『六本木クラス』3話。優香(新木優子)と葵(平手友梨奈)がマウント取り合い、恋愛バトル始まった!

『六本木クラス』(テレビ朝日系)は、Netflix配信中の大人気韓国ドラマ『梨泰院クラス』を竹内涼真主演で「日韓共同プロジェクト」でリメイクした「ジャパン・オリジナル版」。恋愛関係が進展していく3話を、telling,で『梨泰院クラス』の全話レビューを手がけたゲーム作家の米光一成が考察します。
『六本木クラス』2話。新、優香、葵、それぞれの戦い方を考察、空気を読まない平手友梨奈の演技がハマる

宮部新の「生き様」

第3話は、優香(新木優子)と葵(平手友梨奈)と新(竹内涼真)が街を疾走する名場面、葵と優香のバチバチ恋愛マウント・バトル、葵と新のキスシーンと、恋愛関係が進展して見どころ満載だった。

警察で取り調べを受けている宮部新(竹内涼真)。居酒屋「二代目みやべ」が未成年に酒を提供しているという通報があったからだ。
そこに長屋龍河(早乙女太一)が登場し、飲酒の現場に居た龍二(鈴鹿央士)の保護者として、長屋ホールディングスのトップである父・長屋茂(香川照之)の権力を振りかざす。警察は忖度して、営業停止処分をもみ消す流れに。
「命拾いしたな」と耳打ちする警察官に、信念の男・新は「なんで、こいつの一言で公権力が揺らぐんですか」と、忖度する警察を責め、「あなたはちゃんと法律に従ってくださいよ」と怒鳴る。

麻宮葵(平手友梨奈)が「このまま営業停止になっていいんですか」「お店より自分のプライドのほうが大事なんですか」と新に詰め寄る。
「一回ぐらいがまんしたっていいんじゃないんですか」という葵の言葉に新は怒りをぶつける。

「一回ぐらいってなんだよ。その一回があと一回もう一回最後の一回って、そうやって人はいつの間にか変わっていくんだよ」

新の「生き様」を的確に示すセリフだ。土下座をすれば退学にならずにすむとしても、牢獄の先輩に土下座をすれば殴られずにすんだとしても、新は、屈しない。はじめたばかりの店が二カ月営業停止になるとしても、正しいと思う道を選ぶ。

いっぽうで楠木優香(新木優子)は、妥協しながらやっていけばよいと考えるタイプだ。長屋から奨学金を受け、長屋の社員になった。それでも、新との関係性は大切にしていたはずだ。
そして葵は、第三の道。権力による圧力の空気を読まずに「やりたいことをやる」タイプだ。
第3話のラスト近く、五百円玉をトスする場面がある。表が出たら母親の望む人間になり、裏が出たら母親には従わないと決めるが、五百円玉を受け止められず川に落として、表も裏もわからないのは、いかにも葵らしい。

新をめぐってバチバチの対決姿勢

大学生になった葵は、しつこく誘ってくる合コンの男をあしらうが、男に頬を殴られる。すぐさま男を背負投げして顔蹴って「クズが」なんて言うから、怒った男に追いかけられちゃう。男子トイレに逃げ込むと、そこに新がいる!
助けようと新は、葵の手を取って、逃走。
新を待っていた優香の手も取って疾走する。
右に優香、左に葵、真ん中に新、走る3人。挿入曲THE BEAT GARDEN『Start Over』が流れてスローモーションになる。
三者三様のスタイルで生きる三人が、街を疾走する。このドラマの名場面のうちのひとつだろう。

三人でカフェ。コーヒーを買いに行っている間に、優香と葵は、新をめぐってバチバチの対決姿勢である。
優香が「もしかして新のことが好き?」と聞く。
興味があるという葵の答えに対して、「でも、あなたみたいな娘が手に負える人じゃない」と先制パンチ。
だが、葵は「あの人が殺人未遂の前科者とか、そういうことですか」と、知ってて興味があるのだと返す。
次なる優香のパンチ「営業停止になったのはあなたのせいだよね。悪いとは思わないの?」にも、なぜそれを知ってるのかと詰め寄ってから、
「もしかして、通報したのお姉さん?」と返す。

何も答えられない優香に、机をパンパンパンと叩きながら、
「ちょっと。いやいや、すぐ否定しなきゃ」
と攻撃の手を休めず、
「図星? うわっ」
と、とどめを刺す。

優香は、最後の力をふりしぼる。
「なんでもいいけど、あなたに望みはないよ」
「どうして?」
「新はそういう人。ずっと変わらないから」
さらに、もどってきた新に、通報したのは私だと打ち明けて、それでも好きか、聞くのだ。
新は「好きだ」と答える。頑固な男なのだ。
しかも、通報した理由を聞いたりしない。

新と葵のキスシーン

この後の葵との会話で、新は「自分の仕事をしただけだ」と優香の行動を正当化する。
優香は、長屋に就職した。だから、長屋の社員として行動する。ライバル店で未成年が飲酒していたので警察に通報した。悪事ではない。正しい。
だが、ふたりの関係を思えば、警察にチクるのではなく直接注意するということもできたはずだ。葵が「裏切りだ」と言うのももっともである。
優香は、新との関係性よりも、長屋の社員であることを選んだのだろうか。
新の「一回ぐらいってなんだよ。その一回があと一回もう一回最後の一回って、そうやって人はいつの間にか変わっていくんだよ」というセリフが響いてくる。
長屋から奨学金を受け、社員になり、長屋茂から長屋と新のどちらを選ぶかと問われ、優香は、長屋側についてしまったのか。“そうやって人はいつの間にか変わって”しまったのだろうか。

これだけでも第3話は、衝撃的なのに、さらにこの後、新と葵のキスシーンである。
酔いつぶれた新を膝枕する葵。「人間がもつ最も愚かな感情」と考えながらも葵は「好きだ」と確信し、寝ている新にキスをするのだ。

古典的なラブ・ストーリーであれば、幼馴染の新と優香が、長屋という権力の大きな壁を乗り越えてどう結ばれるまでを描くのだろう。ところが、葵というイレギュラーなキャラクターの登場で、オーソドックスな恋愛物語になるとは限らなくなってきた。
新は、このまま優香を好きでいつづけるのか。葵と新の関係はどうなるのだろうか。
「自分が好きな人を最高の男にしてみせる」と葵は決意し、「ここで働かせてください。夢は私が叶えてあげます、社長」と宣言する。

「新の居酒屋・二代目みやべ」対「長屋ホールディングスの巨大チェーン店」というビジネスバトルに、父親の死の復讐劇が重なり、さらに新と優香と葵の恋愛三角関係が重なってきた。

『六本木クラス』2話。新、優香、葵、それぞれの戦い方を考察、空気を読まない平手友梨奈の演技がハマる

テレビ朝日系 木曜ドラマ『六本木クラス』

毎週木曜よる9時〜
出演:竹内涼真、新木優子、平手友梨奈、早乙女太一、香川照之、稲森いずみ 他
脚本:徳尾浩司
音楽:髙見優
主題歌:[Alexandros]『Baby's Alright』
監督:田村直己、樹下直美 他
ゼネラルプロデューサー:横地郁英
プロデューサー:大江達樹、西山隆一、菊池誠(アズバーズ)
原作:チョ・グァンジン『六本木クラス~信念を貫いた一発逆転物語~』(『ピッコマ』掲載中)、テレビシリーズ『梨泰院クラス』(JTBC)

ゲーム作家。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「はぁって言うゲーム」「記憶交換ノ儀式」等。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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