FP fumicoの“Live colorfully”#34 帰省シーズンに考える! 私、そして親の“老後”
女性の半数超は90歳まで生きる!
日本が長寿の国であることはみなさんご存じだと思います。
2021年は新型コロナウイルスの感染拡大などにより男女とも10年ぶりに平均寿命が前年を下回りました。それでも平均寿命は過去2番目に高い。日本人の平均寿命が男女ともに50歳を超えたのは、1947年ですが、以後、乳幼児死亡率の低下などがあり、延びてきました。しかも女性の場合は、半数超が90歳まで生きるとも言われています。
今後も医療技術の進歩などにより、寿命はさらに長くなることが予想されており、厚生労働省は2040年には女性が89.63歳、男性が83.27歳になると推計しています。平均余命などを勘案すると、「人生100年時代」は、まもなく到来の見込みです。
お金の話を避けるのと同様に…
一方、平均寿命の延びに追い付いていないのが我々の意識です。
平均寿命が89歳なら、その時点まで頑張れば良いと思いがちなんですが、平均余命などを勘案すると、「89歳プラス数歳は生きる」と見ておいた方がいい。一昔前までは「60歳で定年退職して、老後は20年」が一般的でしたが、これからは「65歳で定年退職しても、老後は25~35年」となる人が多数派に。これを前提にライフプランやマネープランを考える必要があります。
以前、「日本人はお金の話をしたがらない」と言いましたが、老後も触れるのを避けがち。
老後の先には「死」があるので、忌避感があるのは当然だと思います。しかも、telling,世代の方はまだしも、親世代には「縁起でもない話をしてほしくない」という思いが強い方もいらっしゃるでしょう。
しかし、医療や介護については、客観的に知ることで準備を出来ることがたくさんある。
ライフプランやマネープランを考えるうえでは、「〇歳までは健康に生活できそう」など具体的な年齢をイメージした方が、より現実的な選択肢を取りやすくなります。逆に蓋をしてしまって、何も見ないふりをすると後で痛い思いをします。
この連載を利用して老後の話を!
とはいえ、ご両親との会話でそういった話題を口に出すのが難しいのは、私も承知しています。ですから、この連載を利用していただき、「こういう話が載ってたんだけど」と話すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
最近では「終活」という言葉も広まり、以前よりは老後の話をしやすくなっているとも思いますので……。
「老後」はいつを指す?
「老後」が指すものが明確でない点も、準備しにくい大きな理由です。
「高齢者」については厚労省が、65歳以降と定義しているのに対して、「老後」は一般に定年退職後とされているものの定義はありません。このため、専業主婦(夫)の方や、今後、さらに増加すると思われるフリーランスといった「定年がない」方にとっては、“老後”と、“その前”との線引きがありません。
定年延長や再雇用などが拡大しつつあり、お勤めの方でも老後の時期は不明瞭になっています。だから、ご自身でいつまで働きたいか、体力・環境的に働けるかについて、考えておく必要があります。
ただ、会社などからの報酬が無くなってからの余生の方が、生まれてから成人するまでより長くなるのは事実ですのでお忘れなく。
「つみたてNISA」は拡充されるが…
平均寿命が長くなり、少子高齢化が進むことで、祖父母世代や親世代とは状況も大きく変わります。年金で生活費の多くを賄えたり、十分な退職金を受け取れる時代ではなくなったといっても過言ではない。だからこそ、準備が必要なのです。
備えるための留意点もあります。
ノートのココロの準備の箇所で、「年金」について、「毎年送られてくるねんきん定期便で確認」などと書きましたが、実は年金をいくら受け取れるかを正確に把握することは難しい。ねんきん定期便は50歳以上でないと見込額が載っていないうえに、それまでの加入実績による額のみ。ねんきんネットやマイナポータルは個人的に使いにくいと感じています。
政府は老後の生活費を年金だけに頼らない方向を目指している模様で、老後資金の準備にも使える「つみたてNISA」の毎年の投資枠は、来年から現在の3倍の120万円に拡充される予定です。
ただ、その前提としての年金の受取額が確認できなければ、老後資金の不足額も把握できません。年金に関して、使いやすくて網羅性の高いツールを用意すべきだと思うのですが……。
長生きリスクとは
余談ですが、死亡リスクや病気のリスクと同じように「長生きリスク」という言葉があります。「長生き」と「リスク」を結びつけると、嫌な印象を持たれるかもしれません。ですが、リスクの本来の意味は以前、ご説明したように、この場合はリターンの振れ幅や、結果の不確実性といった意味。長生きするかどうかわからないけど、その場合は資金が枯渇する恐れがあるので、備えようという考え方です。
お勤めには定年がありますが、資産運用には定年はなく、お金は働かせ続けることができます。
事前に「老後資金」を用意するのが理想ですが、運用すれば老後も増やしていくことが、可能ですよ。
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FP fumicoの“Live colorfully”の次回は、1月13日に公開の予定です。