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コロナ禍で気付いたステージに立つ意義 ABEMAドラマ『ANIMALS‐アニマルズ‐』主演の鈴木愛理さん

夢も彼氏もなし、ブラック企業勤務…。‶幸せ迷子のズタボロ女子″が憧れのコスメベンチャー企業に転職して、最高の自分をつかみ取る――。現在、ABEMAで配信中のドラマ『ANIMALS‐アニマルズ‐』で主人公を演じる鈴木愛理さん。今年、芸能生活20周年を迎え、サッカー日本代表・田中碧選手との交際も公表しており、仕事や恋に全力投球する主人公の姿と重なる部分も。新ドラマの見どころや、これまでの活動を振り返って感じたことなどについて聞きました。
鈴木愛理さんの撮り下ろし写真 「運命は幸せな方にしか転ばない」鈴木愛理さんが悩み考える仕事・結婚・出産

「幸せ迷子」を脱するために 

――ドラマ『ANIMALS‐アニマルズ‐』は主人公・海が仕事を通じて成長する姿が描かれています。鈴木さんと共通点はありますか。

鈴木愛理さん: このドラマのキャッチフレーズは「幸せ迷子」です。海は、自分の幸せが、仕事なのか恋愛なのか、それとも、自分がやりたいことをすることなのか、そもそもやりたいこととは何なのか…。悩んで自分の幸せがわからずに迷子になっています。

私も「ハロー!プロジェクト」を卒業し、アイドルグループの「℃-ute」を解散、「Buono!」の活動を終了した後、「あなたのしたいことは何?」と聞かれ続けた時期がありました。でも、その答えは即座には出ませんでした。それまでは与えられたことをやってきたけれども、自分の中から絞り出したものはない、それではアーティストと言えないのではないか、と悩みました。

しかし、ソロになって5年目の今は、周りの人から求められたことをして、多くの人が笑顔になることが自分の喜びであると感じています。悩み抜かないとそのことには気が付けなかったかもしれない。

主人公の海も「なりたい自分はどういう自分か」ということを、ずっと自問自答しています。たとえ「なりたい自分はこれだ!」と気が付いても、そう感じた瞬間が多すぎて、どれが正解だったかわからないことってありますよね。海は悩みつつも、年下のカメラマンや年上の社長、そして妹など自分を大切に思ってくれる周りの人たちに感化され、その中で自分の中のベストを選び取る。そして、そのことによって海は「幸せ迷子」を脱して成長していきます。

――初めての主演ドラマですね。何か心掛けていることはありますか。

鈴木: はい、お芝居の内容も大切ですが、現場の雰囲気を大事にしています。キャスト・スタッフ、どんな立場の方であれ、一回の人生の中の1日なので、撮影が終わった時には「今日もいい現場だった」と思える1日にして欲しいです。主役や座長と言われるのは得意ではないですが、みんなと目線を揃えて一緒にドラマを作って行けたらいいなと思っています。

『ANIMALS‐アニマルズ‐』 は、ただのお仕事ドラマでも恋愛ドラマでもない「人間味のあるドラマ」です。何事も一所懸命に頑張っている人は、自分に自信を持っていてキラキラと輝いている。そんなメッセージには、視聴者のみなさんも共感してもらえると思います。ぜひ多くの方々に見ていただきたいですね。

初めて訪れた空白の時間

――鈴木さんは今年5月で芸能生活20周年を迎えました。振り返って、ご自身が仕事を通して成長したなと感じた時期はいつだったのでしょうか。

鈴木: 8歳でこの世界に入り、「℃-ute」結成が11歳の2005年、メジャーデビューが13歳の2007年、同時に「Buono!」ができ、仕事をすることが日常という毎日でした。なぜ「この仕事をしているのか」というようなことは考える時間もなくずっと走って来ました。

今振り返ると、「Buono!」の活動を終了、「℃-ute」を解散し、「ハロー!プロジェクト」も卒業した2017年が第2の人生の始まりだったのかと思います。

2017年は3月に大学を卒業して、6月に解散公演がありました。再出発のために2017年後半の半年は芸能活動をしないという約束があって、15年間続けて来た活動を初めてストップしました。

その時に自分の人生すべてかけてやってきた仕事や学業が一気になくなってしまい、自分の中に「これだ」と言えるものがなくなってしまいました。

――その時、仕事に対してどんなことを考えていましたか。

鈴木: そこで初めて「自分は忘れられてしまうのではないか、自分って何だろう?」と自問自答し始めました。

解散して活動がストップした時、「愛理ちゃんは何がやりたいの?」と言われた時に、すぐに「やりたい!」と答えられることが一つもなかったことがショックでした。それまでの日々の仕事は「与えられた仕事」であり、それをいかに自分らしくアウトプットできるかということが課題でした。なので、「自分のやりたいこと」に本当に真剣に向き合ったことはなかったのかもしれません。

これまでプロデュースされる側にいたのが、グループ解散後は自分で自分をプロデュースする側になりました。にもかかわらず「自分の中に引き出しがない」ということに絶望してしまいました。あんなに歌が好きだったのに…と。

実家の踊り場で歌って

――その後、気持ちを切り替えることができたのはなぜですか。

鈴木: 活動休止中は土日は千葉の実家に帰って過ごしていました。そこで初めて人間らしい生活をしたというか「お父さんってこんなに笑うんだ」「弟はこんなことが好きなんだ」などちょっとしたことに気が付くことができました。

23歳後半になって、ようやく人間らしい自分を取り戻したんです。

そして、実家の階段の踊り場で、久しぶりに歌を歌いました。

本当に歌が好きでこの世界に入りましたが、15年間の活動の中では、人に評価されるために続けなければならない時もあって、「歌を辞めたい」と思ったことも何度もありました。

ところが、その踊り場で歌った時、人からの評価を気にすることなく歌っていた15年前の純粋な気持ちを思い出して「もう一度音楽をちゃんとやろう」と思ったんです。

なぜ私はステージに立つのか

――その後、鈴木さんはソロ活動をスタートしました。

鈴木: 環境がガラリと変わったので、音楽に対する考え方が変わりました。自分が自分をプロデュースする立場になって、より「自分がこれからどうしたいのか」ということを考えるようになったと思います。

また、コロナ禍を経て「なぜ自分がステージに立つのか」ということも、やはり考えました。
明るい感じの曲ばかり出していたので、今度はかっこいい曲を謳おうと思っていた頃、コロナ禍が来てしまいました。

そこで、その年の夏に、みんなに元気になって欲しいという思いで、『Easy To Smile』 をリリースしました。デビュー当時からリリースの候補曲にはなっていましたが、自分らし過ぎるというか、面白みがないと思って発表していなかった曲でした。

リリース後、明るい曲なのに、この曲を聴いて涙が出ましたというコメントがYouTubeにたくさんついていました。その時に、自分は歌うことで、人の背中を押してあげられるのかもしれないと思うようになりました。

コロナ禍をきっかけに、大きな目線で自分の仕事を捉えられるようになったと思います。それでより「音楽が楽しい」と感じるようになったんです。コロナ禍の巣ごもりの時期は誰にとっても苦しい時期でした。だからこそ、エンタメの大切さにも気が付くことができました。これからも歌うことで、多くの人たちを励ましたり勇気付けたりしていきたいです。

鈴木愛理さんの撮り下ろし写真 「運命は幸せな方にしか転ばない」鈴木愛理さんが悩み考える仕事・結婚・出産

●鈴木愛理(すずき・あいり)さんのプロフィール

歌手。1994年4月12日生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2002年、「ハロー!プロジェクト」に加入。2005年6月、アイドルグループ「℃-ute」を結成。2007年2月にメジャーデビューし、同年10月、派生ユニット「Buono!」を結成。2017年6月、℃-ute解散後はソロとして活動し、ドラマなどにも出演。今回のABEMAドラマ『ANIMALS―アニマルズー』が初主演ドラマとなる。

■ABEMAドラマ『ANIMALS‐アニマルズ‐』(配信中)

エピソード数:全8話
配信日:2022年6月23日配信開始 毎週木曜夜10時~            
放送チャンネル:ABEMA SPECIALチャンネル
放送URL: https://abema.tv/video/title/90-1680
出演:鈴木愛理 本田響矢 村上愛花 星乃夢奈(ゆな) 白洲迅
製作・著作:AbemaTV

ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍の製作にも関わる。
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。