自宅療養で精神的に疲弊、外出や人の目に過敏に【コロナ感染を振り返って】

東京で一人暮らしをしている女性編集者(32)が8月中旬、新型コロナウイルスに感染し、2週間にわたって自宅療養した。周囲の反応に感じたことや職場復帰までの経過を振り返る。

買い物を人に頼むのは気が引けて

8月11日に咳が出始め、25日まで東京都内で自宅療養をした。
療養期間中、家にあって役立ったのは、トイレットペーパーや箱ティッシュ、生理用品など生活必需品のストック。食べ物は米や乾麺などの炭水化物があったことがよかった。主食があったので、通販で購入する食品は、おかずや味付けをするレトルト食品だけで済んだ。
倦怠感がひどく、お米を炊けるほどの元気はなかった私にとって日頃から、お米を一気に5合炊き、小分けにして冷凍保存する習慣があったことも助けになった。

近くに住む友人や母にコロナに感染したことを伝えると「何か必要な物があったら買って届けるよ」と口々に言ってくれた。しかし、実際はほとんど家にあったもので生活できたし、主食以外の食品は通販で購入して置き配してもらったので結局、友人や家族に頼ることはなかった。

人に買い物を頼むことに気が引ける部分もあった。玄関前に届けてもらうためだけに来てもらうのは、ハードルがかなり高い。頼める関係性であっても、相手の時間と労力を奪うことになる。頼める人が近くに住んでいないケースなら、より難しいだろう。
症状が重くなく必要な物が足りなくなったら、自分で買い物に行きたくなるかもしれないが、その気持ちは抑えなければいけない。

自治体から食糧などが送られてくるとの報道があったが、私の手元には何も来なかった。

一人家に籠もる生活が精神的にきつかった

一人家に籠もり、外の空気を吸えず、太陽の光も浴びない2週間の療養期間は、精神的にきつかった。仕事や恋愛など、コロナに関係ない話題についての友人とのLINEのやり取りは気分転換になった。引きこもってベッドでスマホばかりいじっていると気が滅入るので、直接電話で話したかったが、咳が続いている状態では厳しかった。
一方、母からの連絡の多さには少し辟易。私の療養期間中は、一人暮らしの自宅療養者が重症化したり、亡くなったりするニュースが連日、報じられた時期。娘を心配する気持ちは理解できるが、LINEのメッセージは1日に10回以上のときも。1時間以内に返信できない場合には電話がかかってきたこともあった。気持ちはありがたかったが、しんどくて床に臥している時に早めの返信を求められても……。胸部に圧迫感が出て急変の恐怖に襲われた発症7日目は、私の心情を吐露したかったが、母に伝えることはできなかった。あまりに心配され過ぎると、助けを求めづらい。
仕事復帰後も「コロナはまだ分からないことが多いから、様子を教えて」と度々のLINE。「ありがたいけど、そこまで心配されると困る」と負担感を伝えて、理解してもらった。

検査を受けることにも及び腰に

「コロナに罹っていた」と伝えた時の友人・知人の反応も様々だった。その多くが、嗅覚異常などの後遺症を心配してくれたり、「辛かったね」などの言葉をかけてくれたり。一方で、感染防止対策に携わっている知人からは「どこでもらったの?マスクなしで人と喋った?」といったメッセージが届いた。コロナ下では在宅勤務などで外出を控え、人との接触を9割ほど削減。私の対策も万全ではなかったかもしれないが……。

突然、10日間も仕事を休んだのは初めて。復帰時期も見通せなかった。
咳が出始めたとき、風邪だと思い込みたかったのは、職場や仕事相手に迷惑をかけたくない思いも強かった。
PCR検査で仮に陽性となっても、自宅療養の場合は積極的治療を受けられるわけではないし、日頃から仕事は在宅。症状が軽いなら陽性と判定されても「何も変わらないのではないか」と思ってしまった。コロナ禍で咳や熱が出ているのに、検査を受けない人がいることが以前は信じられなかったが、いざ我が身に降りかかると、及び腰になっていた。しかし検査を受けなければ、自分の状態を把握することができないし、人にうつすリスクがあるかどうかもわからない。

咳にもしばらく悩まされたが…

しばらくの間、悩まされたのは空咳だ。自宅療養終了後も2週間くらい続き、オンライン会議などで声を出そうとすると、喉がチクチクした。
産業医に相談したら、「体内からウイルスがなくなった後も、風邪と同じように喉が過敏になって咳が出る。長ければ1カ月くらい続くかも」とのこと。咳止めはPCR検査の際に処方されていたが、改善は感じられていなかった。そう話すと、同じクリニックで違う咳止めを処方してもらうことを勧められた。

しかし、外出禁止を強いられる生活で精神的に疲弊していたうえ、知人から非難のニュアンスを含んだメッセージが届いたこともあり、このときの私には、外に出たり人と会ったりすることへの過剰な抵抗感があった。このクリニックとて、私が2週間前にコロナ陽性だったことは把握している一方、自宅療養を終えていることは知らない。状況を説明すれば、最もすんなり受診できるクリニックなのに、「まだウイルスが体内に残っているのに、普通の診療時間に来たのか」と迷惑に思われる気がしたのだ。

今となっては余計な心配をしていたと思う。そのくらい、自宅療養を終えたばかりの頃は、過敏になっていた。ただ、咳止めは欲しかった。少し冷静になったときに、保健所から外出許可も出たし、「クリニックからすると、こういったケースは日常的だろう」とも思えたので受診に行った。
3人が待合室にいた発熱外来の時とは違い、患者は私1人。待っていると検査のときとは違い防護服を着ていない看護師に呼ばれ、すぐに診察。処方された咳止めは効果が感じられなかったと伝えると、少し強めのものを処方してくれた。1日3回、液体を飲むタイプで、これまで喋ろうとすると抑えられなかった咳が、半分以上出なくなった。

自宅療養中は、あらゆる物の匂いが感じられなかった。その症状の一部が今も続いているのか、食べ物が以前より美味しくなくなった。例えば、すき焼きは醬油と砂糖の味はわかるが、牛肉本来の旨みが感じられない。オレンジジュースも甘みしかわからず、オレンジの風味が味わえない。ネットで調べてみると、似たような症状に長く悩む人もいるようだ。

9月23日までに陽性判定を受けたのは全国で168万人。100人あたり1.3人程度で、これまで感染者が近くにいなかった人も多いだろう。

身近に陽性者が出たり、自分が自宅療養になったりした場合の参考になればという思いで、ここまで綴った。

症状などの経過

8月11日:夜に空咳が出始める。体温は平熱
8月12日:微熱になり、空咳も一日中続く。夕食時に嗅覚が鈍いことに気づく
8月13日:様々な症状が出始める(頭痛、空咳、倦怠感、嗅覚異常、肩首周り・脚に痛みなど)
8月14日:PCR検査を受けようとしたが、この日は予約がいっぱいで受けられず。症状は同じ
8月15日:症状は変わらず、医療機関でPCR検査
8月16日:電話で陽性が告げられる。症状は同じ
8月17日:前日の症状に加えて、胸部に違和感を覚える
8月18日:同じ症状が続く中、パルスオキシメーターを通販で注文。その後、保健所よりSMSが届く。症状が続いていることを電話で伝え、パルスオキシメーターの送付も依頼
8月19日:保健所よりパルスオキシメーターが届く
8月20日:症状は続いていたが、平熱に戻ったため、保健所より解熱鎮痛剤を飲まないよう指示される
8月21日:倦怠感が軽くなり、頭痛もなくなる。体温は平熱
8月22日:症状がさらに改善し、体温も平熱に戻った。保健所より「このまま熱と症状が落ち着いたら週明けに自宅療養を終了しましょう」と電話で告げられる
8月23日:5日前に通販で注文したパルスオキシメーターが届く
8月24日:熱と症状が落ち着く。保健所から「明日で自宅療養を終えてください」と電話で伝えられる
8月25日:自宅療養期間が終了。咳と嗅覚異常のみ残る

1人自宅で保健所の連絡待ち 胸部の圧迫感に「自分は本当に軽症なのか」 コロナ自宅療養体験談【後編】
1989年、東京生まれ。香川・滋賀で新聞記者、紙面編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。