FP fumicoの“Live colorfully”#38 「貯蓄から投資へ」と言うならば…~大事なこの1年の過ごし方
難解語は分解して読み下す
NISAが大幅拡充されるというニュースが大きく報道されています。そこで改めて現状や課題について整理しようと思います。
昨年12月、閣議決定されたNISAの拡充を含んだ「税制改正大綱」。言葉自体が難しいですが、こうした場合は以前もご説明したように、分解して読み下すと理解が進みます。難易度の高い「大綱」は「方針」と読み替えるのがオススメ。そうすると「税制改正大綱」は、「税制」を「改正」する「方針」となります。
閣議決定を受けて大きなニュースになり、SNSも賑わいました。留意してもらいたいのは、SNSの情報。新NISAについて、「○○した方がいい」と断言していたり、「●●か□□がオススメ」といった少ない選択肢を提示していたりする投稿は、鵜呑みにせず精査が必要です。ご自身のライフプランやリスク許容度に沿わない場合があるからです。ご自身のお金に直接的に関係することなので、くれぐれもご注意を。
選択肢が増えたからこそ…
今回のNISA拡充は個人的にも予想以上です。私は以前から、つみたてNISAについて、現行の1.5倍の、月5万円、1年で計60万円程度の枠の増額を希望していました。それがつみたて投資枠については、3倍の120万円になるし、一般NISAを引き継ぐ成長投資枠についても2倍の240万円へと変わります。
これまでNISAの拡充の要望をしてきた、投資家らの多くの想定も超えています。資産を「貯蓄から投資へ」シフトさせる国の方針が“本気だった”ことをうかがわせる内容。
一方、選択肢が増えた分、初心者にとっては難しく感じる可能性もあります。これまでのつみたてNISAであれば、少額で投資信託を一つか二つ決めれば20年間、そのままにしておいてもよかった。いわば果報は寝て待て。ドル・コスト平均法で、長期間投資を行えば、一時的な凸凹があったとしても、最終的にはややプラスに平準化されるからです。
今後も同じスタイルでも構わないのですが、使える金額が高額になり、期間も無期限になるなど自由度が増すことで、選択肢がかなり多くなることも事実。
私としては、ライフプランから逆算し、ご自身の知識や経験に合わせて柔軟に活用する方が望ましいと考えています。
昨年4月から、新しい指導要領に基づいて、高校生が金融教育の授業を受けることになりました。しかし、telling,読者のみなさんは、そうした機会は与えられません。
この流れをプールに例えると
私は今回のNISAの拡充をプールに例えています。大きくて新しいプールを用意した国は、「みなさん好きに泳いで、泳ぐ能力を身につけ、健康維持もしてください」と言っている状態。
この場合に、泳げる人はいいのですが、まったく泳法を知らない人や、経験が少ない人は、どのようにして泳げばいいのか。そもそも、水が嫌いだから、泳がないという人もいます。だからこそ国には泳ぐこと、つまりは投資の効用を説明したり、泳ぎ方を解説して溺れる人を出さないようにしたりする必要があります。
今年から来年にかけて準備を怠らず!
これまでNISAはしてこなかったものの、今回の拡充を受けて興味をお持ちの方もおられるでしょう。「新しくなる来年まで待って、口座を開設しよう」と考えている方もおられるかもしれません。ただ、23年末までに現行のNISA口座で購入した商品は、新しいNISAの“外枠”で持てるので、その分、非課税で運用できるお金が増えることになります。つみたてNISAであれば20年間、非課税で運用できますから、新しい制度のスタートを待つことなく少しでも早く始めることで、積立投資のメリットを得ることができます。
一方、一般NISAについては非課税期間が5年と短いため、今年始める場合は慎重に投資先を選ぶ必要があります。
いずれにせよ来年にかけて、金融界では大きな変化が予想されます。このNISAもそうですし、日銀新総裁には日銀審議委員の経験もある経済学者の植田和男氏が就任する見込みです。当面は現在の政策が継続するとみられますが、お金をじゃぶじゃぶ刷って、市場に回す「異次元緩和」は限界で、出口戦略が模索されています。
だからこそ、2023年は、これからに向けた大切な「準備の年」になります。ご自身のライフプランやリスク許容度を踏まえ、どのような投資スタイルから始めるかを考え、見つめ直す1年にしてもらいたいですね。
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FP fumicoの“Live colorfully”の次回は、3月10日に公開の予定です。