考察『六本木クラス』4話。平手友梨奈の「ディフェ──ンス!」は『梨泰院クラス』を超えたか

『六本木クラス』(テレビ朝日系)は、Netflix配信中の大人気韓国ドラマ『梨泰院クラス』を竹内涼真主演で「日韓共同プロジェクト」でリメイクした「ジャパン・オリジナル版」。『梨泰院クラス』屈指の名シーン「ディフェーンス!」が登場する4話を、telling,で『梨泰院クラス』の全話レビューを手がけたゲーム作家の米光一成が考察します。
『六本木クラス』3話。優香(新木優子)と葵(平手友梨奈)がマウント取り合い、恋愛バトル始まった!

「ディフェーンス!」登場

『六本木クラス』第5話は、8月4日よる9時から放送。
大ヒット韓国ドラマ『梨泰院クラス』を六本木を舞台にリメイクしたドラマ。出演陣も、竹内涼真、新木優子、平手友梨奈、香川照之、早乙女太一……と豪華だ。
第1話見逃し配信の再生回数も、爆伸びしているらしい。

第4話は、ついに『梨泰院クラス』でも最高の名場面と言われていた「ディフェーンス!」が登場した。
しかも『梨泰院クラス』のイソは「ディフェーンス!」と心の中で言うのだが、『六本木クラス』の麻宮葵(平手友梨奈)は、しっかりと口に出して「ディフェーンス!」と言い放った。ふてぶてしい行動も、セリフも、ばっちり決まった。

「二代目みやべ」のメンバーとして、葵、龍二(鈴鹿央士)が参加。
葵はマネージャーとして参加したいと申し出る。
接客の悪さ、料理が不味そうに見える照明、キャベツの水がキレてないし、そもそもお通しがキャベツなんて。と、ダメな点をズバズバ指摘する。
というか、ダメすぎるよ「二代目みやべ」! なんでこんなので長屋を超えられると思ってるのか宮部新(竹内涼真)! とツッコミたくなるが、このあたりは『梨泰院クラス』も同じ。
この後の、葵の活躍っぷりを際立たせるために、一回しゃがんでもらったというところか。

「たかが二十歳そこそこの小娘に従うなんて不安でいっぱいだったと思いますが、必ず結果を出します。ここ六本木で天下を取りましょう!」
その葵の言葉どおり、リニューアル初日は、いままでで最高の売上を達成する。

『六本木クラス』の独自場面続々

「二代目みやべ」の仲間でクラブに行くことになって、葵のアドバイスで亮太(中尾明慶)は、女の子をひっかける。
「向こうで一緒に飲まない?」と言うが、その女の子は、料理長のりく(さとうほなみ)だった。
「言ってなかったけどトランスジェンダーなんだよね」
と、りくはみんなに告白する。
気まずい雰囲気を感じ取って、「ここにいると迷惑?」と立ち上がる。「そういうことじゃない」「待てよ」と止めようとするが、りくは立ち去ってしまう。

この後、りくの回想シーンが挿入される。ここは『梨泰院クラス』になかった独自場面だ。
さらに、ベンチに座ったりくがウィッグを取って、夜空を見上げながら涙を流すシーンも、独自場面だ(ここ、良かった!)。

もうひとつの回想場面も『六本木クラス』の独自場面。
「二代目みやべ」の最大のネックは「料理の味」だと気づいている葵は社長に、りくを「いますぐクビにしてください」と進言する。
社長は、りくに給料袋を渡す。
てっきりクビだと思ったりくに、社長は「二倍いれておいた。りくがこの店を気に入ってるなら料理長として今より二倍努力してほしい」と言うのだ。

この後、『梨泰院クラス』では、「トランスジェンダーだから一緒に働けない。そう思うヤツは言え。それが誰であれ俺は切る」とはっきり言う場面があるのだが、『六本木クラス』では、このセリフはカットされた。
その代わり(なのかどうかは知らないが)、新とりくが工場で出会った回想場面が挿入された。ここも『六本木クラス』の独自場面だ。
りくの描き方や、葵のキャラクターを、日本のドラマとしてスッと入ってくるように、工夫しているのだろう。

この後、りくをクビにしない社長に納得がいってない葵に、社長は、りくの料理の腕を鍛えてくれと葵に頼む。
葵が料理の感想を言い、りくは感想を信じて改良を重ねる。

「よっ! 平手!」と掛け声をかけたくなる

そして、りくの料理に葵が合格を出したあと、あの名場面が「葵ディフェンス」として登場する。
「その悟ったような態度がむかくんだってば。涼しい顔して余裕ぶって」
酔っ払った優香(新木優子)が、新に絡む。
自分の裏切りが(とはいえ実際に警察に密告電話をしていたのは優香ではなかったのだが)自分で許せなくて、いっそ罵ってくれればいいのにという気持ちだろう。
だから新の「君が何をしても俺はブレないから。優香は自分の人生を一生懸命生きてるだけだし。何も間違ってない」という言葉に、(そんなふうに言わないで)と思う。
「新、本当はね。新は私にとっていっつも」ここまでを優香は実際に言葉にして、残りの「まぶしいくらい輝いてる」は心の声で語るのは『梨泰院クラス』と同じ。
目を閉じながら顔が近づいていく。新も目を閉じる。

そこに「ディフェ──ンス!」と葵の邪魔が入る。ここで、しっかり「ディフェ──ンス!」と口に出して言って、けっこう憎たらしい表情をするのが、平手友梨奈めちゃくちゃキュートである。
むんずと顔を掴んで、「刑法176条、相手の同意を得てないキスは強制わいせつ罪です」!

この時、『梨泰院クラス』では、スアが、キスしようと潤んだ目でへっぴり腰になってアッチョンブリケな顔になっちゃうところが笑える名場面になっているのだが、『六本木クラス』では、優香は直立しちゃうのでへっぴり腰ではない。そのため、どちらかというと笑える名場面ではなく、「よっ! 平手!」と掛け声をかけたくなる爽快な場面になった。

今夜第5話。新と葵と優香の三角関係がさらに進展(というかこじれる!)し、長屋との対決も本格化してくる回になるだろう。期待!

『六本木クラス』3話。優香(新木優子)と葵(平手友梨奈)がマウント取り合い、恋愛バトル始まった!

テレビ朝日系 木曜ドラマ『六本木クラス』

毎週木曜よる9時〜
出演:竹内涼真、新木優子、平手友梨奈、早乙女太一、香川照之、稲森いずみ 他
脚本:徳尾浩司
音楽:髙見優
主題歌:[Alexandros]『Baby's Alright』
監督:田村直己、樹下直美 他
ゼネラルプロデューサー:横地郁英
プロデューサー:大江達樹、西山隆一、菊池誠(アズバーズ)
原作:チョ・グァンジン『六本木クラス~信念を貫いた一発逆転物語~』(『ピッコマ』掲載中)、テレビシリーズ『梨泰院クラス』(JTBC)

ゲーム作家。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「はぁって言うゲーム」「記憶交換ノ儀式」等。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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