました」。この時から自分もオープンに話してみたいと思うようになった。

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Bさんは福岡出身。当時、いわゆる「九州男児」や「女性は大和撫子」といったような考え方が比較的強かった場所で育ったからか、それまで異性と性の話をすることなど全くなかったという。「パンツという単語を話しただけで、女の子なんだからそういうこと言うのはやめなよ、という風に言ってくる男子がいました」というほど、かなり女性が性に関する話をするのはハードルが高かった。「まして家族に話すことなんて、本当にあり得なかったですね。特に父は女の子なんだから絶対にやめてくれ、というタイプでした」

しかし、Bさんは性の話にオープンになった今では、姉とは性の話をするようになったという。「今まで付き合ってきた中でだれが一番良かったとか、旦那にこういうことをされたとか。そんな話までできるようになりました」。

性の話でコミュニティを結成

自身は元々性欲が強いタイプだというBさんは、今では友達と「こういうセックスが良かった」「好きな体位はなにか」などと話す。性の話は非常に大切であり、社会では話しにくい抑圧された状態だということを理解した上で、あえて友達にも、啓発にも似た形でオープンになってもらうために自分から性話題を持ち出したりしている。

「周りには言えないけれど私には言いやすいからか、性の話をしてくる子が現れました」。やがてそうした話を気兼ねなくできる友達が増え、大学3年生のころ性の話を議題にする女性6人によるコミュニティを結成した。このコミュニティでは、食事をしつつ性に関する話をしていた。話題は、最初はセックスの体験談などが中心だったが、メンバーが年齢を重ね、Bさん自身も含めて結婚したり、パートナーと過ごす年月を積み重ねたりしたことで、話題は少し変化したそうだ。

「昔は楽しくわいわい話すことが多かったのですが、今はセックスレスなどシリアスな悩みを打ち明けたり、そこから派生して人生の悩みを話したりする場にもなりました。今まで性の話を周りに話せなかったけれど、こういったコミュニティができたからこそ、思う存分話せるようになった、といってくれる人も少なくありません」

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メーカーに勤めるOさん(26)は、自分ではそこまで性欲が強いタイプではないと思っている。現在Oさんは結婚しており、夫もまたそれほど性欲が強いタイプではなく、むしろ性の話はあまりしたくないタイプだ。しかし、Oさんは自分が経験しないからこそ、性的な面白い経験をしている人の話を聞くのは好き。自分の体験談を話すことはないが、見聞きした「世界ではこういうことをしている人がいるらしい」という話などはする。

また異性と話すこともあり、その場合好奇心だけではない気持ちがあるという。「やっぱり男性の身体のことは男性にしかわからないし、自分のパートナーを傷つけないためにも、男性側の意見については真剣に聞いてました。性の話を聞くのが好きなのは、自分の視野が広がっていくのが楽しいからです。一種の教養みたいなものですかね」

教師が日常会話で生徒に話す海外

Fさんは28歳、観光業界の会社に勤めている。セックスの頻度、その際の悩みなどを信頼できる友達にしている。自分が話したことをペラペラと他の人に話さないよう友人だ。「性の話は恥ずかしいことではないと思っていますが、セックスの話などはパートナーの印象にも関わることなので慎重に話しています」

Fさんは高校1年生から3年生までブラジルに住んでいた。それまではなんとなく性の話はいやらしいものなのだと感じていた。しかし、ブラジルでの経験でその考えは変わった。ブラジルでは同級生は勿論、先生まで当たり前のように性の話をしていたのだ。

「この前したセックスが結構よかった。そんな話を3、40代の先生が日常会話で生徒に話していたのに驚き、オープンに話していいことなのだなと感じました。そこからは本当に性の話は日常会話の1つで、私もこのご飯美味しかったよね、くらいの温度感で話すようになりました」

Pavel Muravev/iStock/Getty Images Plus
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パートナーを選ぶ基準のひとつに

Fさんは現在結婚しているが、相手も帰国子女で小、中学校はオーストリアに住んでいたそう。子どもたちは性にオープンな価値観が育まれていたそうで、例えば保健体育の授業は男女を分けず、しっかり男子も女子も生理やお互いの身体について学ぶ機会があったという。

Fさんの両親はキスをしたり密着したり、一緒にお風呂に入ったり、子どもの前でも身体的な親密さを見せるタイプだった。その背景もあり、Fさん自身も子どもができても手をつないだデートや、セックスをしたいと思ってきたという。

「私は、セックスの相性とか、性に関する向き合い方で結婚するかどうかの基準を意識的に設けていたわけではないですが、多分自然とそういった面で意見が合致していたから、今結婚しているのだと思います。私にとって、セックスとは愛情表現の1つで、体も心も満たされること。性欲が全くないという人だったら付き合わなかったと思います」

Michael H/The Image Bank
Michael H/The Image Bank

「自分が話すことに抵抗がない」は4分の1

博報堂キャリジョ研プラス「性に関する話への向き合い方の調査」
【グラフ1,2】博報堂キャリジョ研プラス「性に関する話への向き合い方の調査」

博報堂キャリジョ研プラスは2023年9月、15-49才の女性150人を対象に「性に関する話への向き合い方の調査」を行った。性の具体的な話を聞くことに抵抗がない、あまりないと回答した人は合わせて30.6%(グラフ1)。また、自分が話すことに抵抗がない、あまりないと回答した人は計24.0%だった(グラフ2)。

博報堂キャリジョ研プラス「性に関する話への向き合い方の調査」
【グラフ3,4】(単一回答)博報堂キャリジョ研プラス「性に関する話への向き合い方の調査」

性の話をするときの、会話の内容としては「体験したセックスの内容」が20.0%、「セックスレス」が10.7%と多かった。性に関する話をする動機も聞いたところ、「日常会話」「好奇心から」が多いが、「自分の視野を広げるため」(4.7%)、「周りにも性の話にオープンになってほしいため」(2.0%)という回答も見られた。

調査結果やインタビューからは、まだまだ自分から性の話について話すことに抵抗感を持つ人は多いものの、自分の視野を広げるためや、周りにも性の話にオープンになってほしいというこれまでにはなかった視点で性の話に向き合う人が少なからずいることが分かった。

実際、テレビやイベントなど公の場で、著名人が自身の性の話を語る場面も見られる。本来、性とは人間の生活において切り離せないトピックである。性の話をオープンにすることで、パートナーとの関係性をよくしたり、聞きにくい話も本音でできるコミュニティができたりと、自分の生活の質の向上や人との関係性をより強固なものにしていくことにつながるとも言えそうだ。

(トップ写真はJiyi/iStock/Getty Images Plus)

姓にこだわらない女たち 名字の選択はジャンケンで 盛らない女たち 加工だらけの自分にサヨナラ
「博報堂キャリジョ研プラス」所属。1997年生まれ。グローバルマーケティング部で、ストラテジックプランナーとして、ヘルス&ビューティーブランドや通信会社のマーケティング、リブランディング、競合調査などを担当。趣味は旅行、ハイキング、ゴルフ、YouTube鑑賞。