FP fumicoの“Live colorfully”#40 「行動経済学vol.2」~心の“クセ”を利用され、損することも!?
知識や経験があるからこそ…
そもそも、行動経済学とは何のための学問なのでしょうか?
あまり意識していませんが、私たちは限られた時間の中で、いくつもの“判断”や“選択”をしながら暮らしています。
仕事帰りにスーパーで買い物をする際、「この商品が今日は安い」とか「AではなくBの商品を買おう」といった判断を瞬時にできるのは、これまでに何度も買い物という行為を繰り返したことによる知識や経験があるからこそ。“まっさら”な状態で生きるのは時間もエネルギーもかかるので、かえって大変です。
ただ、知識や経験があるために、反射的に「本来はすべきではないコト」を選んでしまったり、いつの間にか誘導されてしまったりすることもあります。
機械ではない人間だからこそ陥ってしまう心の“クセ”の仕組みを解き明かすのが、行動経済学です。
リスクの大きな商品の購入を…
日本ではあまり馴染みがありませんが、近年、行動経済学を専門にする学者がノーベル経済学賞を受賞しているところからも、その注目度の高さがわかります。
ノートでご紹介した「プロスペクト理論」を提唱したダニエル・カーネマンは2002年に受賞しています。
17年に受賞したリチャード・セイラーが提唱した「ナッジ理論」は、簡単に言うと、“nudge”(軽くひじでつつく)により、他人の行動を望ましい方向に誘導する仕組み。日本でも健康診断の受診率を上げるために、活用されているようです。
ここでみなさんに注意していただきたいことがあります。
以前、このコラムでもご紹介しましたが、24年からNISA制度が新しくなります。今回の改正を機に投資を始める方も大幅に増えるでしょう。
投資に慣れていない人に、リスク(値動きの振れ幅)の大きな商品を購入させようとして、この“クセ”が使われるケースも増えるのではないかと、私は懸念しています。
ノートにも書いたように、一呼吸置いてから判断するようにしましょう。
前回ご説明した「メンタルアカウンティング(心の会計)」も再度確認を。これは、入手経路によって、心の中で勝手にお金を“色分け”してしまうこと。働いて得た1万円も投資によって増えた1万円も、その価値は本来、同じです。「お給料はしっかり貯金するのに、投資で得たお金はパッと飲み代に使ってしまう」といった方も。気を付けて下さいね。
かくいう私も…
私も、“クセ”にとらわれてしまった経験があります。
かなり昔に買った投資信託ですが、購入して数年後、値下がりしてしまい……。購入した時の額が“アンカー”となって、頭にこびりついてしまい、「いつか購入時の金額まで戻るかもしれない」と考えたり、「数年間保有したのだから、ここで売却するのは惜しい」と思ったりした結果、損失が増えてしまいました。その後、思い切って売却したところ、気持ちもスッキリすることができたので、もっと早く決断しておくべきだったと感じています。
私たちが思う以上に、日常生活の中には心の“クセ”を利用した様々なマーケティング手法があふれています。
「〇日まで!」「期間限定!」といった言葉を見ると、限られた期間での判断を迫られることとなり、「安いのは今だけ」「買い時を逃して損をしたくない」という気持ちが働き、よく考えずに商品を買うことに繫がりがち。以前、お話ししたような、「レジ前で並んでいる時は焦って不要な商品を買ってしまいがち」なのと同じ理屈です。
「198」といった表記は端数効果と呼ばれ、私たちはキリのいい数字よりも中途半端な数字の方が、つい安く感じてしまいます。日本では「198」「298」など末尾が8であることが好まれますが、海外では「99」といったように末尾が9の方が多いとの話も。
「キリがいいから、お得感を感じる」という場合もあります。500円の「ワンコイン弁当」は、リーズナブルな価格のような気が実際にしますよね。つくづく人の心とは不思議なものだと感じます。
日常が戻るからこそ!
今日で3月も終わりです。5月8日からは新型コロナウイルスの感染法上の分類が、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられる予定です。「日常がようやく戻ってくる」とワクワクしている方も多いのではないでしょうか。
4月は新生活が始まる季節でもあります。新年度を迎えるのを機に、これまでに得た知識とご自身に足りないモノを確認する“キャリアの棚卸し”を行い、自分だけの“強み”を探してみるのは、いかがでしょうか。