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XXしない女たち #10

「本業」にこだわらない女たち 副業がストレス解消になるワケ

情報爆発時代の中で、私たちはさまざまな「HAVE TO:やらなければならないこと」に囲まれている。でもそれって本当にやらなきゃいけないこと?働く女性たちを研究している博報堂キャリジョ研による連載「XXしない女たち」。今回は「本業」にこだわらない女たち。本業以外の別の環境に飛び込んでみたい、お金をもう少し稼ぎたいと、試行錯誤しながらも、本業以外の職を持つことに踏み切る女性たちが増えています。今回は、そんな女性たちの声をお届けします。
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「好きなこと」を副業に

社会人になる前、1年間モラトリアムがあった。その期間、少しでもお金を稼いでおこう。自分が好きなことはなんだろう?と考えてみた。そうして始めたアルバイトが社会人になった後の副業(※1)となった。

Tさんは現在26歳。本業は語学事業の会社で、公認会計士として経理を担当している。元々母の教えもあり、何か資格は持っておいた方がいいと昔からなんとなく考えていた。そして、大学生になった時、友人から公認会計士の資格をとる教室に行かないかと誘われ、お試しで教室に行ってみたのがきっかけで、公認会計士を目指そうと考えた。

公認会計士を目指すには時間と労力が必要になる。Tさんは在学期間を延長し、1年間勉強に集中することにした。しかし周りの友人は社会人になり、お金を稼いでいる中、自分だけお金を稼がず学生を続けるのに罪悪感があった。Tさんは母がやっていたヨガを中学から習い始め、大学に入ってからも続けていた。アルバイトでお金を稼ごうと思ったとき、どうせなら自分の好きなことがしたいし、それでこそ続けられると思った。そして、人生を振り返ってみて自分がどんな時が楽しいと感じていたか、好きだったかを考えたとき、それはヨガだと思った。
そして大学の残りの学生生活でヨガのアルバイトを始めた。

本業のストレスは副業で解消

卒業後、新卒で公認会計士として入った監査法人は副業が許されていた。そこで、公認会計士の仕事をしながら、副業としてヨガの講師も続けることにした。気になっていたのは自分の精神面と体力面がもつかどうかだった。本業で忙しくなることはわかっていたので、本業と副業とを両方やっていく体力が心配だった。そしてヨガが楽しいのは間違いないが、仕事は仕事。どんなに頑張ってやっていてもクレームを入れるお客さんがいることも分かっていた。

しかし、実際始めてみると実は本業のストレスが逆に副業で解消された。本業が終わった後、夜18時以降ヨガの教室に向かう。その道中は正直面倒だなと思うことはある。しかし、いざいってみて、体を動かしたり、お客さんと話すと、結局すっきりした気持ちになる。

ヨガ教室では、色々な年齢層のお客さんと会い、仲良くなる。ヨガ講師をする同僚たちは年も近い人が多く、にぎやかな雰囲気で教室の運営を一緒に行っている。一方で会計士として所属する経理の部署は自分よりかなり年上の人が多く、和気あいあいとした雰囲気とはいえないが、色々学ぶことが多い。

「ヨガと経理ではそれぞれ違う価値観を持った人が多く、その全く異なる2つの環境にいることがとても楽しい」とTさんは言う。副業をすることで「人生がより彩られた」感覚だという。

スモールスタートでOK

28歳Sさんの本業はIT会社。副業も許されており、Sさんは自分でペットの犬やその飼い主さんのためのサービスを一から立ち上げた。元々ワンちゃんが好きなSさん。小さいころから飼っているワンちゃんがいたが、あるときすい臓がんになってしまった。その際にもっと早く病気の兆候がわかったら、対処も変わったはずと思っていた。

Sさんは会社員として働き出してから、このまま毎日8時間きっちり拘束されて働く生活を年取ってからも続けたくはない、と感じたという。いつか自分で時間をコントロールして働くことができる自営業を営みたい。そのために、今から副業を持ち、スキルや経験を身につけたいと考えた。

ワンちゃんや飼い主への想いもあり、飼い主たちがワンちゃんの健康関連の情報や知識、口コミを共有するサイトを作ろうと考えた。
大学は商学部で、プログラミングなどはやったことがなかったというが、事業を立ち上げたいと思ってからの行動は早かった。プログラミングに詳しい知人を頼ったり、動画プラットフォームで学んだりしながらwebサイトを構築した。本業をしながら、プログラミングを一から学び、作業を進めるのは時間がかかったが、会社で学んだ知識やクライアントの課題への向き合い方はビジネスの立ち上げで色々と役に立ったとも感じている。本業が副業の時間を削減するだけでなく、副業の助けにもなるとも言えるのだろう。

Sさんは本業ではシステムのユーザーエクスペリエンス(利用者が得る体験およびその印象)の向上を目的とした業務を担当している。クライアントやユーザーの声はアンケートなどで聞くことはできる。しかし、プロジェクトはあくまでも複数人で行っているものであり、自分の貢献度は見えにくい。またユーザーとの距離もやや遠く感じていた。

一方で、副業のワンちゃんのサービスはSNSで広報活動を行っており、DMで、「こういうサービスを待ってました」や「すごくこのサービスはありがたいです。応援してます!」といったような声を直接聞くことができる。また自分一人で立ち上げたビジネスで喜びの声を聴くのは達成感が違うという。「本業に加え、より人生に充実感を感じられるようになった」とSさん。

Sさんは副業を始めるのに不安はほとんどなかったという。それにはやはり本業でお金をすでに得られているということがとても大きかった。副業で失敗しても生きるのに困るわけではない。また、自分一人で副業を営んでいるので人件費もかからない。ウェブサイトの維持費もせいぜい年間2万円ほどの出費ですんでいる。起業する際には、スモールスタートを切ってみるということが、リスクヘッジとなるのかもしれない。

もちろん副業に関する勉強からサービスづくりまで、かなりの時間はとられる。中々収益化が難しく、作業している間これに時間を費やしていいのか、もっと別の資格を取った方がいいのではないかとも時々は考える。それでも、自分のやりたいことであるし、そして応援の声があるからまた頑張ろうと思える。

兼業で身につけるマネジメント力

Kさんは29歳。歌手として音楽活動を半分しながら、映像制作の仕事を半分行うという、どちらも同じく力を入れる「兼業」(※2)スタイルだ。

元々Kさんは小さいころから音楽が好きだった。レッスンにも通い、やがてプロの歌手を目指すようになった。アメリカの音楽大学を卒業、その後もアメリカで暮らしたが、音楽だけで食べていくのはなかなか難しい。

帰国して、友人に兼業に寛容な映像制作の仕事を紹介してもらい、音楽にも映像の仕事にも“フルコミット”する兼業スタイルをとった。映像について学んだことはなかったが、音楽業界にいる人とまた違ったタイプの人たちに会えるのがとても楽しいという。

兼業スタイルだと、どっちの仕事がメインということはない。例えば、洋画の撮影現場での通訳の仕事が発生した際、同時に音楽の仕事ではレコーディングをしなければいけないこともあった。その時は映像制作の方は代理で通訳ができそうな人を探して代わってもらった。そして後日、音楽の仕事でのミーティングを欠席し(後日議事録をみる)て、その通訳の仕事の分をこなす。そういった仕事量の見極めやスケジュールの調整といったところで、マルチタスクのマネジメント力が身につけられてきているのではと感じている。

博報堂キャリジョ研「仕事や育児などに関する意識調査」グラフ1

博報堂キャリジョ研は2022年に「仕事や育児に関する意識」について、20-59才の仕事をしている男女2400人を対象にインターネット調査を実施した。その結果、「可能なら副業をしてみたい」と考える女性は60.9%と、男性の48.9%よりも上回る結果となった。

博報堂キャリジョ研「仕事や育児などに関する意識調査」グラフ2

仕事に関する意見や考えとして、「仕事にはやりがいが必要だと思う」と回答したのは、女性は74.5%と、男性より高い値となった。「仕事で達成感を感じたい」、「自分の好きなことを仕事にしたい」、「仕事で色々な人に関わりたい」という意識も、女性の方が該当者が多かった。

(※1)副業:本業に重きを置き仕事しており、他の仕事は本業より比重が小さいものの時他の仕事を副業と定義する。また、副業はお金を稼ぐことが、仕事の一つの目的となっている。
(※2)兼業:本業とその他の仕事も大体同じ比重でコミットしている際、その他の仕事を兼業と定義する。副業と同じく、お金を稼ぐことが一つの目的となっている。

(写真はGetty Images)

サプライズがいらない女たち 「儀式」をやめ、作った新ルール 生理の悩みを手放した女たち。子宮内リング装着で気づいたこれまでの重荷
「博報堂キャリジョ研プラス」所属。1997年生まれ。グローバルマーケティング部で、ストラテジックプランナーとして、ヘルス&ビューティーブランドや通信会社のマーケティング、リブランディング、競合調査などを担当。趣味は旅行、ハイキング、ゴルフ、YouTube鑑賞。