横山由依さん「“もっと自分らしく生きていいんだ”って、伝えられる人になりたい」

昨年12月にAKB48を卒業し、俳優やタレントとして活動している横山由依さん(29)。2日からは舞台『三十郎大活劇」(パルコ・プロデュース)でヒロインの芸者・おやつを演じています。卒業を決意するために自身とどう向き合ってきたのか、今後どんなことに取り組んでいきたいのか、横山さんに聞きました。
横山由依さん、AKB48卒業後初の舞台「“お芝居一本でやっていくぞ”という気持ち」

「何歳でやめよう」考えたことなかった

――昨年12月に12年間活動したAKB48を卒業しました。コロナ下で、自身と向き合い卒業を決意されたそうですね。

横山由依さん: この4カ月、あっと言う間でしたね。ありがたいことに、継続的にお仕事をいただけているので、とても充実しています。

やりたかった歌やダンスができたAKB48での活動は、本当に楽しかったです。
でもキャプテンや総監督といった役職に就いてからは、グループの代表として発言する機会が多く、メンバーやスタッフの方々と向き合ってばかり。自分の意見を発言することは、あまりなかったかもしれません。

――自分と向き合うきっかけになったのは何だったのでしょうか。

横山: 2019年に、総監督を後輩の向井地美音ちゃんに継承してからは、グループよりも個人としてのお仕事をやるようになりました。

舞台に出させてもらった時、演出家の方に「普段の横山さんって、どんな風に人と接するの?」って聞かれたのですが、全然答えられなかったんです。「私って、自分のことを全然知らないんだ」と気付いて、まずは好きなものをリストアップしてみました。

餃子とか、オーロラとか、本当に何でも書き出してみて。やっぱり私は舞台や音楽、ミュージカルや映画が好きなんだって改めて認識しました。自分には好きなものがちゃんとあって、それを仕事としてできる場所にいる。そうした“好き”にちゃんと向き合っていきたい――。そんな気持ちでAKB48卒業を決意しました。

――29歳の誕生日の翌日に卒業されました。30歳を意識してのタイミングだったのでしょうか。

横山: 世の中に「30歳までに」という風潮はありますが私の場合、年齢は関係なかったです。

アイドルを始めた時から「何歳でやめよう」なんて考えたことなかったし、自分がやり切ったタイミングで卒業しようと決めていて。それがたまたま29歳でした。

年齢を重ねるごとに、「その年でアイドルなんかやめたほうがいい」とか「若い子に譲ったほうがいい」という声も聞かれましたが、私からしたら“これまでやってきたこと”の延長だし、待っていてくれてる人もいる。真剣に向き合っている人に対して年齢だけを理由に「早くやめたほうがいい」と言うのは、「なんか違うな」って思っていましたね。

年齢での差別、加担したくない

――特に女性は結婚について、30歳を節目と捉えがち。29歳で焦る人も多くいます。

横山: 世の中の流れがあるから「そろそろ結婚しないといけない」ととらわれてしまうのって、変ですよね。結婚するかしないかは個人の自由。早くする人がいてもいいし、一生独身でいたっていいと思うんですよ。

「“こうあるべき”を押しつけるのはよくない」って考えも広がってきているけれど、縛られている人もまだまだ多いように感じます。「何歳で何をするか」って一人ひとりが決めることであって、周りが決めつけることではないのに。

――年齢に縛られない考えは、前から持っていたのですか?

横山: AKB48に入っていなかったら「29歳、色々焦らなきゃやばい」って気持ちになっていたかもしれません。グループとして活動する中で色々なことを見たり、言われたり、考えたりして「これは世の中の仕組みとしておかしいことなんだ」「自分は自分のままでいいんだ」と気付くことがたくさんありました。

横山: 卒業前はグループの中で比較的年齢が上の方だったので、失礼な言葉を言われることもあったんです。だから自分は絶対に、年齢で人を差別するようなことに加担したくなかった。

後輩たちにも、年齢を理由に何かを諦めてほしくない――。その思いで、自分自身も年を言い訳にしないようにしていたし、年を重ねてより動ける人でありたいと思っていました。卒業した今も、年齢に縛られることなく、自由に決断したりチャレンジしたりしていきたい気持ちは変わりません。

これからの自分が楽しみ

――年を重ねると経験値が増えて、できることの幅も広がりますよね。

横山: 29歳になった今でも、まだまだ足りないことばかり。でも、20代前半の時は、もっといっぱいいっぱいでした。20歳でAKB48のキャプテンになって、周りを見ているつもりでしたが、空回りしてることも多かったかな。

総監督になってからは、スタッフさんなど年上の先輩方の話を聞く機会が増えて。みなさん心の余裕を持って人生を楽しんでいるように見えたんです。「30代が一番楽しいよ」とか「40代、50代は最高だよ」と聞いて、自分も前向きに色々な経験をしてみたくなりましたね。全部が楽しいってことはないだろうけど、素敵な先輩方に出会ってきたから、これからの自分が楽しみです。

――お芝居やバラエティー番組の出演など様々な活動をしていますが、今後の目標はありますか。

横山: 自分の言葉で発信できる人になりたいですね。

3月に、国際女性デーに関する生配信の番組に出させていただいたんです。女性の生き方や年齢との向き合いなどがテーマで、世の中には知らない問題が、まだまだたくさんあると感じました。

全部は無理だけれど、興味があることや経験したことがあることは、突き詰めて考えたいし、自分なりの言葉で人に伝えたい。私の言葉を届けてくださるメディアや、自ら発信できるツールを使って、みんなが過ごしやすい世の中をつくれたらいいなって思います。

横山: できることは多くないかもしれないけれど、考えるきっかけを提示することはできるはず。私なりに道を切り開いて、キャリアを築いていくことで、「もっと自分らしく生きていいんだ」ってことを、説得力をもって伝えていける人になりたいですね。

横山由依さん、AKB48卒業後初の舞台「“お芝居一本でやっていくぞ”という気持ち」

●横山由依さんのプロフィール

1992年、京都府生まれ。2009年からAKB48のメンバーとして活動。12年11月~13年4月はNMB48も兼任した。15年から3年余り、2代目AKB48グループ総監督を務めた。21年12月にAKB48を卒業した。

舞台『三十郎大活劇』(パルコ・プロデュース)

作:鈴木聡(1994年初演)
演出:ラサール石井
出演:青柳翔/横山由依/入野自由 松平璃子 近藤公園/那須佐代子 三上市朗 福本伸一 松村武 宍戸美和公 弘中麻紀 南翔太 新良エツ子 椎名慧都 中井千聖/西海健二郎 榊英訓 辻󠄀大樹 時松研斗/中川パラダイス 竹内都子/小倉久寛、ほか
東京公演:2022年4月2日(土)~2022年4月17日(日)、新国立劇場 中劇場
大阪公演:2022年4月23日(土)、24日(日)、COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

1989年、東京生まれ。2013年に入社後、記者・紙面編集者・telling,編集部を経て2022年4月から看護学生。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
“29歳問題”