20年ぶりのリバイバル!Netflix『未来日記』にはふたりを肯定し、見守る優しさがある
●熱烈鑑賞Netflix101
最後は必ず別れる「未来日記」を介した恋愛
2021年12月14日、Netflixで『未来日記』の配信がはじまった。1998年から2002年まで放送されていたテレビ番組『ウンナンのホントコ!』(TBS系)内で放送されていた同名の恋愛ドキュメンタリー企画が、20年ぶりに復活したのだ。
初対面の男女ふたりが、番組スタッフから手渡される「未来日記」に書かれている予定のとおりに行動をしながらコミュニケーションを取り仲を深めていく。今回、Netflix版『未来日記』で出会ったのは、沖縄県出身・在住で19歳の大学生、仲宗根真愛(まあい)と、北海道出身、東京都在住で24歳の料理人、若松拓斗だ。沖縄と北海道という離れた場所で育った彼らが、一冊の日記だけを頼りに出会う。それだけでもうドラマチックだ。
しかし、この番組には酷なルールもある。「未来日記」のみで繋がれたふたりは、もしどんなにお互いを好きになったとしても、最後には日記に書かれたとおりに別れを迎えなければならない。最後には必ず別れると知っていても、一緒にいる相手を好きになるのか? という実験的な要素が、出演する男女ふたりはもちろん見る側の胸をもギュッと切なくさせる。
遠くから来たふたりの交流は魅力的
『ウンナンのホントコ!』ではこの企画をいとうせいこうが監修し、脚本(日記の内容)を内村光良、南原清隆、東野幸治、優香ら、番組の出演タレントが手掛けていた。
わたしは『あいのり』(フジテレビ系)などの大人気恋愛リアリティ番組をほとんど通らずに生きてきてしまった。けれど、当時の「未来日記」の「スケッチブック」というシリーズは少しだけ記憶に残っている。日本人男性と台湾人女性が未来日記を介して出会い、言葉が通じないためにスケッチブックに絵や漢字などを書いてコミュニケーションをとっていた。脚本はナンチャンが担当。主題歌は、福山雅治の『桜坂』だった。
当時はまだあまり恋愛に興味がなかった。けれど、生まれも育った場所も文化も違う言葉の通じない人間同士が、なんとか意思を伝えようと試行錯誤し、理解し合おうとする気持ちそのものが素敵に感じた。自分も海外で言葉を超えた交流をしたいという願望を強くしたきっかけのひとつだった。
違った場所から来たふたりの交流という点では、今回のNetflix版にも通じるところがある。沖縄の真愛と、遠く離れた北海道の拓斗。未来日記に書かれた指示もあり、拓斗は真愛を連れて北海道の街を案内し、真愛は愛してやまない沖縄の文化を拓斗に紹介する。小樽のガラス工芸、ソフトクリームや海鮮のおいしさ。沖縄の海に飛び込む気持ち良さ、伝統芸能のエイサーやチョンダラーが若いひとびとにも当たり前に根付いていること。そしてお互いの、のびのびとした自然体の姿や笑顔は、それぞれの故郷の空気の中だからこそより生き生きとして見える。
複数のメンバーのなかからパートナーを見つける『あいのり』や『テラスハウス』(フジテレビ系・Netflix)とは違って、最初から一対一で向き合う設定がされているこの企画。ハラハラドキドキする場面もあるけれど、それ以上に、ふたりがそれぞれに歩んできた人生の道程や、彼らの安らいだ表情を見られることが魅力的だ。
穏やかな彼らに呼応するように、スタジオで見守るタレントたちの視線も優しい。DAIGOがMCを務め、スタジオメンバーにはEXILE・FANTASTICS from EXILE TRIBEの佐藤大樹、ラランドのサーヤ、鷲見玲奈、夏菜が集う。真愛と拓斗のチャームポイントを見つけては「あんなところがかわいい」「こんなところが良かった」とふたりを肯定し、見守りに徹しているスタジオメンバーたち。その肯定のまなざしが良いクッションとなって、ふたりにつらい展開が訪れたときにも心を痛めすぎずに見ていられたように思う。
スタジオメンバーの脚本バージョンも見てみたい
スタジオメンバーがテレビ放送時代から一新されたNetflix版の『未来日記』。また、総監督は『リンカーン』(TBS系)などで企画を担当していた荒井昌也、監督は『7つの海を楽しもう!世界さまぁ〜リゾート』(TBS系)などを手掛ける井谷光太郎が務めている。どちらも人気番組、長寿番組をつくってきた実績があり、本作へのTBSの力の入れ具合がうかがえる。
過去作では、いとうせいこうが監修、脚本がウッチャンナンチャンらタレントだったことで「ウッチャンならこうするんじゃないか」「ナンチャンならこの先どうするだろうか」と予想できる面白さもあったはずだ。
Netflix版ではそうした脚本を書く者の心情についての想像の手がかりがない。そのため、日記の指示の文章が必要以上に冷たく感じる場面がある点がやや気になった。とはいえ、複数メンバーでの恋愛リアリティ番組に恐怖心や抵抗感があったわたしも、ふたりの関係を丁寧に優しく追っていく『未来日記』は安心して見られた。
もし今後もNetflixで本シリーズが続いていくのであれば、DAIGOやサーヤ、佐藤大樹らスタジオメンバーが脚本を担当したバージョンも見てみたい。タレントが脚本を書くことは矢面に立つことにもなってしまうので、なかなか難しいかもしれない。だが、スタジオでの優しい彼らの目線には、ウッチャンナンチャンの優しさの面影を感じるのだ。それに、「DAIGOやサーヤ、佐藤大樹なら、この先どうするだろうか」という予想をしながらの視聴体験もしてみたいという欲張りな願望もある。
そんな未来の展望にも期待しつつ、まずは今シーズンの真愛と拓斗の関係の行方を楽しみに見ていこう。最新話は2022年1月4日に配信されている。話数が進むごとにふたりの距離が近づき、また別れのときも近づいているのだと思うと、見たい! でも見たくない! と心が揺れ動く(この原稿を書いているのは1月3日)。
あの頃の『未来日記』を見てきた世代は、ウンナン時代を懐かしみながら。『未来日記』を初めて見る世代は、穏やかな恋愛リアリティ番組とふたりの愛らしさに癒されながら。お別れまでのカウントダウンを優しい気持ちで見守っていけたらと思う。
MC:DAIGO
スタジオ出演:佐藤大樹 (EXILE/FANTASTICS from EXILE TRIBE)、サーヤ(ラランド)、鷲見玲奈、夏菜
主題歌:SEKAI NO OWARI「Diary」
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