●本という贅沢#156『花を飾ると、神舞い降りる』

さとゆみ#156 今まで感じていた「なんとなく」の理由が解明される。『花を飾ると、神舞い降りる』

隔週水曜にお送りするコラム「本という贅沢」。今回は書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんが不思議な魅力が宿った1冊を紹介します。
さとゆみ#155 死ぬ直前まで読んでいたい。でもそれはなぜ? 『千年の読書』

●本という贅沢#155『花を飾ると、神舞い降りる』(須王フローラ/サンマーク出版)

ときどき、「うん、それは、わかっていた」と感じることがある。

このことを、誤解されないように書くのはすごく難しいのだけれど、「最初からうまくいくことはわかっていたから、頑張ったし、頑張れたんだよなー」と思うときがあるのだ。

たとえば、最近私は『書く仕事がしたい』という、ライターになるための本を上梓したのだけれど、読者の方からよく聞かれるのが、「どうして、そこまで頑張れたのですか?」という質問だ。
この質問に、どう答えればいいのか、私はいつも困ってしまう。
でも、「ガチで答えると私の好感度が下がるんじゃないか……」という邪念を払って正直に答えるとしたら、その答えは「どんなに時間やお金をかけても(努力しても)、モトがとれるとわかっていたから」である。うまくいくとわかっているから、頑張った。

でも、この「何かをしたいと心底思ったら、その時は、うまくいくことはもう決まっている」ことを、説明するのはすごく難しい。これは、私だからうまくいくわけではなく、誰の人生でもうまくいくのだけれど、それを説明するのはもっと難しい。

今でも、この仕組みをうまく説明することはできない。けれど、「この感覚のまま、生きていていいんだ」と教えてくれたのが、この本の著者、須王フローラさんだった。

彼女とは、たまたまある勉強会ですれ違ったのだけれど(すれ違ったというくらいの接点だった)、その後、彼女の投稿をフォローするうちに、すっかり虜になってしまい、私は彼女のビジネス講座を受けた。過去受けた講座の中で一番高い(お値段が)講座だったけれど、終わった瞬間、「この内容を聴けるなら、2倍でも3倍でも安い」と思ったことを覚えている。

そこで私たちが教えてもらったのは、「見えない世界」の話だった。でも目に見えていないだけで、実はちゃんと感じ取っていた世界の話だった。

たとえば
・なぜ売れる商品と売れない商品があるのか
・なぜ自分の商品に値付けをする時、躊躇してしまうのか
・直感とは何なのか。経験値なのか。センスなのか
・「今はまだ無理」の感覚に従って良いのか 「今だ!」の感覚に従って良いのか
・共感とは何なのか。人と人はなぜ共鳴し合うのか
・前世とは何か。死んだらどこに行くのか。
・「人生はうまくいくようになっている」。それはなぜか

その時、フローラさんが教えてくれたことは、スピリチュアルの話のようで、そうではなかった(のだと思う、多分)。
私が知っている一番近い言葉で言うと、「帝王学」のような気がしたけれど、今回、本を読んだら「ああ、これは哲学の分野か」と気づいた。そして、当時腹落ちはしたけれど、私にはまだちゃんと言語化できない「世界の仕組み」について、この本は解説してくれている。

「花を飾ると妖精があなたのもとに、神のエネルギーを運んできます」という帯の文を読むと、ちょっとソレ系が苦手な人はひるんでしまうかもしれないけれど、
Amazonや楽天の書籍ランキングを見ると、ちょっと面白いジャンルでランクインしているのだけれど、

この本は、哲学書だ(多分)。

見えない(だけど感じてはいる)私たちのために、めっぽうわかりやすい言葉で解説された、「世界の理(ことわり)」の話なのだ。

この本を読んでいると、いろんなことが腑に落ちる。これまでの人生の答え合わせをしているような気持ちになる。(いや、フローラさんに言わせれば、過去も未来もないのだというから、答え合わせもないのだけれど)、それでも自分が心地よくできたこと、何か引っ掛かりがあってうまくいかなかっこと。
それらがどういう理由で心地よかったり、うまくいかなかったのか、するするっと謎がとけていく。

たとえばフローラさんが言う世の中の仕組みのひとつを、ものすごーーーーーく、平たく言うと「今の自分を偽ったり、何かを欲しがったりすると、うまくいかない」なのだけど、

そういえば、と思い出したのは、当のフローラさんとの出来事だ。

ある日彼女は、友人と一緒に突然(いやもちろん、アポはあったけど)私の家にやってきた。それまで親しくやりとりしていたわけでもなかったのに、すごく不思議だったけれど、話をしているとただただ楽しくて、「ひょっとして、私たちは昔から知り合いですか?」と、(スピ系苦手な)私にしては、自分のものとは思えない言葉がふいに口をついて出てきたくらいだ。

フローラさんが「さとゆみさんと会ったのは、暖かい国でしたよね。ヨーロッパじゃないですね」と言ったのを聞いて思い出した。

「あ、バリ島ですかね」と私が言ったのと
「インドネシアかな」とフローラさんが言ったのが、同時だった。

びっくりするというよりは、ああ、やっぱり。そんな感じがした。こういうの、スピじゃないんだな。いや、スピかもしれないけれど、やっぱり「うん、知っていた」という感覚だ。

その日、彼女が持ってきてくれたお花は、私の家の花瓶には入りきらずバケツに投げ入れしたのだけれど、そのあとずーっと綺麗に花を咲かせてくれていた。

そんな楽しい時間を過ごした私だったけれど、2度目に彼女が家にやってきたときは、なんだか身の置き所がないような、ざわざわした気持ちになった。
なんとなく、全てを見透かされているような気持ちになって、「この話をしたら、フローラさんはなんて思うかな?」と考えながら話をしていた気がする。1回目に会った時のような楽しさは、どこかにいっていた。

あれは何だったんだろうと、ずっと考えていたのだけれど、今回、本を読んでその正体がわかった。私、「この人に、好かれたい」って思ったんだなーって。前回は「この人のこと、私、めっちゃ好き」と思っていただけなのだけど、2回目は「この人に好かれたい」と思ったんだ。

何かを欲しいと思った瞬間、バランスが崩れる。
その理由も、この本は教えてくれる。

とまあ、一事が万事こんな感じなんですよ。本を読んでいて、いろんな落とし物を拾っている感覚になる。

正直なところ、読んでいてまだよくわからない部分もある。いや、「部分もある」というより、だいぶわからない。
だけど、それは今、わからなくてもいいんだって。わかる時になったら、わかる。そういうふうに世界はできているらしいのだ。

この本はきっと何度も何度も読み返すことになると思う。そのたびに「わかる」ところと「わからない」ところが変化するんだろうな、と思う。読み終わった瞬間、こんなに再読する日が楽しみになる本も、初めてだ。

とりあえず、今日は真っ赤なお花を一輪、買って帰る。
そして、茎と花瓶をしっかり洗って挿すのだ。

 

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さとゆみ#155 死ぬ直前まで読んでいたい。でもそれはなぜ? 『千年の読書』
ライター・コラムニストとして活動。ファッション、ビューティからビジネスまで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『髪のこと、これで、ぜんぶ。』『書く仕事がしたい』など。