ノートで学ぶマネーの「常識」

FP fumicoの“Live colorfully”#39 iDeCoは変わらず難しい?~想定より進む少子化、待ったなしの資産運用なのに…

「マネー」に関するインスタグラムへの投稿で、20~30代の女性から支持を集めるFP(ファイナンシャルプランナー)のfumicoさん。お金に対する苦手意識を克服する方法や、ちょっとした工夫などをfumicoさんのインスタでお馴染みの手書きのノートでお届けする、39回目。今回はiDeCoの拡充について。「貯蓄から投資へ」の流れの中で、必要なiDeCoですが、変わらず“ややこしい”ようで……。
FP fumicoの“Live colorfully”#38 「貯蓄から投資へ」と言うならば…~大事なこの1年の過ごし方

中高年層の加入を促し、企業型DCと併用しやすく

今回、改めてiDeCoを取り上げるにあたって、まずは税制上のメリットをおさらいしましょう。
大きくは、①払った掛金は全額所得控除となり、税金を減らせる②運用期間中に得られた利益に対して税金がかからない③将来の受け取り時の控除が大きく、お給料や民間生命保険会社の年金保険よりも税金を減らすことができる、という3点が挙げられます。

そして、今回の改正の主な目的は、年齢で加入を諦めていた中高年層の加入を促すことと、企業型DCと併用しやすくすることです。
前者についてはこれまで、中高年の方は「今さら入っても、少しの期間しか加入できないので、メリットが少ない」と考えがちでした。しかし、加入できる年齢が60歳未満から、65歳未満に拡大。厚生年金に加入している人といった制約はあるものの、諦めていた方にも加入を促す効果を狙ったとみられます。
企業型DCとの併用は、これまでも制度上は可能でした。しかし、お勤め先の企業型DCの規約で「iDeCoに加入してもいい」と定めのない企業がほとんど。実質的には加入できない方が多かったですが、こちらも改善されています。

増加率が309.7%なのは…

現状をご説明すると、iDeCo加入者は増えています。特に会社員や公務員など厚生年金に加入の2号被保険者で、企業年金に入っている人のiDeCo加入が激増。昨年12月は前年同月に比べて309.7%の増加率となっています。
加えて2号保険者のiDeCoへの新規加入は昨年10月に大幅に増加しています。企業型DCと併用しやすくなった効果とみられます。

元本変動型での運用も増えています。以前は元本確保型の商品で運用する方が多かった。ただ、iDeCoというのは、口座を持っているだけで手数料がかかる仕組み。掛け金拠出中に税金を減らせるとはいえ、元本確保型で運用するとお金がほとんど増えずに、手数料だけが取られるという状況も起こっていました。
そんな中、積み立てたお金が変動する、元本変動型を利用する方が増加。税制メリットを得ながら、積立投資によって老後資金を準備したいという人が増えている現れ、と私は理解しています。

国内の出生数は昨年、過去最少の79万9728人

受け取れる年齢に「原則として」とあるのは、加入期間が短い場合は受け取り開始年齢が後ろ倒しになるため。死亡したり、一定以上の障害状態になったりする場合を除いて、iDeCoは60歳未満では受け取れません。私はこの点が最大の注意点だと考えていますが、公式サイトなどでの説明は不足している印象です。

さらにiDeCoは、勤め先の年金制度との組み合わせで、拠出上限が異なるなど、とてもややこしくなっています。加えて、制度改正で頻繁に仕組みも変わる……。勤め先における拠出上限は、人事・総務・労働組合などの担当する部署や部門に確認するようにしてください。最も確実ですからね。

マッチング拠出についても一言。これは手数料を会社が負担し、加入者が一定額を拠出できる仕組み。マッチング拠出をしていれば、iDeCoには入れませんが、マッチング拠出には前述のメリットがあります。ですので「マッチング拠出をやめて、iDeCo」という選択が、必ずしもいいわけではありませんのでご留意を。

前回も触れましたが、閣議決定された税制改正大綱でNISAにおいては、「老後等に備えた十分な資産形成を可能とする観点から…」とあります。老後資金は個人で準備してほしいとの国の意図が透けて見えます。
先月、厚生労働省が発表した人口動態統計の速報値によると、2022年の国内の出生数は79万9728人で過去最少。少子化は想定より11年早いペースで進んでいます。
この事態は、“現役世代が高齢者に仕送りする”という日本の年金制度が、立ち行くかの瀬戸際まで来ていることを示しています。

つまり、国としてはNISAでもiDeCoでも、それ以外でもいいから、自分で投資をして老後資金を準備して欲しいのです。
「その後押しとしての制度は作ります」といった意図で様々な制度が拡充されている。このことは知ってほしいですね。既に資産が潤沢にある人を除いて、私も個人的には「難しいから、何もしない/始めない」という選択は、現状を鑑みると、“あり得ない”と考えています。

iDeCoはやっぱり「ややこしい」

iDeCoについては、NISAと比べて雑誌やSNSで話題になることが少ない。先ほどからお話ししているように、これはiDeCoがNISAより、「ややこしい」から。その結果、NISAと比べるとあまり広まらないという悪循環に陥っています。iDeCoは、もう一段階シンプルにしたうえで、制度説明をしっかりする必要があるでしょう。

今は意欲のある個人や、従業員の老後資金問題に積極的な企業などが自発的にiDeCoに加入しているだけ。こうした状況は早急に改善する必要があると、強く感じてもいます。

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FP fumicoの“Live colorfully”の次回は、3月31日に公開の予定です。

FP fumicoの“Live colorfully”#38 「貯蓄から投資へ」と言うならば…~大事なこの1年の過ごし方
CFPⓇ保有のファイナンシャルプランナー。 大学卒業後、生命保険会社や市役所での勤務を経て、2017年12月より「お金」に関するInstagramへの投稿を始める。社会保険や税金・資産運用といった学ぶ機会がなく、話題にも上りづらいコトを身近に感じてもらえるよう、解説の投稿は手書き。趣味は起床後すぐの15分ヨガと、株式投資。
ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。